軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第109話 殴り合い

背丈が違うため、振り下ろすように拳を振ってきたサイクロプス。

いつもならば絶対に躱すのだが、今回は打ち合うと決めている。

迫ってくる岩石のような拳に合わせ、俺は左ストレートをぶっ放した。

ただ、力と力の勝負は流石に分が悪かったようで、数メートルではあるが押し返されてしまった。

サイクロプスの拳を破壊するつもりで殴ったのだが、単純な膂力ではサイクロプスの方が上。

思っていた以上に悔しいが、力では敵わないと分かった以上は技術も使って倒しにかかる。

やることは基本的に変わらず、飛んでくる拳に合わせてパンチを打ち込むのだが、人差し指を重点的に殴っていく。

三回ほど打ち合ったところで人差し指の骨にヒビが入ったのか、拳の握りが甘くなったのが分かった。

強いパンチを打つには、拳を強く握り込むことが大前提。

握りが弱くなるとその分威力も落ちるため、今度こそ拳のぶつけ合いで押し切れるはず。

拳を強く握り込み、構わず振り下ろしたサイクロプスの拳に再び全力の一撃をぶつけた。

今度は俺の力が上回り、サイクロプスの巨体が軽く宙に浮く。

そこからは右、左、右、左と、交互に互いの拳を繰り出しあったのだが、一度上回ってからは押し切られることは一度もなく、サイクロプスは次第に後退を始めた。

振り下ろされる拳に力がなくなり始め、鬼のような表情は困惑に近いものへと変わっている。

自分よりも圧倒的に小さい人間に力で押されているのだから、この表情にもなるだろう。

それからサイクロプスは拳での攻撃も止め、俺を遠ざけるように蹴りへの攻撃に移行してきたが、そうなったらもう俺としても燃えるものはない。

蹴りを避けつつ、軸足の膝に拳を打ち込んだ。

モロに骨の部分なため俺の腕にも若干響いたが、サイクロプスの膝の皿も割れたのが分かった。

巨体をを支えられなくなったことで、今度こそ膝から崩れ落ちたサイクロプスの心臓を目掛け、渾身の左ストレートを打ち込む。

ディープロッソの時と同じように、衝撃を体内に留めるように拳を打ち込んだため、強烈な負荷に耐えられなかった心臓は破裂。

サイクロプスは口から大量の血を噴き出し、頭から地面に倒れた。

何度も拳と拳をぶつけ合ったため、軽い打撲に裂傷を負ってしまったが……楽しかった。

暗殺も魔法もスキルも肉弾戦も全て行え、非常に満足のいく戦闘が行えたな。

月に一度ほど、体を鈍らせないためにサイクロプス狩りを行いたいところだが、サイクロプスの数がそこまでいなさそうなのが難点。

転がっている四体のサイクロプスの死体を見て、殺さずに生かしておけばよかったと今更ながら後悔しつつ、俺はギルド長探しを再開した。

八合目付近でサイクロプスの群れを倒してからは特に戦闘などはないまま、あっさりと九合目付近へと足を踏み入れた。

もうすぐで頂上に辿り着こうとしたそのタイミングで、山道から逸れた場所に人の気配のようなものを俺は感じ取った。

人間に近い気配なためギルド長のものかと思ったが、それにしては気配が随分と弱々しい。

もっと荒々しい気配を放っていたのは知っているため、ギルド長とは別の人の可能性はあるが、様子は見に行った方がいいだろう。

西の森のオークが巣作っていたような、天然の洞窟のようなものが見え、その奥に弱々しい気配が感じ取れる。

【ファイア】の魔法で明かりを灯し、警戒は怠らずに洞窟の中へと入った。

外は雪が降りしきっていることもあって、洞窟の中は非常に温かく感じる。

これでもヨークウィッチにいたら寒いと感じるぐらいの温度だが、雪と風が当たらないだけでこんなにも違うものなんだな。

寒い場所への耐性はあまりないため、そんな新しい発見を得ながらも、奥にいる人らしき気配を頼りにゆっくりと進んで行く。

狭い洞窟の最奥へと辿り着き、壁に寄りかかって座っている人物がようやく見えてきた。