軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第142話 襲撃前

偵察を行った日から二日後。

一昨日はヴァンダムの後をつけて情報を集め、昨日は今日に備えてゆっくりと休んだ。

予想していた通り、ヴァンダムは獣並みに勘が鋭かったのだが、何も知らないトレバーでカモフラージュしたお陰で見つからずに尾行することができた。

ただ俺の視線はどことなく感じるのか、常に周囲を気にする素振りを見せて鬱陶しそうしながら苛立っていたのが分かった。

そんなこともあり終始不機嫌だったため街中では派手に暴れており、そのお陰もあって動きをこの目で見ることもできた。

癖や体の特徴、力の強さをこの目で把握することができたのは非常に大きい。

今回の襲撃が成功したら、協力してくれたトレバーとテイトには何かお礼をしなくてはいけないな。

そんなことを考えつついつものように業務をこなし、終業後早めに帰って仮眠を取って準備を整えた。

深夜となり、俺の部屋の扉が静かにノックされる。

気配からマイケルということは分かっているため、扉を開けて中へと招き入れた。

「ちゃんと起きていてくれて良かった。これから襲撃だが……準備はできているかね?」

「ああ。俺はいつでも向かう準備はできている」

「それなら良かったよ。作戦を話すから聞いてもらってもいいか?」

そこからマイケルが襲撃の作戦を話したのだが、やはり本業ではないだけに荒が目立つ作戦。

侵入口も行ってから考えるらしいし、恐らく逃げ道の確保もできていないと思う。

ターゲットの居場所も分からないようで、これだけのガバガバ作戦では命がいくつあっても足らない。

マイケルの話すお粗末な作戦は拒否させてもらい、俺単独で動いた方が成功率は高いだろう。

「一通り聞かせてもらったが、この作戦では乗ることはできない」

「……え? 今になって受けないってことかね!?」

「受けないとは言っていない。作戦の荒が目立つから単独で動かせてもらう。マイケルには外で待機してもらいたい」

「二人というただでさえ少ない人数なのに、私に待機しろと? ……今回は絶対に失敗できないのだよ」

「失敗できないからこそ、俺一人で動くのがいいと言っている。納得できないなら試してみるか?」

マイケルもマイケルで納得いかない様子なため、実際に味わってもらうのが手っ取り早い。

俺がマイケルを暗殺するテイで動き、その動きを見れば納得してくれるはず。

「君の実力はよく分かっている。ギルド長も倒したぐらいだからね。実力を分かった上で二人で動いた方がいいと思っているのだよ」

「多分このままでは話が延長線上のままだ。マイケルはこの部屋に留まっててくれ。俺はマイケルを襲いにくるから、マイケルが俺の姿を視認できたら指示に従う。姿を見ることができずに背後を取れたら単独で動く。これでどうだ?」

「随分と私が有利な条件だね。襲ってくるというのを分かっていて、視認できないようなら……確かに認めざるを得ない」

「交渉成立だな。俺が部屋から出てから十分以内に襲撃に向かう」

そう言い残してから、部屋にマイケルを残して俺は外へと出た。

正直作戦の決行前になって行うことではないが、作戦があまりにも杜撰だったから仕方がない。

サクッと背後を取り、認めさせるとしよう。

俺の部屋は宿屋の二階の角部屋。

鍵もついていないため窓からの侵入が一番楽ではあるのだが、もちろんマイケルは警戒してくる。

となると窓に意識を向かわせつつ、別ルートからの侵入が望ましい。

意識の薄い場所は天井から繋がっている換気口からだろう。

侵入する場所を定めた俺は、気配を全て断って察知されない様にする。

排気口へと向かい、一切の音を立てずに侵入した。

中は酷く汚いがこれぐらいは慣れたもの。

部屋の中にいるマイケルを視認し、まずは呼吸を合わせることから始める。

マイケルの一挙手一投足を全て模倣し、マイケルになりきるイメージ。

呼吸が完全に合ったことを確認してから、俺はゴミの欠片を指で弾いて窓に当てた。

どんな些細な音も聞き逃さないようにしているマイケルは、ゴミが窓に当たった音に過剰に反応し、意識を全て窓に向けたのが分かる。

その瞬間に排気口から部屋の中へと降り、マイケルの背後に立つ。

一切の音も立てずに背後へと降り立ち、更に呼吸が完全に合っているためマイケル目線では人の気配を一切感じていないはず。

全神経が窓に向いているというのもあってか、既に真後ろに俺がいるなんて思いもしていない様子だな。

本来ならここで背後から首を掻っ切るか、へし折って殺すのだが――今回は暗殺するテイで動くだけ。

マイケルが認知できない速度で首に腕を回し、ガッチリとホールドしたところで解放した。

「俺の勝ちだな」

「………??? ど、どうやって、ど、どこから部屋の中に入ったのだね!? それに近づいたタイミングも……」

本当に何の気配も感じなかったようで、勝敗どうこうよりも背後を取った方法について気になっているみたいだな。

今回は実力を見せるためにアイテムは何も使わなかったが、本来なら煙玉も使えるし部屋を破壊することも可能。

マイケルも認めざるを得ない負け方をさせたつもり。

説明については道中で軽く話すとして、無駄に時間を使ってしまったためさっさと『都影』のアジトへと向かうとしようか。