軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

緊急事態

セレスティンと共に町へと下りてきた瑠璃は、会心の出来である温泉施設を披露した。

中を見てもらいドキドキとセレスティンの反応を窺う。

瑠璃としてはかなりの出来だと自負していたが、日頃から温泉に入っているセレスティンには少し目に付くところがあったようで、細かいところまで指摘を受ける。

そして瑠璃はそれを忘れないように横でメモに書き留めることに努力した。

そんな中でセレスティンが特に興味を持ったのは、娯楽施設の方。

やはりというか、獣王国でも娯楽は少ないようで、瑠璃の作った異世界の遊びというのは心引かれたようだ。

是非とも獣王国に持って帰りたいと、セレスティンも子供のように目をキラキラとさせているのが面白かった。

その代わりと言うか、以前に獣王国で受けたマッサージを、この施設でもやってみてはどうかと言う話になり、その教えを与える人材をこちらに寄越してくれるという交換条件が成立した。

また新しい遊びができたら教えると言うと、かなり嬉しそうにしていた。

ただ、食べ物に関しては、美味しいというものの、辛いもの好きの獣王国の人であるセレスティンには少し味が物足りないようだった。

そんなことがありつつも、両親や祖父と合流してお祭りを楽しんでいたその時。

どおぉぉん!という音と共に何か丸い物が町へと空から落ちてきたのが見えた。

地響きを鳴らして落ちた先の建物などをなぎ倒していくそれは何発も降り注ぎ、辺りを悲鳴が包み込む。

誰もが何があったのか分からない。

けれど攻撃されていて危険であることは分かったのか、逃げ惑う者達で周囲は騒然とし、愛し子の護衛達が瑠璃や家族、セレスティンの周りを固める。

「何があった!?」

「すぐに状況を把握しろ!」

「今のは大砲の音か!?」

「愛し子様達を安全な場所に避難させるんだ!」

慌ただしく護衛達が動き回る。

しかし、そこはさすが愛し子を任せられた選び抜かれた兵達。無駄な動きなく各々が分担して役目を遂行していく。

「何があったんだろうね?コタロウ分かる?」

緊張感漂う護衛に反してあまり瑠璃から緊迫感を感じないのはコタロウが周囲に結界を張っていて、怪我をすることはないと分かっているからだろう。

先ほどのように玉が飛んできたとしても怪我を負うことはない。

それでも、今も続く攻撃で怪我人も出ているようなので、できればすぐに安全な城に、と言いたいところだったが、慌てて逃げ惑う人の波に押され、思うように動きが取れない。

とりあえず安全を確保するということで、温泉施設へと戻った。

あそこは、セレスティンに見せるために少しの間従業員の子達に動いてもらったが、従業員の子達はまだ子供という年齢の子も多く、お祭りを楽しみたいだろうと本来は休みにしているので、今は人がいない。

一時的に避難するならちょうど良いだろうとなったのだ。

そうして、護衛に守られながら移動をしていると、コタロウとリンとカイが足を止めた。

「どうしたの?早く行かないと置いてかれちゃうよ?」

しかし、三精霊からの反応はなく、何故か大砲の玉が飛んできた港の方角を睨むように見ている。

『コタロウ、カイ、気付いた?』

『うむ』

『やっぱりあれだよなあ?』

『なんでこんな所に……』

三精霊で何かを話す。コタロウ達は分かり合えているようだが、瑠璃には何のことかさっぱりだ。

すると、コタロウがふわりと浮かび上がる。

『ルリ、我は少し様子を見てくる。

リン、ルリを頼んだぞ』

えっ!?と瑠璃が戸惑っている間に、リンは心得たと言うように頷くと、コタロウは瑠璃の返事を待たずして港の方へと飛んでいってしまった。

「あっ、ちょっと、コタロウ!」

『ほら、ルリ行くわよ』

「でも、コタロウが……」

『コタロウなら大丈夫よ。それより早く行かないと置いてかれるわよ』

追い打ちをかけるように前方から父の琥珀が瑠璃を呼んだことで、瑠璃は仕方なく足を進める。

琥珀はどことなく顔を強ばらせている。

こんな騒ぎの中なのだから仕方がないが、通常運転なのが母のリシア。

なんとものんびりとした口調で「コタロウちゃんはどこ行ったの?」と聞いてくる。

「ちょっと様子見てくるって。コタロウだから大丈夫だとは思うけど」

「そうね。最高位精霊様だもの」

のんびり話す二人を急かすように、琥珀が早く行こうと背を押してくるので、仕方なく先に進もうとした。

しかし、そんな瑠璃をその場に引き留めるように誰かに手を握られ引っ張られた。

やけにその手が小さいことに気付く。

反射的に振り返ると、そこには瑠璃も見知った、スラムの子供が三人ほどいた。

一様に、息を切らしており、その表情は固い。

てっきりこの騒動により怖がっているのかと思いきや……。

「愛し子様、来て!」

「早く早く!」

「来て来て!」

「えっ、えっ?」

戸惑う瑠璃も意に介さず、子供達は何か焦った様子で瑠璃の手を引いてどこかに連れていこうとする。

子供の力なのでそれほど強くないので、実際に瑠璃を動かす程の力はなく、瑠璃は足に力を入れて踏ん張ると子供達に目線を合わせてかがみ込む。

「いったいどうしたの?」

「説明してる暇ないの!」

「早くしないと間に合わない」

「お願い愛し子様、皆を助けて」

「えっ、助けてって……」

子供達の様子からただ事ではないことは分かるが、今の状況で勝手に行動しては周りに迷惑が掛かる。

待つのはユークレースのお説教だろう。

途方に暮れていると、リシアが動いた。

「ほら、何してるの。行くわよ、瑠璃」

「えっ、ちょっとお母さん!?」

リシアは瑠璃の腕を掴むと、子供達に「案内してちょうだい」と言って瑠璃を引きずる。

子供達は嬉しそうに案内を始めるが、

「ちょっと、ちょっとお母さん。勝手に行動するのはマズいって。後で怒られる」

「何言ってるの。こんな小さな子達が助けを求めてるのに無視するの?そんな子に育てた覚えはないわよ」

「いや、私も助けてあげたいけど……」

引きずるリシア。踏ん張る瑠璃。

まどろっこしくなってきたリシアは父のベリルを呼んだ。

「お父さん、瑠璃を頼んだわ」

「よしきた!」

そう言うとベリルは軽々と瑠璃を持ち上げた。

「ひゃあぁぁ」

「ほら、何してるのあなた。あなたも一緒に行くわよ」

「えっ、ちょっと待ってくれ、リシア」

リシアは琥珀すらも巻き込み、子供達と人の波の中に飛び込んだ。

それに慌てたのは瑠璃達の護衛をしていたユアンと竜族の兵達だ。

「おい、どこに行くんだ、ルリ!!」

「知らないー!」

ユアンが焦った表情で叫んでいるが、どこに行くのこちらが聞きたい。

慌ててユアン達護衛が後を追ってくるのが見えたが、人が多すぎて追いつけない。

そもそも竜族は体格が大きいので、中々人波をかき分けて進むのが難しいようだ。

逆に小柄な子供達はするすると人波をすり抜けてどんどん進んでいく。

ベリルに抱えられながら、とうとうユアン達の姿が見えなくなって、こりゃお説教決定だなと諦めることにした。