軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

07 万魔の森

『万魔の森』は、魔族領へ向かう時の序盤のフィールドである。

樹齢数百年もありそうな大木が並ぶ壮大なスケールの森だが、以前訪れた南部大森林に雰囲気は近い。

パーティメンバー全員が南部大森林を経験しているので、森を歩くのに特に難儀する場面はない。

ちろんゲーム終盤に訪れる場所なので、出現するモンスターは全てが高レベルである。

例えば『 不帰(かえらず) の森』で中ボスとして出てきた『マナビースト』がそのまま現れる。

全高約5メートル、四本腕のゴリラのような姿をした、強力な物理特化型のモンスターである。しかもゲームでは出てきても2体までだったのが、こちらの数が多いせいか4、5体一度に出現する。

「『スプレッドアイスジャベリン』!」

「『スプレッドスパイラルアロー』!」

接敵すると、まず炸裂するのはフォルシーナの氷属性魔法とアルファラの風属性魔法付きの弓撃である。

フォルシーナの魔法は以前使っていた『スプレッドアイスアロー』の上位版で、長さ1メートルくらいの氷の槍が無数に飛んでいく範囲魔法である。アルファラの方も『スプレッドアロー』の上位スキルであり、風属性が付与されている矢が無数に飛んでいく範囲攻撃だ。

それらを出会いがしらに食らったマナビーストは、突進することもできずに怯んでしまう。

そしてその隙を突いて、アミュエリザ、クーラリア、ミアールの前衛組が突貫し、1対1の戦いを始める。もはや彼女らはマナビースト戦は何度も訓練で討伐しているので、全く危なげなく倒してしまう。残りの1、2体も、フォルシーナとアルファラが追加で攻撃するか、リンが槍で一突きするか、聖女オルティアナが飛び蹴りからの連撃を炸裂させるかで決まってしまい、そこに腹黒国王の出番はない。

「見事な戦いだった。皆はもう一流の戦士と言えるだろう」

戦闘後、フォルシーナたち10代組6人が毎回なぜか俺の前に並んでくるので、しっかりと褒めておく。見ていると聖女オルティアナや将軍リンも物欲しそうな目を向けてくるのだが、そちらは女公爵ヴァミリオラに睨まれるので声は掛けられない。

しかし何もしないわけにはいかないので、野宿の時にまとめて褒めておこうと決めておく。そういう細かい心配りが断罪を遠ざけるのである。

なおマナビーストからは『エクストラポーション』の材料となる『マナビーストの血晶』が得られるのだが、ザコのマナビーストは確定ドロップではない。しかし『神運』スキル持ちのミアールのお陰でドロップ率は高く、貴重な素材が一気に集まってくるのがありがたい。

それ以外にも巨大蜘蛛の『ギガントスパイダー』や、猛毒を飛ばしてくる大型蛇の『ブッシュスナイパー』などを倒しながら、『万魔の森』進んでいく。

奥に入るに従い森の木々はスケール感を増していき、いかにも深い森の中に入ってきたという感が強くなってくる。太く真っすぐ天の伸びる樹木は、その高さは50メートルを軽く超えるだろうか。木漏れ日は斜めに差し込む光の帯をいくつも形作り、苔むした大岩があちこちに転がる景色は、いっそ神秘的なくらいである。

戦闘と休憩を挟みながら森を行くこと6時間ほど、俺たちは森の中を東西に流れる川のほとりに辿り着いた。

川幅20メートルほどだろうか。透明度は高く、水深も浅いため、小石が敷き詰められた水底がよく見える。河原も広く、ここが『万魔の森』の奥地でなければレジャーで使いたいロケーションである。

この川を渡れば、魔族領へ続く次のフィールド『千剣山脈』へと入るわけだが、もちろんその前にこなさなければならないイベントがある。それはもちろん中ボス戦だ。

俺たちが小石が敷き詰められた広い河原に足を踏み入れると、川の下流から激しい水音が聞こえてきた。その水音は次第に大きくなり、そして音の主が川下に姿を現した。

『ブラッディスパイン』。全身真っ赤な、巨大ザリガニ型のモンスターである。

ザリガニ型だが両腕の先はハサミではなく、無数の棘が突き出た球体になっているのが特徴だ。全長は20メートルを超えるだろうか。棘付き腕も相応に大きく、一撃を食らえば全身を貫かれて悲惨なことになりそうである。

シャアアアッ!!

河原に上がってきて、両腕を持ち上げ威嚇してくる巨大ザリガニ。

迫力あるその姿を前にして、しかしフォルシーナたちは全く怯んだ様子もなく前に出てくる。

「お父様、戦ってよろしいですか?」

「うむ、まずは自由にやってみるといい。見ての通りのモンスターだが、口から水流のブレスを吐いてくるので注意せよ」

「わかりました」

とりあえず戦うのは年少組6人である。

「マリアンロッテ、強化を」

「了解フォルシーナ。『ディフレクションウォール』『ホーリーエッジ』」

フォルシーナの指示でマリアンロッテが瞬時に防御力アップ、攻撃力アップの魔法を全員にかける。

「『アイスフォートレス』。ブレスが来たらこれで 凌(しの) いで」

フォルシーナが『精霊樹の杖』を振るうと、目の前に分厚い氷の壁が出現する。これで戦闘準備完了である。

「魔法と遠距離スキルで一斉に攻撃。その後前衛は末端から攻撃して動きを止めて。あの腕だけは注意。アルファラは大きな動きが見えたら牽制を」

「はい!」「了解!」「承知した」

キビキビした動きで、フォルシーナたちは氷の壁の左右に移動、まずはフォルシーナの氷の槍『アイスジャベリン』と、アルファラの風をまとった矢『スパイラルアロー』、それからクーラリアの飛ぶ刃『斬月』、ミアールの飛ぶ刺突『ソニックスラスト』を放つ。

こちらに突進を始めようとしたブラッディスパインは、カウンター気味に4人の一斉遠距離攻撃を受けて、出鼻をくじかれたように動きを止めた。

「参る!」

「行くぜ!」

「参ります!」

そこに少女騎士アミュエリザ、狐獣人剣士クーラリア、メイド剣士ミアールが突貫していく。

フォルシーナの指示通り、左右から挟み込むように接近する。狙いはブラッディスパインの太い脚だ。巨体相手に末端から攻撃を仕掛けるのは定石である。

彼女らは強攻撃スキルを駆使し、堅い表皮を難なく斬り裂き貫いて脚を切断、ブラッディスパインを移動不能に追い込んでしまった。

それでも棘付きの腕を振り回したりブレスを吐いたりして暴れるブラッディスパインだが、フォルシーナ、アルファラらの遠距離攻撃を次々と撃ち込まれてあっというまに瀕死状態になった。

最後『神運メイド』ミアールが『ソニックスラスト』を頭部に撃ち込んで、ほぼ一方的な戦闘は終了となった。

その日は、河原から少し離れたところでの野営となった。

野営といっても、テントの設営はレアアイテム『モバイルフォートレス』を設置するだけだ。亀の甲羅のような魔導具で、魔力を通すと巨大化して、亀の甲羅型の家になる。

快適施設も満載の公式チートアイテムで、風呂やシャワーまで完備しているのだが、フォルシーナたちはやはり川での水浴びをしたがった。

許可をすると大喜びで水着に着替えて遊び始めるフォルシーナたち。今回は新たに将軍リンもいるのだが、彼女も髪色にあわせた青いビキニ姿になっていて、他のメンバー同様俺にわざわざ見せにきた。

「こ、国王陛下、この格好はいかがでしょうか? 陛下のお気に召しますでしょうか」

「……うむ。リン将軍に似合っていて良いと思う。そうしていると、貴殿が国で一位二位を争う騎士であるとは思えぬな」

「そ、それではどのような意味なのでしょう」

「もちろん可憐で美しいという意味だ。とても槍を手に戦うとは見えぬほどにな。もっとも、リン将軍の美しさは強さの裏打ちがあってのこととも思うが」

「う、美し……っ、いっ、いえ、お褒め頂きありがとうございます。これからも陛下に気に入っていただけるように精進いたします……っ」

俺が好感度アップのために言葉を選んで褒めると、リンは顔を真っ赤にして川の方へ小走りに去っていった。その先には赤いハイレグのヴァミリオラと、白いビキニの聖女オルティアナがいるが、三人揃うとそれはそれですごく絵になる光景である。

フォルシーナたちも白い肌を惜しげもなくさらして水遊びをしているのだが、その様子はまさにゲームかアニメの1シーンである。そのまま写真にでも撮ったら飛ぶように売れるだろう。

もちろんそれらを俺がじっと見ているとただの変態国王になるので、なるべく見ないようにしている……と言いたいところなのだが、

「お父様も早くお着替えになって、こちらにいらっしゃってください!」

とフォルシーナに急かされてはどうすることもできなかった。

しかしさすがに黒のブーメランパンツだけは勘弁願いたいんだけどなあ。なんで年頃の娘さんたちは、腹黒丸眼鏡糸目国王の身体なんて見たがるんだろうか。