軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第155話 ハートショット

さて、まずは何から聞き出すか。

レッドの居場所も聞き出したいが、ここが『都影』にとっての核となる施設なのは間違いない。

この施設を見つけ出せた時点で、レッドを探す意味というのは薄くなっている。

となれば、この施設が一体何の施設なのかを聞き出すのが先だな。

「まずここが何の施設なのか教えてくれ」

「ここは違法ドラッグを生成している施設だ。俺達は王都にある『都影』の本部から来た研究員。アヴァンさんの指示によって、ずっと薬を作らされていた」

いきなり聞き覚えのない名前が飛び出た。

レッドの本名なのか、それとも『都影』の偉い人間の名前なのか。

「アヴァンってのは一体誰だ? 『都影』のリーダーか?」

「アヴァンさんはこのヨークウィッチを取り仕切っている人間——。というより、アヴァンさんを知らずにここまで辿り着いたのか? ということは、アヴァンさんは生きている?」

俺の質問により、何か勝手に思考し始めた研究員のリーダー。

アヴァンが生きていた場合、俺に情報を話しているのがバレたらまずいとでも考えているのだろうか。

……ただ研究員の話から考えると、アヴァンは地下室で俺が殺した支部長と同一人物。

かなり前に殺した人物が死んだことを知らないのは引っかかるが、ほぼ間違いないだろう。

「いや、恐らくだがそいつは俺が殺した。ただ殺したのは随分前の話だ。知らされていなかったのか?」

「俺たち研究員はこの施設から出ることを許されていないからな。外の情報を知る術がないんだが、随分と前……?」

「ああ、かなり前の話だ。アヴァンとやらは長いこと顔を見せていないだろ」

俺がそう尋ねると、一番左端に座らせていた研究員が何かに気づいたようで声を上げた。

「確かにレッドさんしか顔を見せていなかった! アヴァンさんは本部に戻っていると言っていたけど、襲撃を受けて殺されていたのか!」

「殺されたのを知らせたら、襲撃を恐れて逃げ出す可能性があると考えたんだろう。実際にこうして俺に襲撃を受けているから、そいつの判断は間違ってはいないんだが」

よく見れば、この研究施設には防音加工が施されている。

外に音を漏らさないようにするという目的が第一ではあろうが、外の音を研究員に聞かせない目的も含まれているのは間違いない。

「それじゃアヴァンさんは死んでいるのか」

「レッドって奴は生きているがアヴァンは殺した。だから、安心して話していい。質問に戻るが、なぜわざわざ地下室で違法ドラッグを作っているんだ? これだけ厳重にしているということは、何かしら秘密裏に動きたい何かがあるんだろ?」

「……世に僅かにしか出回っていない『ハートショット』という違法ドラッグを作っている。絶対に外部には漏らしてはいけないため、こうして地下で作らされているんだ」

長年暗殺者をやっていただけあり、俺は色々と裏の事情については詳しい自負がある。

もちろん違法ドラッグについても例外ではなく、基本的に知り尽くしているのだが……。

今、研究員が口に出した『ハートショット』という名前の違法ドラッグは聞いたことすらない。

最近作られた最新の違法ドラッグなのか、それとも王国でしか流通していないものなのか。

どちらにせよここまで隠して動いているということは、とてつもない代物であることは間違いない。

「聞いたこともない名前だな。この場所に実物はあるのか?」

「当たり前だ。あそこの麻袋の中に大量に入っているぞ」

研究員が指をさした麻袋に近づき、短剣で乱雑に切って中身を取り出す。

麻袋の中には、小分けにされた純白に近い粉のようなものが大量に入っていた。

見た目は俺が見てきた違法ドラッグと大差ないか?

……いや、純度が高いからか真っ白のような気もする。

「使ってみたら今までのものとは違うとすぐに分かるぞ。ただ中毒症状が出て、おっ死んぢまうまで薬を求めるようになるけどな」

若干笑みを溢しながらそう呟いた研究者。

俺は毒には耐性があるため、実際に使用しても問題ないとは思うが……違法ドラッグを使うことはない。

「……なるほど。こんな地下で何をしていた気になったが、『ハートショット』とやらを見て理解できた。『都影』はこの違法ドラッグを使って金儲けをしようと企んでいたのか」

「金儲けだけならまだ優しいと思うね。この薬は街全てを支配できてしまうほどの力を秘めている。今までの違法ドラッグとは別次元のものだからな」

「そんなことまで喋ってしまっていいのか?」

「構わない。お前に殺されるか、レッドさんに殺されるのかだ。運よく逃げられたとしても、もう『都影』には戻れないしな」

自虐的な笑みを浮かべながら、そう呟いた研究員。

この態度からみても今の言葉に嘘はなく、本当に別格の薬であることは間違いない。

動きに怪しいと感じてレッドを探し、世間に流出する前に見つけることが良かった。

「なるほど。知りたいことは全て知ることができた。ちなみにだが、『ハートショット』の製造をヨークウィッチで行うことにこだわっている理由はあるのか?」

「ここから西にある森で、『ハートショット』の生成に必要な材料が見つけたらしい。だから無理やりにでもヨークウィッチで製造を行うと、アヴァンさんは言っていたな」

西の森に『ハートショット』の材料が自生していたのか。

その近くにある街で製造したいというのは、至極真っ当な考えと言える。

こうなってくると……西の森でのゴブリンキング騒動も何かしら繋がっているような気がしてきた。

魔人も関わりがあったのか調べたいところだが、それは恐らく研究員は知らない情報。

レッドを捕まえ、直接聞くのが手っ取り早いだろう。