軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

奪還

「ひ~ま~だ~」

瑠璃はベッドに寝っ転がりながら愚痴をこぼす。

スピネルと謎の男のことがあってから三日。

つまり今日がその取引の日だ。

恐らく取引は前回と同じく夜と思われるが、瑠璃や他の愛し子は部屋に隔離されている。

部屋の外ではいつも以上の護衛が配置され、さらには過保護なコタロウが強力な結界を張り、完全武装状態。

来るなら来いやぁと言わんばかりである。

そんな周囲に反して瑠璃は呑気なものだ。

それはコタロウ達精霊の力を信頼しているためでもある。

しかし、それでも過保護なのがジェイドである。

これだけ厳重にしてもなお心配なのか、朝から側を離れない。

そもそも霊王国の問題なのでジェイドが口を挟むわけにもいかず、霊王国の人達が解決するのを待つしかないのだ。

いっそ竜王国に帰るかという案も出たのだが、瑠璃が犯人じゃないかと疑惑が持ち上がっている今、解決される前に霊王国を出るのは逃げたと思われるかもしれない。

スピネルが元凶であることは分かったのだから、霊王国の人達を信じて犯人を捕らえるのを待つのが一番だとなった。

けれど、霊王国の内情を他国の者に軽く話してくれるはずもなく、アウェインもあまり詳しくはジェイドに話してくれないようで、ジェイドがヤキモキしているのを瑠璃も感じる。

が、しかし、瑠璃は愛し子である。

そして、最高位の風の精霊コタロウがいる。

どんなにアウェインが話さなくても、風の精霊達には筒抜けなのだ。プライバシーなどあったものではない。

先程から精霊が集めた情報をコタロウが整理して瑠璃に教えてくれる。

『あの女の周辺はかなり調べられているようだ。本人は気付いていないようだが』

「何か分かったの?」

うつ伏せになり両手を伸ばして伸びをしながら問う。

『あの女より、あの女の母親の方から色々出てきているようだ』

「あー、スピネルにジェイド様が迎えに来てくれるとか言って信じさせた母親ねー。ラピスもその母親から娘を正妻にって懇願されてたって言ってたよね~」

コタロウとそんな話をしていると、部屋の中を落ち着きなくうろうろ歩き回っていたジェイドが、ベッドで横たわる瑠璃の横に腰掛けた。

そして、髪をすくように撫でるジェイドの手の動きに目を細める。

「ジェイド様ものんびりしましょう。焦っていても私達には何もできないんですし」

ジェイドは少し沈黙した後、小さく溜息を吐いて、瑠璃の横にゴロリと寝転んだ。

そのことに気を良くした瑠璃はにこりと微笑む。

そしてコタロウに続きを促した。

「それで、その母親からは何が出てきたの?」

『聖獣が死んだ後にその心臓は結晶化する。それを材料に作られる秘薬の調合方法を書いた古い資料だ。モルガ家の当主にだけ伝えられる資料をどうやってか盗み出していたらしい』

「盗まれたのに気付かなかったの?」

『そのようだな』

瑠璃とジェイドは揃って呆れた顔をする。

スピネルのことに関してもだが、モルガ家の当主も色々と問題ありだと思うのは気のせいか。

よく筆頭貴族の当主などやっていられたなと思う。

いや、あるいは忙しすぎて家のことに頓着しなかったのかもしれない。

仕事人間にはよくあることだ。

『さらに、我の体となっている聖獣を殺す暗殺計画書まで出てきたようだ。最後に毒を盛った世話係を消すところまで』

「うわ~。それはギルティだわ。でも、スピネルがやったことだと思ってたんだけど? 本人もそう言ってたし」

『母親が計画。娘が実行といったところか』

と、そこでジェイドが口を挟む。

「しかし、そんなことをその親子だけでできるのか? 世話係は捕らえられて牢にいたのだろう? そんな中を殺すなど」

『それなのだが、我の予想だが呪術が使われたのではないかと思う』

「呪術? ってことは魔女?」

『いや、呪術だからと言って魔女とは限らない。あれはあくまで魔女が呪術魔法を使えたので魔女の使うものは呪術と言われていただけだ。呪術は普通の人間でも使える。知識さえあればルリでもな』

「そうなんだ」

『樹のも、我と同じ意見のようだ。それ以外に樹のの目を掻い潜って暗殺するなど不可能だ。……が、その世話係を殺したのが行方の分からぬ聖獣を誘拐した者と同一人物なら話は別になる。現に、樹のと我の目を掻い潜って聖獣をさらっているのだからな』

「……つまり、計画したのはスピネル親子だけど、実行したのは聖獣を誘拐した人を捕まえないと分からないってことね」

『そういうことだ』

「やっぱり待つしかないのか……」

『だが、母親の方は先程捕らえられたようだぞ。娘はまだ泳がしているようだが』

「それは朗報ね」

後は夜になるのを待つだけ。

そう思っていたら横にいたジェイドが飛び起きた。

「どうしたんですか、ジェイド様?」

ジェイドは窓へと歩き、開け放つ。

真剣な表情のそれに、瑠璃は嫌な感じがする。

「どうしたんですか?」

「獣の声だ。段々近付いてくる」

「えっ?」

瑠璃も起き上がり窓から外を覗くが、瑠璃には何も聞こえない。

困惑したようにジェイドからコタロウへと視線を向ける。

『むう、どうやら森にいる聖獣が騒いでいるようだ。森を出て城へ向かってきている』

「どうして?」

『聖獣はいなくなった子供を探しに出て来ようとしているようだ。森を散々捜し回ったが見つからず、いつになっても霊王からは発見の知らせをしてこないことに辛抱たまらなくなったのだろう。聖獣達が子をなくしたのはこれで二度目だ。自分達で探すと全ての聖獣が森を出たのだな』

「それってマズいんじゃあ……」

『だろうな』

聖獣は森で樹の精霊の保護下で暮らしていた生粋の箱入りだ。

霊王国の国民にとっては精霊と同じぐらい特別な生き物で、それが森から出たとなれば大騒ぎになるだろう。

その時、声が降ってきた。

『風の』

『むう、樹のか』

突然樹の精霊が話し掛けてきた。

『あの者達を止めてくれぬか?』

『我がか?』

『聖獣の体を持つお前だからこそ意味がある。それに彼の者達は風の属性を持つ者。風の精霊であるお前が適任だ』

『むう。それはそうだが……』

コタロウは瑠璃へと視線を向ける。

どうやら瑠璃の側から離れることを懸念しているようだ。

「コタロウ。私なら大丈夫よ。行ってあげて」

コタロウは少し悩んだ末、ジェイドや精霊達もいるということで『分かった』と了承した。

『助かる。頼んだぞ』

『うむ』

コタロウは窓から外へと飛び降りた。

ふわりと着地したコタロウは、騒ぎの方へと駆けていった。

「うーん。大丈夫かなぁ」

『コタロウに任せて大人しくしてるしかないわよ』

リンは動じた様子はなく、テーブルで飲み物を飲み始めてしまった。

それを見て一気に気が抜ける。

「ルリも何か飲むか?」

「そうですね。何か温かい飲み物が欲しいです」

「分かった」

ジェイドはテーブルの上のベルを鳴らす。

するとすぐに使用人が入ってきて、ジェイドは二人分の飲み物を頼む。

それを背に、瑠璃は窓の外をじっと眺めていた。

するとふいに何か音がした。

いや、音というよりは鳴き声か。

後ろを向くがジェイドは使用人と話をしていて気が付いていないようだ。

再び窓の外を覗き込んだ瑠璃の視界の端に何かが引っ掛かった。

ハッと上を向くと、褐色の肌をした男性と目が合った。

「やべっ」

小さくそう言った男性と、ぽかんとした顔で立ち尽くす瑠璃。

男性はどこかで会ったことがある。

誰だ? 誰だ? と、思っている瑠璃の目には、男性の背にひもで括り付けられた聖獣の子供が映った。

「あー!」

瑠璃は指を差して大きな声を上げた。

「何を騒いでいるんだ、ルリ……なっ!」

振り返ったジェイドの目に飛び込んできたのは、瑠璃と、瑠璃を後ろから羽交い締めにしている褐色の男性の姿。

その背には聖獣の子供が……。

聖獣の子供だからコタロウと同じ大きさを想像していたが、まるで違う。

片手で持てるほどの大きさの子犬だ。

白いもふもふな子犬は悲しそうに「くうぅん」と鳴く。

「貴様が誘拐犯か!? ルリと聖獣を離せ!」

途端にジェイドが戦闘モードに入り、空間から剣を取り出す。

そして、使用人は迷いなく扉の外へ走り、応援を呼んだ。

次々に部屋に入ってくる兵士達。

当然その中にはユアンやフィンといった竜族もいる。

「ルリ! お前また捕まったのか!?」

ユアンが叫ぶ。

それに関しては本当に申し訳ないと感じつつ、瑠璃は冷静に状況を把握しようと必死だった。

「あなた前に会ったわよね。そう、確か市場で」

「あっ、覚えててくれたの? 俺はすぐに分かったよ。こんな可愛い子のことは忘れないから」

そう言って、褐色の男性ギベオンは瑠璃の髪に口付けた。

その瞬間瑠璃の髪すれすれのところを飛んでいく短剣。

「うわっ!」

ギベオンは反射的に避けたが、避けなければ確実に顔面に刺さっていただろう。

投げたのは、勿論鬼の形相をしたジェイドだ。

「あっぶねえな、あんた。この可愛い子に当たったらどうするんだよ!」

「私がルリにかすり傷一つさせるわけがないだろう」

「あっ、そうそうルリちゃんだ。名前も思い出した。俺はギベオンね」

この状況が見えていないのか、にこにこと笑顔を浮かべるギベオンに、ジェイドの怒りはマックスだ。

「さっさとルリを離せ!」

「いいよ~。あんた達が俺を見逃してくれるなら」

「ほざくな! 聖獣を誘拐した者を逃すわけがないだろう」

「だよね~。じゃあ、これなら?」

瑠璃の首に鋭い剣先が向けられ、空気は一気に緊迫感を増す。

ジェイドは今にも舌打ちしそうな顔で動けなくなる中、瑠璃は冷静に剣の刃を掴み、もう片方の手でギベオンの手を逆の方向に捻った。

「ていっ」

「ぎゃあ!」

あまりの痛みに叫ぶギベオンの拘束から難なく逃げ出した瑠璃はジェイドの元へ走る。

「ル、ルリ!? 手は大丈夫なのか!?」

なにせ剣の刃を素手でわしづかんだのだ。ジェイドが心配するのは当然だった。

しかし、瑠璃の手は綺麗なまま。

不思議そうにするジェイドに瑠璃は笑う。

「私にはコタロウが厳重に結界を張ってますから、剣で切られても傷一つ付きませんよ」

それを聞いてジェイドはホッとした顔をする。

「そうか、良かった」

ぎゅうっと抱き締めるジェイドの腕を瑠璃はトントンと叩く。

「そんな場合じゃありませんよ」

「ああ、そうだな」

瑠璃を離し、ジェイドは剣を向けた。

袋のネズミ状態でなお、ギベオンはヘラヘラと笑っている。

「あれぇ、これ絶体絶命って感じ?」

「素直に投降しろ」

「えー、どうしよっかなー」

ギベオンは背に括り付けていた聖獣を背から下ろし、ポイッと瑠璃に向かって投げてきた。

「わわわー」

慌ててキャッチした瑠璃は無事な聖獣の子を見てホッと息を吐く。

しかし、聖獣に気を取られていた一同がギベオンを思い出して視線を向けると、跡形もなく姿を消していた。

「なっ! どこへいった!?」

「探せ! 遠くに行っていないはずだ」

逃げ道は扉と窓だけ。

扉にはたくさんの兵士が固めており、逃げられるとしたら窓しかないが、窓から外を覗いても姿は見つけられない。

「いったいどこへ消えたんだ?」

一同が呆気にとられる中、兵士をかき分け巨大なハリセンを持った光の精霊が部屋に入ってきた。

「えっ、光の精霊?」

『あら、光のじゃない』

どうしてここにいるのかと瑠璃とリンと竜王国の面々が不思議に思う中、光の精霊は部屋の中を見回してからある場所で立ち止まる。

何をするのかと見ていると、光の精霊は持っていた巨大なハリセンで何も見えないそこをぶっ叩いた。

すると、パリンという音と共に、目を回して気絶しているギベオンの姿が現れる。

「ふむ、これでよかろう」

光の精霊は満足そうに頷き、ぺしぺしとギベオンをはたくが、完全に気を失っているようだ。

「ほれ、さっさと拘束しておけ」

呆気にとられていた瑠璃達はハッと我に返り、霊王国の兵士が急いでギベオンを縄でグルグル巻きにしていく。

これでもかと巻き付いた縄の分だけ、霊王国の兵士の怒りが感じられる。

そして、そのままギベオンは霊王国の兵士に連れて行かれた。

竜王国の者達だけになった部屋は、まるで嵐が去った後のような空気に。

「光の精霊がどうしてここにいるの?」

「風のからおかしなことを何度も聞かれたのでな。どういうことかとやって来たわけだ。理由が分かった。どうやら私が悪いようだ。すまないな」

『どういうことよ?』

リンがパタパタと飛んでくる。

「その話は後でいいだろう。それよりそれを早く親元へ帰した方がよいのではないか?」

光の精霊はハリセンで瑠璃が抱っこする聖獣の子供を差す。

「そうだった。早く返さないと聖獣達が森から出てきてるんだった!」

瑠璃は早く聖獣の森に返さなければと、それだけで頭がいっぱいになり、慌てて部屋を飛び出した。

「ルリ!」

ジェイドの声はパニクっていた瑠璃の耳には入らなかった。

しかし、代わりにリンがパタパタと後を追い掛ける。

瑠璃は城内をひた走る。

そんな瑠璃の肩にリンが乗った。

『もう、ルリったら。コタロウの結界があるからって暴走しすぎよ。王が焦ってたわよ』

「あはは……。ごめん。どうもコタロウの結界があるから大丈夫だと思うと安心しちゃって」

それ故に、つい自分が愛し子で保護対象であることを忘れてしまう。

後でお説教かなとげんなりしつつも、瑠璃は走るのを止めない。

『ルリ~。ここ曲がった方が近道だよ~』

『だよー』

「ありがとう」

リンのように追い掛けてきた精霊達に教えられて廊下を飛び出し庭に出る。

中庭を突っ切ろうとしたところで、声が掛かり急ブレーキをかけた。

「ちょっと待って!」

急いでいるのに誰だと思いながら振り返ると、そこにはスピネルの姿が。

「その聖獣を渡してください」

「この子は今から親元に帰すの」

「では、私が。他国の方であるあなたの手を煩わせるわけにはいきませんもの。責任を持って連れて行きますわ」

いけしゃあしゃあとよく言えたものだ。

勿論、スピネルが聖獣の誘拐に関わっていることを知っている瑠璃が渡すはずがない。

「嫌よ。あなたに渡して秘薬の材料にされたら困るもの」

嫌味っぽくそう言えば、スピネルはびくりと手を震わせる。

「なにをおっしゃっているのかしら? 秘薬? どういうことです?」

瑠璃とリンは冷めた目でスピネルを見る。

「とぼけなくてもいいわよ。全部知ってるんだから。あなたが取引していた男もさっき兵士に捕まったわ。すぐにあなたの所にも兵士が捕まえにやって来ると思うわよ」

スピネルは歯噛みする。

「だったらなおのこと、私に聖獣を渡して!」

スピネルが飛び掛かってくるが、瑠璃はさっと身をかわして、聖獣を護るように抱き締める腕に力を入れる。

「はいそうですかって渡すわけがないでしょう!」

スピネルが瑠璃の腕を掴み爪を立てる。

さらには髪を引っ張られ「いたた」と数本髪が抜けた気がしたが、絶対に聖獣を渡したりはしなかった。

そんな瑠璃を助けるように目を吊り上げた精霊達がゆっくりと距離を縮めてきていることにスピネルは気付いていない。

『成敗の時が来たー』

『成敗!』

『せいばーい!』

ビタンビタンと張り付きスピネルの動きを止める。

見えていないスピネルは自分の身に何が起こっているかわからずパニック状態に陥る。

「きゃあ! 何、なんなのです!?」

どこからこんなに集まったのかと瑠璃が呆気にとられるほどの大量の精霊に押し潰されて、地面に這いつくばる。

そんなスピネルを見下ろしながら、瑠璃は問うた。

「秘薬をどうするつもりだったの? ジェイド様に使う気だったの?」

スピネルは憎々しげに瑠璃を見上げる。

「仕方がないでしょう! お母様がジェイド様のお心を繋ぎ止めておくためには秘薬が必要だとおっしゃったの」

「また、母親ね……」

どこか瑠璃の言葉には呆れが含まれていた。

「それで、ジェイド様を秘薬で操って、満足なの? 虚しくないの?」

「あなたには関係ないわ!」

「大ありでしょうが! わざわざ私の悪い噂を流したり、とんだ風評被害受けたんだから」

その通りだと言うように精霊達は鼻息を荒くした。

「あなたがいけないのです。私からジェイド様を奪おうとなどするから! 私はジェイド様の妻となるのです。お母様がそうおっしゃったのよ。迎えに来て下さるとジェイド様が約束したと。私はずっとお待ちしていたのに!」

憎しみを目に宿して瑠璃を見るスピネル。

逆恨みと言っていい言葉をぶつけられるが、瑠璃は怒りを感じるよりもスピネルの姿が憐れに映った。

「あなたの意思はどこにあるの?」

「え?」

「お母様に言われたから秘薬を求めて、お母様に言われたからジェイド様を待って。お母様、お母様、お母様。全部お母様に言われたから。じゃあ、あなた自身はどこにいるの?」

「な……何を言っているんですの」

「まだ気付かない? だったら、お母様に言われなくてもあなたは聖獣を手に入れようとした? お母様に言われたこと以外でジェイド様の何を知ってる?」

スピネルは言葉が出ないようだった。

「答えられない? どうして? あなたはジェイド様の妻になるんでしょう。どうしてジェイド様のことを何も知らないの? 普通好きな人のことなら知りたがるものじゃないの?」

「それは……」

「結局、あなたはお母様に操られてた人形だったんじゃないの?」

「ち、違います! 違う違う違う」

まるで壊れた機械のように同じ言葉で何度も否定する。

まるでそうすることで自分を保っているようにも見えた。

瑠璃は急激に虚しさが襲ってきた。

こんな少女に色々と振り回されてたかと思うと、怒る気も失せる。

「諸悪の根源は母親か……」

ぜひとも厳しい罰を与えて欲しいと思っていると、ユアンを筆頭とした竜族が走ってきた。

「こら、ルリ! こんな所にいたか。探したんだぞ!」

「あー、ごめんごめん。とりあえずこの子霊王様に引き渡してくれる」

瑠璃の側で這いつくばるスピネルを見て、精霊が見えないユアンは不思議そうにし、精霊が見える他の竜族は顔を引き攣らせた。

「私はコタロウの所に行くから」

「俺も一緒に行く」

精霊の山の中から引きずり出されたスピネルを横目に、ユアンとリンを引き連れてコタロウの元へ向かった。

森との境界付近では、コタロウが聖獣達を説得しているところだった。

聖獣達は殺気立っていて、霊王国の兵士達の顔は一様に強張っている。

「コタロウ!」

『ルリ』

あらかじめ誰か精霊から話が行っていたのだろう。聖獣を抱いた瑠璃を見てもコタロウが驚いた様子はなかった。

「くぅん、くぅん」

聖獣の子が鳴き声を上げると、先程まで殺気立っていた聖獣達が瑠璃を取り囲む。

そこには穏やかな目が子供を映しており、安堵に包まれた空気を感じた。

瑠璃はそっと聖獣の子を地面に降ろす。

聖獣の子は嬉しそうに尻尾を振って、一匹一匹に挨拶をするように鼻先でちょんと触れていく。

聖獣達は子供を中心にして森へと帰っていった。

「これで問題解決ね」

満足そうにする瑠璃の頭に、ユアンのチョップが振り下ろされた。

勿論手加減されていたが痛いものは痛い。

「なにするのよ、ユアン……」

「お前は守られることにもっと慣れろ。でないと俺達が困る!」

「だって」

「だってじゃない!」

「すみませんでした……」

お怒りのユアンには言い訳は通用しないと悟り、瑠璃は素直に謝った。