軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

72 孤独の笛

話がある、と言っていたエレミアとは、その日の夕方になってからようやく時間を取ることができた。

褐色の肌に銀のショートカットの美少女は、話の場所に屋敷の屋上を指定してきた。

俺やエレミアの身体能力なら易々と登ることができる。

夕陽に染まる屋根の上に、銀の髪を黄昏色に煌めかせて、エレミアがひとり佇んでいた。

「……笛、持ってきてくれた?」

「ああ」

エレミアには、誕生日プレゼントとしてもらった笛を持ってくるように言われていた。

話を始める前に、と言って、エレミアが笛の吹き方を教えてくれる。

前世の楽器で言うとハーモニカに近い吹き方だが、音の方はフルートとリコーダーを足して割ったような感じだ。

エレミアに指導されながら吹き方を覚え、簡単な曲も教えてもらう。

エレミアには筋がいいと褒められた。

日が暮れる前にエレミア先生による笛の教室は終わった。

終わったところで、屋根の上に沈黙が降りた。

「……えっと、お話をするね?」

そう言うエレミアを制して、俺が言う。

「その前に、俺からも話しておくことがあるんだけど……」

エレミアが頷くのを待って続きを口にする。

「――アルフレッド父さんに、エレミアを引き取ってもらえるように頼んだんだ。

大事な仲間だから、家族にできないかって」

「えっ……」

エレミアが、びくりと身を震わせ、口元を手で覆った。

エレミアは、どうしよう、どうしようとつぶやきながらオロオロする。

そして、大きく深呼吸をしてから言った。

「うぅ……オロ、じゃなくてエドガー君はいつも強引なんだから」

「……ひょっとして、まずかった……?」

エレミアの様子に、エレミアを家族にできると思って舞い上がっていた俺の頭が急激に冷えた。

「あのね……やっぱり最初に言っておかないといけないと思うんだけど、ボクはエドガー君の誘いには応えられません……今はまだ」

ガン、と頭を殴られたような衝撃を受けた。

……俺、ひょっとしてエレミアに嫌われてる……?

エレミアは俺の顔色に気づいて、あわてて言う。

「う、うぅん!? エドガー君が嫌とかじゃないんだよ!?

そうじゃなくて……ボク自身のケジメの問題なんだ」

「……ケジメ?」

「ボクは、〈 八咫烏(ヤタガラス) 〉に洗脳されて、人を殺したんだよ」

「それは……」

「騙してた方が悪いって言うんだよね。

エドガー君は、みんなにもずっとそう言い続けてくれてるよね。そうじゃなかったら、酷いことになってた人が、もっとたくさん出たと思う」

「俺は、方便で言ってるんじゃない。

本当に、騙してた方が悪いんだ」

「うん、それはそうだけど、騙されてたからって許されるって思うのも、それはそれでおかしいと思うんだ。

〈 八咫烏(ヤタガラス) 〉に都合のいい『反省』じゃなくて、本当の反省をしなくちゃいけないんだと思う。

そうでなきゃ、ボクはずっと、〈 八咫烏(ヤタガラス) 〉の被害者だったってことになってしまう。

ううん、それはどれだけ否定したくたって事実なんだけど……でも、そのままじゃ、助けてくれたエドガー君と、助けてもらったボクっていう関係から抜け出せないと思うんだ。

エドガー君がボクのことを迎え入れてくれるって言ってくれたのはすごく嬉しいけど、今のままじゃ、ボクは自分自身を許せないよ」

エレミアは、ここにはない何かを睨むように、目を細めた。

「だからボクは、昏き森に帰る。

帰って、昏き森の深奥――人っ子ひとり、魔物すら寄り付かない闇の領域で、禊ぎをして、修行をして、一人前の巫女になる。

そうしなくちゃ……助けられてばかりじゃ、ボクは自信を持ってエドガー君の隣に立つことができないと思うから」

「……そうか」

エレミアの瞳には決意が宿っていた。

「でも、エレミアは両親はいないって言ってなかったか?

その、昏き森とやらに、ダークエルフの仲間が住んでいるとか?」

「どうかな……巫女であるボクが攫われちゃったから、残ってるかどうか。

次の巫女候補を探して、大陸中を動きまわってるんじゃないかな。

詳しくは言えないけど、ダークエルフにとって巫女は欠かせないものだから」

「そんな状況で修業をするのか?」

「深奥には、どちらにせよ1人でしか入れないよ。

闇と向き合い、語り、お腹が空いたら闇を食べて、そうして精神を研ぎ澄ませていくんだ。

……ボクはそれが怖くって、部族から逃げ出したところを、ガゼインたちに攫われたんだ。修行に耐えられなくて逃げ出したんだと、みんなには思われてると思う。修行からも逃げて、自分の罪からも逃げてじゃ、ボクは自分を許せなくなってしまう。

だから、ボクは今度こそ闇に立ち向かう。立ち向かって、証明しなくちゃいけないんだ。ボクはもう昔みたいに弱くないんだって」

想像以上に過酷な修行のようだ。

今の、多少精神的に不安定になっていそうなエレミアを向かわせるのは気が引けるが……しかし、エレミアの決意自体は理解できる。

エレミアは、間違ったところからちゃんとやり直したいのだ。

間違ったところから出直して、正しい場所へと向かって歩き出したいのだ。

その、「間違ったところ」で出会った俺としては、エレミアに見切られてしまったようで寂しいが、エレミアのためを思えば、ここは笑って送り出してやるべき……なんだろうか。

それでも、俺はまだ納得できていない。

なぜか?

そう考えて、気づく。

エレミアの顔だ。表情だ。

口では立派なことを言ってるようにも思う。でも、思いつめたような、今にも泣き出しそうな、そんな顔をしている。辛いのを一生懸命こらえているような顔だ。

そうだ。この子はまだ子どもなんだ。

親に甘えて、愛情を注いでもらいながら心を豊かにしていかなくちゃいけない歳なんだ。

そんな年代の子が、1人で森に入って修行する?

できるわけがない。いや、できたとしてもやらせちゃいけない。

今のエレミアを1人にしておいたら、きっとどこまでも自分を追い詰める。

純粋すぎるほど純粋な子だ。その純粋さが、研ぎ澄まされた刃のように、自分の心を切り刻んでしまう。

そしてエレミアは、これまで大人たちに守ってもらえずに来たせいで、自分の心を守るすべをまだ知らない。ふてぶてしく開き直ることもできないし、自分を弁護する理屈を考えて自分と周囲を騙すこともできない。巫女として、御使いとして、自分を捨てろ、自分を殺せと言われて育ってきた子なのだ。

――このまま行かせてはいけない。

俺は強くそう思った。

「エレミアの言ってることは、正しいと思うよ。

でも、それはあくまでも一面の正しさだ。

小さな子どもが逃げ出したくなるような辛い修行を、大人たちが自分たちの都合で強いるのだとしたら、エレミアは自分を守るために逃げたっていいと思う。なにも、ひとりで立ち向かうことなんてない。一見正論のように聞こえる理屈でエレミアを追い詰めようとする汚い大人の言うことなんて聞くことはないんだ。昏き森のダークエルフたちのことは知らないけど、〈 八咫烏(ヤタガラス) 〉の幹部たちは、そうして子どもたちの良心につけ込むことで自分たちの良いように利用しようとしてたんだから。

辛ければ、逃げたっていい。何かすごいことを成し遂げなくたって、人間は生まれながらに幸せになる権利を持ってるんだからさ」

「でも……今のままじゃボクは……自分を許せないし、エドガー君の隣に立つこともできない」

「俺なんかのそばに立つのに、資格なんかいらないよ。

修行を乗り越えました、自分の罪と向き合いました、そりゃ、たしかにすごいことだけど、修行をしなくたって、自分の罪を受け止められなかったって、エレミアはエレミアだよ。

真面目で、すぐに思いつめて、極端な考えで自分を追い詰めてしまう、そういうエレミアのことを、俺は気に入ってるんだよ。

修行だとか、罪滅ぼしだとかは、全然関係ないことだ」

「そ、それは……」

「逆に、修行して自信満々になって帰ってきたエレミアってのも、どうなんだろうな。

俺の隣に自信を持って立てるかもしれないけど、その『自信』って何か違わないか?

俺の隣に立ちたいなら、今からだって立つことはできるよ。引け目を感じるのかもしれないけど、引け目くらい感じてたっていいじゃないか。一緒に時間をすごしていれば、そのうちエレミアにしかできないことだって見つかってくる。それは、離れていたら絶対にできないことだ」

「それは……そうかもしれないけど……」

「俺から離れて過酷な修行をして、それで俺の隣に戻ってくるっていうのは、目的と手段がちぐはぐじゃないか?

一緒にいたいなら、一緒にいればいい。

いや、一緒にいた方がいい。一緒にいることでしか得られないものが、たくさんあるんだから。

昏き森の深奥で学べることもあるだろうけど、一緒に生きていくことで得られるものと、修行で得られるものを比べたら、やっぱり一緒に生きていくことで得られるものの方が、ずっと貴重なものなんじゃないか?」

「一緒に生きていくことで……得られるもの……?」

「俺も偉そうなことが言える人間じゃないけど、今のエレミアは、自分を罰しようとしているように見える。俺の隣に立てないってのは、その言い訳だ」

「なっ……言い訳だなんて、そんなこと!?」

エレミアが声を荒げる。

ちょっときつい言い方をしてしまったか。

でも、そうだと思う。

エレミアは新しい生き方を模索する不安、そんなことが自分に許されるのかという不安を抱えている。元の昏き森での生活は、辛かったことは事実だとしても、過去に経験したことだから不安はない。

エレミアは、不安に押され、苦しくても不安を感じない方を選ぼうとしている。

だけど、それは本当にエレミアが幸せになれる道なのだろうか……?

「俺はずっと言ってるだろ。エレミアに罪はない。罪があるのはガゼイン以下〈 八咫烏(ヤタガラス) 〉の幹部どもだ」

「だけど……」

「騙されるってのは、キツいよな。相手を信じて、自分の心の奥深い部分をさらけ出したのに、その心を利用されたわけだからさ。

エレミアはきっと、そんな自分が許せないと思ってる。

だけどさ、あいつらは、そういう気持ちこそを利用してたんだ。悪神様に申し訳ない、そういう罪悪感を持たせることで、人を殺す罪の意識をなくそうとしていた。

だから、あいつらから自由になるために必要なのは、自分を許さないことじゃないよ。

むしろ逆で、エレミアは自分を許すべきなんじゃないかな。

エレミア、君は俺のそばにいていいんだ。俺はエレミアと一緒にいたいと思っていて、父さんや母さんもそれを許してくれたんだから」

「ボクが……そばにいていい……」

エレミアの瞳から涙が溢れる。

「そうか……ボクは、自分を許すべきだったんだ。

ううん、ボクは、ボクを許してもよかったんだ……」

エレミアが泣きながら笑う。

「ふふっ。おかしいね。

たしかにエドガー君の言う通り、昏き森で修行したって、それがエドガー君のそばにいる資格になるわけじゃないのにね。

ボクは、ボク自身に厳しくすることで、罪を償おうとしてたんだ」

「何度でも言うけど、エレミアに罪はないぞ。

悪いのは、いたいけな子どもを洗脳して暗殺者としてこき使っていた〈 八咫烏(ヤタガラス) 〉なんだからな」

「それは……まだちょっと、引っかかるかな。

殺してしまった人は帰ってこないんだから、もう二度とあんなことにならないように反省はしないと、申し訳が立たないと思う」

「自分を追い詰めすぎないなら、それはいいことだと思うよ。

でも、これからは俺たちがいる。1人で抱え込む必要なんてないんだ」

「……うん」

柄にもなく説教くさくなってしまったな。

俺は照れを誤魔化すように、話題を変える。

「よかったよかった。

俺、エレミアとずっとやりたかったことがあるんだ」

「ずっとやりたかったこと?」

「うん。スキル上げだ!」

「ス、スキル上げ……?」

「エレミアの【疲労転移】だけど、俺には効果がないだろう?」

「う、うん。なんでかわからないけど、そうみたいだね」

俺はエレミアに【不易不労】のことを明かした。

「疲れないし、眠くならない……? そ、それって、ボクの【疲労転移】よりずっとすごいスキルじゃないか!」

「それは使い方次第だと思うよ?

エレミアの【疲労転移】の場合は、敵を疲れさせることができるけど、【不易不労】にはそういう効果はないから」

「で、でも、【疲労転移】は転移できる相手がいないと発動しないから、ひとりの時はちゃんと疲れるんだよ? それに、疲れにくいから眠くなりにくいだけで、ずっと眠らずにいることはできないし……。

それからもちろん、【疲労転移】の対象は無差別で常時発動だから、一緒にいると味方にまで疲労が転移しちゃう……」

それこそが、エレミアが人を遠ざけがちな理由だったな。

「とにかく、俺と一緒にいれば、エレミアは疲れないし、俺も疲れないだろ?

だからエレミアも、俺と一緒にえんえんと単純作業を繰り返してスキルを短時間で上げるってことができるはずなんだ」

「え、えんえんと単純作業で……」

エレミアが若干引きつった顔でつぶやく。

ちなみに、俺の【不易不労】とエレミアの【疲労転移】がどう干渉しあうかについては、カラスの 塒(ねぐら) にいた時に既に検証を終えている。

「絶対に疲れない」能力と「疲れを転移する」能力。

盾と矛みたいな関係だが、この2つの能力がぶつかりあうとどうなるのか?

考えられる可能性は以下の3つだろう。

(1)【不易不労】の持ち主には【疲労転移】が利かない(=そもそも疲労が転移しない)

(2)【不易不労】の持ち主にも【疲労転移】が利く(=【不易不労】で打ち消せない疲労が生じる)

(3)【不易不労】の持ち主も【疲労転移】の対象となるが、転移した疲労は【不易不労】によって打ち消される(=疲労は転移するが、転移先で疲労が消滅する)

(1)の場合はエレミアが疲労し、(2)の場合は俺が疲労し、(3)の場合は二人とも疲労しないということになる。

そして、カラスの塒での模擬戦で、どうやら(3)が正解らしいという結論が出ている。

俺たちにとっては最良の結果だな。

つまり――エレミアは俺とコンビで動いている限り、疲れることはないのである。

……ということを熱烈に語ると、エレミアの顔が次第に険しくなってきた。

そして、エレミアが俺にジト目を向けて言う。

「……ねえ、エドガー君。

さっきは『俺の隣に立つのに資格はいらない』なんて言ってたけど……やっぱりボクのスキルが目当てだったんじゃ……?」

「そ、そんなことはないよ!

これは、えーっとだな、つまり……」

あわてて言い訳を探す俺に、エレミアがくすりと笑った。

「わかってるって。エドガー君がボクのスキル『だけ』が目的じゃないってことくらい」

微妙にトゲのある言い方に、俺は冷や汗をかく。

「比率としては半々くらいかな?

半分よりはボクの方が大きいといいんだけど」

「は、半々なんてとんでもない!

べつに【疲労転移】がなくたってエレミアはエレミアだし……」

「じゃあ、一緒にスキル上げしなくてもいい?」

「う……いや、それは、全体の戦力アップや、スキルについての知見を得るためにも、エレミアには協力してほしいっていうか……!」

慌てまくる俺に、エレミアが笑いながら言う。

「ふふっ。嘘嘘。ボクも、もっと力がほしいって思ってたから、願ったりだよ」

「はぁ……それはよかった」

大きくため息をつく俺を見て、エレミアがなおも笑っている。

そんな彼女から同意を得て、【鑑定】でステータスを確認させてもらう。

エレミア・ロッテルート(《昏き森の巫女》)

年齢 7歳

ダークエルフ

レベル 21

HP 30/30

MP 67/67

スキル

・伝説級

【疲労転移】-

・達人級

【隠密術】4

【気配察知】4

【暗殺術】3(↑1)

【見切り】3(↑2)

・汎用

【暗殺技】9(MAX)

【手裏剣技】6(↑1)

【短剣技】6(↑2)

【夜目】5(↑1)

【闇魔法】5(↑1)

【格闘技】4(↑1)

【ナイフ投げ】3

【光魔法】3

【魔力感知】3

【雷魔法】3(NEW!)

【跳躍】2

【遠目】2

【吹奏】2

《昏き森の祝福》(気配の察知・隠匿に関するスキルの習得に中補正。)

〈 八咫烏(ヤタガラス) 〉での訓練と火竜との戦いによって全体的にスキルレベルが上がっているが、ワイバーン・火竜騒ぎの時も結局は魔物を倒していないため、レベルは上がっていない。

同じ元少年班でも、ミゲル、ベック、ドンナは戦闘スタイルが固まっていたが、エレミアに関しては、ステータスがどこかちぐはぐな印象を受ける。

その原因のひとつは、気配察知に優れた適性を持ちながらも、本来のエレミアはどちらかといえば単純な近接戦闘よりも魔法を絡めた戦闘が得意なのではないか、と思えることだろう。

何よりもまず気になるのは、

「《昏き森の巫女》って、魔法系の二つ名になるのかな?」

「魔法系の二つ名?」

俺はエレミアに魔法系の二つ名を持っていると使える最大MP拡張法について説明した。

問題は《昏き森の巫女》が魔法系二つ名に該当するかどうかだが、これは実際に試してみてもらうことにした。

MPを使いきって気絶すると変則的な成長眠に入ることになるため、俺なら10分、普通なら3時間の間眠ることになる。

今ここで眠られるわけにはいかないので、今晩眠る前にエレミアにはMPを使い切ってもらうよう頼んでおく。

「適性はわかる?」

「うん、聖務のついでに輪廻神殿に寄って見てもらったことがあるよ」

それによると、エレミアの適性は以下の通り。

S:偵察、闇、精神、霊魂、魔法感覚

A:近接戦闘(特に短剣・ナイフ)、投擲、知覚、光

B:火、弓、剣、魔法技術

C:地、水、風、槍

Z:精霊

ちなみに、レアな属性である雷については司祭からは何も聞いていないらしい。

他の人の【適性診断】もそうだけど、司祭の方でマイナーすぎる分野への適性は端折ってしまっている場合があるようだ。

機会があったらソロー司祭を捕まえて、マイナーな分野まで徹底的に【適性診断】をやってもらいたいところだ。特に、有用な【雷魔法】と銃への適性はちゃんと把握しておきたい。

「霊魂系スキルって何?」

「死霊術とか、悪魔召喚とかかな。昏き森のダークエルフの中には使える人がいたよ」

「魔法は得意なはずだけど、地水火風の四大の適性がいまいちってことか」

「巫女として闇に同化し、溶け込むような訓練をさせられてきたから。

ううん、正確にはそういう適性があるから巫女に選ばれたんだけど」

「魔法の適性を活かしたいけど、どちらかというと受動的な使い方なのかな。

【雷魔法】は使ってみてどう?」

「【光魔法】と同じか、少し使いづらいくらいだと思う」

「AとBの間、B+ってところか。

それならひとまずは【雷魔法】を伸ばして、【雷撃魔法】を覚えようか。

麻痺効果のある雷はエレミアの戦闘スタイルに合ってると思うし。【鋼糸技】も覚えれば、鋼糸に雷を流すっていう使い方もできる。

そしてゆくゆくは【闇魔法】や精神、霊魂系の魔法を模索してみるって感じかな。

……楽しみだな」

俺以外では唯一、スキルの強引なレベリングができる可能性のあるエレミアの将来を思うと、俺はニヤニヤするのを堪え切れない。

「……ふふっ。うん、楽しみだね」

茜色から藍色へと変わっていく空を背景に、エレミアがやわらかい笑みを浮かべていた。