軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第149話 報告

ヴェラとのエアジスト実験後、すぐに解散の運びとなったため俺は夕食を食べてから宿屋に戻ったのだが、宿屋の前にはマイケルが立っていた。

どうやら長いこと待っていたのか、半分寝ているような状態。

「マイケル。そこで何をしているんだ?」

俺が声を掛けると体を跳ねらせてから、垂れていたよだれを袖で拭いて俺の方を向いた。

目のクマも酷いし、昨日から寝ていないのがはっきりと分かる。

「おぉ……すまない。立ったまま軽く眠ってしまっていたよ」

「報告に来てくれたのは分かるが、一度休んでからにした方がいいんじゃないか?」

「いや、君にはすぐに知らせた方がいいからね。すぐに話を終えるから、中に入れてもいいかね?」

「マイケルが良いのであれば別に構わない」

疲れ切っているマイケルを部屋の中に通し、この間と同じようにマイケルを椅子に譲り、俺はベッドに腰をかけて話を聞くことにした。

「私がここにいる時点でなんとなく察しているとは思うが、『都影』のアジト制圧は無事に成功したよ。構成員達は散り散りに逃げ出したが、今は兵士が逃げた構成員達を捕まえているところだ」

「そうか。無事に成功したのなら良かった。主要人物を捕まえることはできたのか?」

「それがなんだが……主要人物を捕まえることはできなかった。アジトを攻めた時には下っ端しか残っておらず、アジト内を隅々まで探したが見つからなかったのだ」

まぁ当たり前といえば当たり前か。

俺がヴァンダムを殺した数時間後に攻めたとはいえ、数時間あれば逃げることは容易。

本格的に潰すのであれば、俺がヴァンダムを殺してすぐに攻め込むしかなかったのだが……。

大勢の人を動かすとなると、向こうに動きを察知される可能性が非常に高くなる。

どちらにせよ逃げられていた可能性は高かったため、少数で動いて確実にヴァンダムだけは殺すという手段を選んだのは間違っていないと思う。

アバルトというヴァンダム以上に厄介そうな人間も殺すことができたからな。

「それじゃ『都影』のアジトは完全に潰したってことなんだな」

「ああ。それもこれも全て君が任務を成功させてくれたお陰だよ。またしても助けられてしまった」

「気にしなくていい。マイケルとは友好的な関係を築いていきたいからな」

「何はともあれ、『都影』の脅威は消え去った。あれだけ大きなアジトをすぐに潰したのだ。流石にこの街から手を引かざるを得ないだろう」

マイケルは満足気にそう呟いたのだが、俺はどうしても引っかかっている。

アバルトのこともそうだが、手を引くのであれば支部長を殺した段階だったはず。

それを新たなアジトを建ててまで、『都影』の勢力を広めようとしたのには裏があるような気がしてならないのだ。

これは色々な悪い人間や組織と対峙してきた経験であり、今回の『都影』の動きは行動と対価が吊り合っていない。

仮にあのアジトが潰されず、上手く回せていたとしても……掛けた費用を回収するまでにかかる年月は計り知れないと思うんだよな。

「……どうしたのかね? 随分と浮かない表情に見えるが、何か気になることでもあるのか?」

「いや、『都影』を潰したと思うのは早計だと思っただけだ。幹部は捕まえていないのだし、また何か動く可能性が高いと俺は思っている」

「あれだけのアジトを潰されて、まだ何か動くつもりでいるってことかね? 流石にそれはありえないと私は思うよ」

「とりあえず気を抜かず、動向を窺った方がいい。アジトを見た時からどうも引っかかっている」

目立たないけれど目立つという『都影』のアジト。

権力を誇示しやすい良いアジトだとも思ったが、どうも引っかかる点が多いのも事実。

実際に侵入してみての感じたことだが、侵入経路をわざと作っていたような気がする。

気がする――程度でしか気づくことはできなかったが、俺が侵入したことをアバルトにバレていたのもそれが原因なはずだ。

だとすると、あのアジトは捨て石で建てられたものの可能性まである。

アバルトの動きがおかしかったのも相まって、全てが嫌な感じしかしない。

「正直、私には少しも理解ができないのだが……君が言うのであれば、気をつけた方がいいのだろうね。邁進せずに警戒をさせてもらうよ」

「ああ、そうしてくれると俺としてもありがたい。何か動きがあれば、俺にも報告しえほしい」

「分かった。何か分かればすぐに報告させてもらう。それじゃ私は帰らせてもらうよ。今回のお礼はまた改めて行わせてもらう」

「エイルの件に続いて、また礼をくれるのか。くれるということなら期待して待っている」

部屋を出て行く後ろ姿にそう声を掛けて、若干フラついた足取りのマイケルを見送った。

どんな礼が貰えるのかも楽しみではあるが、『都影』の件についてを忘れないようにしなくてはな。

マイケルに引き続き探るよう伝えたが、俺も個人的に探るとしよう。

俺の勘が何かを感じ取っているため、ここは深追いするべきなはずだ。