軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

78 ホワイトブリムの勇者

マルクェクト絶対歴1296年の春頃から、サンタマナ王国王都モノカンヌスの冒険者ギルド本部で、2つの噂がささやかれるようになった。

2つは、それぞれ別の噂だが、いずれの噂でも焦点にいるのは同じ人物――かの有名な英雄・キュレベル護国卿だった。

1つ目の噂は、キュレベル護国卿の配下が精力的に高ランクの魔物狩りを行っている、というものだ。

護国卿は彼自身の功績への報酬として、なんとも異例なことに王都からほど近い位置にあるダンジョンの所有権を所望した。

ソノラート方面への領地拡張を要求すると思われていただけに、国の上層部では議論があったらしいが、結局は護国卿の要求通り、爵位にふさわしいだけの領地と王都旧市街の屋敷の他に、王都から半日の場所にあるB級ダンジョン「古代火竜の廃巣窟」が護国卿の所有となった。

本来であれば既得権を侵された形になる冒険者ギルドとの間にトラブルが起きそうなものだが、このダンジョンはもともと、人型の魔物が多く、手こずる割に素材面で旨みが少ないため、冒険者ギルドも是が非でも独占したいとは思っていなかった。

国から管理を任されている冒険者ギルドとしては、たまには探索の手を入れて内部の状態を把握したり、増えすぎた魔物が外へと湧き出さないよう間引きしたりすることを怠るわけにはいかない。それには当然金がかかる。もちろん、少ないながらも素材やドロップアイテムによって収益が発生することはあるが、ダンジョンを管理する手間を考えれば、収支としてはマイナスであり、できることなら手放したい「不良ダンジョン」だと言えた。

そんなダンジョンをもらってどうするのかと冒険者ギルドはいぶかしんだが、それを直接口にする者はおらず、これ幸いとばかりにキュレベル侯にダンジョンを「押し付ける」ことにした。若造がダンジョンからは収益が出ると聞いて先走ったのだろうが馬鹿を見たな、と冒険者ギルドは内心で嘲笑いながら、キュレベル侯に嬉々としてダンジョンの権利書を譲った。

ところが、案に相違して、キュレベル護国卿は精力的にダンジョンの探索を行っているようだった。

ここに至って冒険者ギルドは、キュレベル侯に謀られたのではないかとの疑いを抱く。

あのダンジョンにはギルドでですら把握していない「何か」があり、英雄として名高いキュレベル侯はどのような経路でがそのことを知って、功績の褒賞としてダンジョンを望んだのではないか、と。

とはいえ、キュレベル侯はダンジョンを独占するつもりはないようで、届け出さえすれば、ごく一般的な通行料のみで、ギルドの冒険者でもダンジョンに潜ることができる。

そのため、冒険者ギルドでは優秀な冒険者に指名依頼を出して古代火竜の廃巣窟に潜らせ、極秘裏にキュレベル侯の見出した「何か」を探らせようとした。

が、結局は実入りの悪い面倒なダンジョンであることが確認されただけの結果に終わり、ギルドは首を傾げながらもそれ以上の詮索を諦めざるをえなかった。

もうひとつの噂は、古代火竜の廃巣窟他、いくつかのダンジョンやフィールドで目撃された、奇妙な冒険者についての噂だった。

その冒険者は、どう見てもメイドにしか見えない格好をした17、8歳程度の少女なのだが、見た目に反して大剣を力任せに振り回して戦うのだという。

しかも、目撃者の中には、少女の大剣が炎に包まれていただとか、雷を宿してすさまじい速度で敵を切り裂いただとか、挙句の果てには、大剣で大地を割り、地割れの中に敵を呑み込んだだとか、まるで伝説の中の勇者のような技を使っていたと言う者がいた。

その噂から、少女はいつしか《ホワイトブリムの勇者》と呼ばれるようになり、一体どこの誰なのか、冒険者なのか、貴族のお抱えなのかと様々な物議を醸すようになった。

少女の容姿については、意外に可愛らしい顔だったと言う者もいれば、恐ろしい形相のオーガのような女だったと言う者もいる。

少なくともモノカンヌスの冒険者ギルドに所属している冒険者でないことは確かめられていたが、それ以外の一切のことは謎に包まれたままだ。

少女については、唯一、古代火竜の廃巣窟でキュレベル侯と一緒にいるのを見たという目撃情報があることから、英雄キュレベル護国卿のお抱えの従者だとか、秘密の弟子だとか、果ては侯の隠し子なのだとか、様々な憶測がなされていたが、キュレベル侯自身はこの件についてはノーコメントを貫いている。

「――うわあああああっ!」

「オーガだ、オーガが出たぞ!」

「群れだ! 変異種がいる!」

そう叫びながら古代火竜の廃巣窟第5層を逃げ惑っているのは、Cランクパーティ〈戦場の槌〉のメンバーだった。

〈戦場の槌〉は元傭兵たちが集まって結成された冒険者で、気性の荒さから他の冒険者とのトラブルを起こしながらも、危険なクエストにも平気で志願することからギルドからは重宝されているパーティだ。

今回、〈戦場の槌〉が、実入りの少ないと言われている古代火竜の廃巣窟に潜っているのは、王都に流れるある噂話が原因だった。

それは、

――キュレベル侯は、古代火竜の廃巣窟で見つけた「何か」を秘匿しているのではないか。

というものだ。

実入りの少ないはずのダンジョンに、騎士たちを引き連れて自ら潜るキュレベル侯の「奇行」は、ギルドの冒険者の間では有名だった。

キュレベル侯自身は、配下の騎士を鍛えるためだと言っているが、それを信じる者は半分と言ったところだろうか。

このダンジョンの奥底には冒険者ギルドですら把握していない「何か」があり、キュレベル侯はそれを独占しようとしている――そのような噂が流れているのだ。

そしてこの〈戦場の槌〉も、そのような噂を信じたパーティのひとつだった。

戦場働きの間にすっかり貴族不信に陥った彼らは、キュレベル侯がたかが配下の騎士のレベリングのために危険なダンジョンに自ら赴くなどとは信じなかった。

廃巣窟には必ず何かがある。そう確信して、ギルドにも内密に今回のダンジョンアタックを敢行した。

が、命知らずとはいえ所詮はCランクの悲しさで、突如現れたオーガの群れになすすべもなく逃げ出すことになった。

もともとが、廃巣窟のダンジョンランクはB。彼らの身の丈にあったダンジョンとは言えないのだ。

「てめぇはここに残って足止めしろ!」

「っざけんな! こんなところで死んでたまるか!」

パーティのリーダーが、一番下っ端のメンバーに 殿(しんがり) を務めるよう命令するが、当然のようにメンバーは反発した。

だが。

「嫌でもやってもらう――ぜッ!」

「ぐああああっ! てめぇ!」

リーダーの振るった巨大なメイスが、反発したメンバーの片膝を打ち砕いた。

「死にたくなきゃ、せいぜいあがくんだな! 感謝するぜ、バフェット! てめぇが犠牲になってくれるおかげで、俺たちは生き延びられるんだからな!」

「ギャハハハハ、ありがとよ、バフェット!」

他の冒険者たちも、足を砕かれた冒険者に嘲弄を浴びせながら逃げ出していく。

「くそがあああああっ!」

残された冒険者は、壁によりかかりながらもなんとか剣を構え、向かってくるオーガを睨みつける。

迫るオーガに、

「くそっ、くそっ、くそおおおっ!」

冒険者が覚悟を決めて剣を振り上げた、その瞬間のことだった。

一陣の風が、冒険者の背後からオーガへと向けて駆け抜けた。

冒険者はその風の行方へと目を向けて――絶句した。

「な、なんでこんなところにメイドが……!?」

そう。そこにいたのはメイドだった。

メイドが、身の丈ほどもある巨大な大剣を持って、オーガの振り下ろしてきた棍棒の一撃を受け止めていた。

「お、おい! そのオーガは変異種だ! 女子どもの手に負える相手じゃねえぞ!」

冒険者がそう思ったのも無理はない。

メイドは小柄で華奢な少女のように見えたからだ。

年の頃は17、8か。長めの栗色の髪を後頭部でくくっている。後ろから見える横顔はあどけないながらも整っているようだった。それから――きわめて大事なことだが、背丈のわりにとてもグラマーな身体つきをしていた。

が、オーガを相手にそんなことは何の役にも立ちはしない。

だというのに――

「――〈 炎舌剣(フレイムタン) 〉!」

メイドがつぶやいた瞬間、メイドの抱える大剣が火を噴いた。

ぐぉるああああ!

オーガが悲鳴を挙げてのけぞった。

そこに、

「〈 雷爆閃(サンダーストライク) 〉ッ!」

メイドの大剣が、目にも留まらぬ速度で掻き消えた!

……ようにしか、冒険者には見えなかった。

消えた大剣は、紫電を撒き散らしながらオーガ変異種の首を貫通していた。

メイドと大剣は、さながら稲妻のような速度ですさまじい突きを放ち、〈戦場の槌〉が6人がかりで敵わなかったオーガの喉笛を一撃で貫いてしまったのだ。

「す、すげぇ……」

冒険者が呆然とつぶやく間に、オーガの仲間が追いつき、メイドへと襲いかかっていった。

メイドはオーガを炎を纏わせた剣で切り裂き、稲妻とともに貫いていく。

そして、剣の柄から水弾を撃ち出して距離を取ったかと思うと、

「――〈 崩岩撃(グランドダッシャー) 〉!」

大剣をおもむろにダンジョンの地面へと叩きつける。

地面が、爆発した。

叩きつけられた地点を起点に、突如として起こった岩石流がオーガの群れを呑み込んでいく。

その様子を冒険者は顎が落ちそうな様子で眺めている。

「――ふぅっ。なんとかなりました~」

メイドの少女が、目の前の惨状とはギャップがありすぎる軽い口調でつぶやきながら、地面から剣を引き抜こうとする。

「う~んしょっ」と可愛らしい掛け声をかけて剣にしがみつくメイド。

その背後で、巨大な影がゆらりと立ち上がった。

「――っ! 危ねえ!」

冒険者の叫びに、メイドの少女が弾かれたように振り返る。

そこには、倒したはずの変異種がいた。

喉に大穴を開けられ、そこから血を噴き出しながらも、変異種は手にした棍棒を振り上げ、メイドに振り下ろそうと――

――ゅん! ずしゅっ、どがっ!

冒険者の男には、その時何が起きたのかが理解できなかった。

猛スピードで飛来した何かが、オーガ変異種の腕に命中してオーガの腕を爆散させ、持ち手を失った棍棒がメイドの頭を超えて宙を舞い、岩石流でぐしゃぐしゃになっている地面へとめり込んだ。

目にした事象をゆっくりと振り返った結果として、そういうことが起こったらしいということが後でわかっただけだ。

メイドは変異種に近寄って今度こそとどめを刺すと、何かが飛来してきた方向へ向かってぺこりと一礼する。

「助かりましたぁ、エド坊ちゃま」

「ステフ、油断するなって言っただろ」

そう言いながら現れた人影を見て、冒険者の男は自分の目を疑った。

現れたのは、なんと、5歳くらいにしか見えない子どもだったのだ。

子どもは片手に弓を下げていたが……それでは、さっき変異種の腕を爆散させたのは子どもの放った矢だったというのか?

「だってぇ、まさかあれで生きてるなんて思いませんよ」

「オーガは体力馬鹿なんだから、変異種ならあれくらいできてもおかしくないよ。

あの変異種は、【タフネス】持ちみたいだったし」

「先に言ってくださいよぉ~!」

「だって、ステフが任せてって言うから……いや、それより、あんた、無事か?」

少年が、冒険者の男へと近づき、声をかけてくる。

冒険者の男は、困惑しながらも言葉を返す。

「あ、ああ……助かったよ。

おまえらに助けられた……んで、いいんだよな?」

男の口調があやふやなのは、目の前にいるのがメイドの少女と年端のいかない少年だからだろう。

「うわっ、ひどい怪我だ。骨が飛び出てるじゃないか。

オーガにやられたのか?」

「いや……パーティメンバーにハメられたんだ。逃げるための時間稼ぎのために、足を潰されたんだよ。くそっ、あいつら……タダじゃ済まさねえ」

「そうか。それは災難だったな。

パーティということなら、冒険者なんだよな? でも、おかしいな。今日は冒険者が潜る予定はないって、父さんにちゃんと確認したのに」

「父さん……?」

「ああ、キュレベル侯だよ。このダンジョンの持ち主の」

少年の言葉に、冒険者の男の顔色が悪くなった。

「お、おい、顔色が悪いな。早く治してやらないと。―― И(ヒール) 」

少年が描いた魔法文字が光ると、男の傷がみるみるうちに回復していく。

「お、おお……こんなすごい【治癒魔法】は初めて見る」

「で、何があったんだ? ひょっとして、冒険者ギルドに届けを出さずにダンジョンに潜っていたのか?」

「おまえは……いや、貴方様は、キュレベル侯のご子息か」

「おまえでいいよ。まだ2歳になったばかりだし。名前はエドガーだ」

「に、2歳……?」

冗談だよな、とつぶやき、冒険者の男が話を続ける。

「俺はバフェットという。

たしかに俺たちの……いや、俺のいたパーティは無届けでダンジョンに潜った」

「届けは義務ではないからそれは責めないけど、なんだってそんな馬鹿なことを? 遭難した時に助けてもらえないぞ?」

「わかっている。だが、その……」

言いよどむ男に、少年が意地の悪い顔になった。

「ははぁ、さてはあの噂を真に受けたんだな? 父さんがこのダンジョンで何かを見つけたんじゃないかっていう」

「そういうことだ……。だが、エドガー様がそう言うってことは、噂はデマだったか」

「様もいらないけど、まあいいや。

父さんが最初から言ってるだろ。騎士を鍛える修練の場としてこのダンジョンをもらったって。このダンジョンは、騎士の修行には便利なんだよ。敵も組織だった動きをしてくるから、騎士の集団戦闘の練習には持ってこいだ。たしかに素材は微妙だけど、半ば放置されてただけあって魔物のレベルも高めだし」

「そういうことかよ。くそっ、何が、『貴族様はてめぇに利益のないことは絶対にしねえ』だよ。完全に騙された」

「気の毒だったな。まあ、生きて帰ったら、ギルドに囮落としをされたと訴えるんだな。パーティメンバーを怪我させて囮にする行為は、ギルドから除名だったろ、たしか」

「子どもなのに、冒険者ギルドのことまでよく知ってるな。さっきの攻撃といい、キュレベル侯の鬼子ってのはおまえのことか。……って、すまん、失礼だったな」

「べつにいいよ。自分で戻れる?」

「ああ……貴族の子息に、そこまでやってもらっちゃ冒険者として情けなくなっちまう。これでも斥候としてはそれなりに優秀なつもりだ、逃げ帰るくらいはできるさ」

その言葉に、少年は冒険者の男をちらりと見て、

「……そうみたいだな。でも、【忍び足】が伸び悩んでるだろ? 【忍び足】は 水面(みなも) を歩くようにそっとだ。そうでないと、ゴブリンやオークならともかく、影トカゲなんかには見つかるぞ」

「み、水面を……そうか、なるほど! たしかにその通りかもしれない!」

少年の言葉に、男は思わずといった感じでポンと手を打った。

「じゃあな、ちゃんと生きて帰れよ。囮落としについては俺からもギルドに報告するが、やっぱり自分で復讐したいだろ?

――さあ、ステフ。もうちょっと稼いでいこうか」

「え~、もうけっこう狩ったと思うんですけど」

「ステフは放っておくと怠けるタイプだからな。一緒の時はビシビシやらないと。

エレミアなんかは放っとくとどこまでも無茶をするから、どこかで止めないとだけど」

「ここ数日根を詰めすぎだって言って、エレミア様はお休みなんでしたっけ。いいなぁ~わたしもお休みがほしいです」

「エレミアくらい働いたらな」

そんな緊張感のない会話をしながら、少年とメイドがダンジョンの奥へと消えていく。

地面はメイドの放った魔法?でぐしゃぐしゃだったが、少年が手のひらを向けたところから綺麗に整地され、ダンジョンはまるで何事もなかったかのように元の様相を取り戻した。

「……あれがキュレベルの鬼子と、《ホワイトブリムの勇者》かよ」

冒険者の男は、逃げ帰るのも忘れて、2人の去った方を見つめていた。

「とぉ~!」

どこか間の抜けた感じのかけ声とともに、恐ろしい速度で大剣が振り抜かれ、不運なゴブリンたちが数体まとめて真っ二つになった。

好調に戦うステフを眺めながら、俺はこれまでのことを思い出す。

戦いの訓練を始めてから、ステフのドジが目に見えて減った。

思うに、ステフは日常生活では力を持て余していたのではないだろうか。大剣を普通の剣のように振り回せるほどの力だ。日常では力加減が難しかったとしても不思議ではない。

ステフ自身、自分が特別に力が強いとは思っていなかったようであり、それが周囲から見た時に、「ドジでそそっかしい」という評価になってしまっていたのではないか。

クラス〈魔法戦士〉の影響か、それとも訓練の成果なのか、ステフは自身の力を細かくコントロールすることができるようになった。

そのおかげで、何もない所でコケるというような「ドジ」は飛躍的に減り、炊事・洗濯・掃除などの効率が大きく改善、力仕事までこなせるようになったことで、ステフは屋敷のメイドの中でもエース級の人材とみなされるまでに成長していた。

コーベット村時代からのメイド長などは、「はじめはどうなるかと思いましたが、ここまで成長してくれるとは……」と感激の涙を流したという。

……とはいえ、砂糖と片栗粉を間違えて紅茶にとろみがつくというようなたぐいのミスは減らなかったので、根がドジであることは否定できそうにないのだが。

王都で新しく雇った教育係のメイドのおかげもあり、メイドとしての挙措もぐんぐん洗練されてきた。

戦うステフを【鑑定】。

ステファニー・ポポルス(キュレベル家侍女・トレナデット村村長の娘・《パワフルメイド》・《ホワイトブリムの勇者》)

レベル 31

HP 123/123(78+45)(↑70)

MP 58/172(127+45)(↑120)

スキル

・達人級

【気配察知】2(NEW!)

・汎用

【同時発動】4(NEW!)

【格闘技】3(NEW!)

クラス

〈魔法戦士〉C(↑2)

クラスの成長を促すために、最低限必要そうなスキルだけに絞って、他は習得しても【スキル魔法】で封印するようにしている。

【同時発動】はカンストボーナスの【無文字発動】習得のための布石だが、適性が低いため伸び悩んでいる状況だ。

【気配察知】は、適性の低い【聞き耳】を苦労して上げ、他いくつかのスキルと合成することでなんとか習得することができた。

【格闘技】も適性は低いが、剣がない状態でも最低限動けるように、がんばって習得してもらっている。

最近獲得した二つ名《ホワイトブリムの勇者》は、魔法系二つ名にカウントされるらしく、MP使い切りによるMP最大値の拡張ができるようになった。

そのため、燃費が悪く切り札扱いだった魔法剣も、最近はかなり遠慮なく使えるようになっている。今後もMPが伸び続けることを考えたら、最終的にはかなりぶっ壊れた性能になりそうだな。

アルフレッド父さんにわがままを言って押さえてもらったダンジョンを探索することでレベルも大きく上がっている。

今なら、たとえガゼインあたりでも、ステフを人質に取ることは難しいだろう。

〈魔法戦士〉についても、魔法剣を使わなくても父さんとそこそこ打ち合える程度には戦えるようになってきた。

人間相手に魔法剣を使うと手加減が難しいが、仮に魔法剣ありで父さんと戦ったら、十本に2、3本くらいはステフが取れてもおかしくない。御前試合後、父さんの氷霜もさらなる進化を遂げているが、ステフの爆発力をいなすのは大変だろう。

――そんなわけで、2歳の俺は、アルフレッド父さんやジュリア母さんやステフやエレミアを鍛えながら、自分のスキル上げや研究を重ねていくという、地道ながらも日々変化があって楽しいような、そんな毎日を送っていた。