軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

69 エドバイス・3

最後の面談者は、

「エドガー? 来たわよ?」

お姉ちゃん妖精ことメルヴィだ。

メルヴィ(テテルティア妖精郷出身・妖精長・《苦労人》・《がんばり屋さん》・《みんなのお姉さん》

??(生み出されてから1120年経過)

妖精

レベル 44

HP 34/34

MP 997/997

状態 妖精の誓い

スキル

・伝説級

【念話】5

【精霊魔法】5(↑1)

【鑑定】5(↑1)

【妖精の眼】4

【次元魔法】2(↑1)

【次元魔道具作成】2

・達人級

【統率】3

【魔道具作成】9(MAX)

【空間魔法】9(MAX)

【妖精の眼】7

【妖精の歌】4

【魔力制御】9(MAX)

・汎用

【指揮】9(MAX)

【道具作成】9(MAX)

【魔力操作】9(MAX)

【魔力感知】7(↑1)

《始祖エルフの祝福》

前回見た時は、アルフェシアさんの後だったから感覚が麻痺していたが、改めて見るとメルヴィのスペックは高い。チート妖精と言ってもいい。

「……なんか、俺がアドバイスできることとかない気がしてきたけど、悩みとかある?」

「そうねぇ。攻撃手段が乏しいのが悩みかしらね?

でも、妖精の誓いがあるから、あったとしても使えないのよね……」

「妖精の誓いが関係ないのは悪神の使徒だけど、悪神の使徒が相手なら、中途半端な攻撃手段なんて意味ないしね」

「一応、妖精が見える人からも姿を隠せるように、【光魔法】と【闇魔法】を覚えようかな、とは思ってるわ。【精霊魔法】でも同じことはできるけど、そこに都合よく光や闇の精霊がいるとは限らないものね」

「なるほど……」

「あと、機械を作るためのスキルは習得したいわね。

でも、大きな機械だとわたしの身体じゃ厳しいから、エドガーに頼ることになっちゃうかしら」

「もちろん手伝うけど、【念動魔法】を使えばメルヴィでも機械の組み立てができると思うよ。魔力は高いし」

「その手があったわね」

「そういえば、メルヴィの適性は?」

「適性? そうねぇ……」

メルヴィの説明によると、メルヴィの適性は以下の通りだ。

S:精霊、精神、知覚、魔法技術、魔法感覚

A:火、水、風、地、光、次元、製作

B:神聖、闇、偵察

C:

Z:武器全般、体術全般

近接戦能力がないことを差し引いても、相当な壊れ性能だ。

「そうだ、メルヴィに頼みたいことがあった」

「頼みたいこと? 何よ?」

「催眠術みたいなものを覚えられないか?」

「催眠術、ね……ご主人様の知識に、そのものズバリ【催眠術】っていうスキルがあるわね」

「〈 八咫烏(ヤタガラス) 〉の『牧師さま』も持っていたんだけど、どういうスキルかわかる?」

「うーん……他者の思考を魔力と詐術を用いて誘導する、というようなスキルね。

そんな危ないスキル、何に使わせたいのよ?」

「ああ、俺に使ってほしいんだ」

「え? エドガーに?」

「うん。転生から時間が経つに連れて、だんだん前世の記憶が薄れていっているような気がしててさ。【催眠術】でその記憶を喚び出すようなことができないかと思ったんだ」

「……そういうこと。

いいわ、できるかどうかわからないけど、やってみましょう。

あんたの前世知識は、ご主人様の解放の役にも立つと思うし」

「ありがとう。あと、【念話】を応用して、他人の心を読むようなことはできないかな?」

「それはどうかしら……。【念話】は心の声がだだ漏れにならないようにスキルにロックがかかってるみたいよ?」

ふむ。そっちは無理そうか。

そんな悪用し放題のスキルを女神様が作るはずもないから、期待薄ではあったのだが。

「そういえば、他の妖精たちも、メルヴィみたいなステータスなの?」

「ううん。達人級のスキルを持ってる 妖精(コ) がたまにいる程度で、魔力はあるけどスキルはそんなでもないわね。あ、【念話】と【精霊魔法】は低レベルだけど持ってるわよ?」

なるほど。やっぱり女神様の言うようにメルヴィだけが異質なんだな。

「メルヴィも【鑑定】持ってるけど、これまで見てきて何か気づいたこととかある?」

「気づいたこと? そうねぇ、あんただけぶっ壊れてることは当然として……」

当然なんだ。まあ、当然かもしれないが。

「〈 八咫烏(ヤタガラス) 〉の御使いたちは、やっぱり強かったわよね。〈黒狼の牙〉の傭兵たちもレベルが高かったけど、御使いはスキルが充実してたわね」

うん。たしかにその通りだ。

「それに対して、アルフレッドさんの指揮している騎士たちは、ちょっと弱くないかしら?

レベルは傭兵より低くて、スキルは御使いたちより少ないわ」

「ああ、それは俺も気になってたんだ。

と、その話をするなら父さんを呼ぼうか」

というわけで、父さんを呼びに行く。

こういう時に【念話】が通じれば便利だな、と思いつく。

【精霊魔法】の講習会の時にでも、【念話】の習得実験をしてみようかな。

「――で、僕の部下の騎士たちの話だって?」

アルフレッド父さんが応接室に戻ってきながら聞いてくる。

「うん。メルヴィとも話してたんだけど……率直に言って、ちょっと弱いなって」

「ずいぶんはっきり言ってくれるね……でも、たしかにそうかもしれない」

「〈黒狼の牙〉の傭兵は、ソノラートの戦争で鍛えられてるからレベルが高かった。

〈 八咫烏(ヤタガラス) 〉の御使いは暗殺者としていろいろなスキルを習得してたし、定期的に魔物狩りをしてレベルも上げていたよ」

「そうか……。今のサンタマナの若い騎士は、戦争経験がほとんどない。それに、冒険者の仕事を奪ってしまいかねないってことで魔物狩りもあまりできてない。集団戦の訓練はしっかりしてるけど、ステータスの面では問題だね……」

父さんはそう言って難しい顔で考えこむ。

そして、

「エド、君はどうしたらいいと思う? 何か考えがあるんだろう?」

「そうだね。まず、やっぱりレベルを上げるべきだと思う。具体的にはHPが40を超えるくらいまで」

「本当に具体的だね。その心は?」

「〈 八咫烏(ヤタガラス) 〉の御使いが習得していた【暗殺技】というスキルで即死しないのがそのラインだからだよ。上位スキルの【暗殺術】ならできるけど、【暗殺術】を持っている御使いは数えるほどしかいなかったから、最低限ということなら、やっぱりHP40だと思う」

「ふむ……最低限【暗殺技】によって一撃で排除されてしまう可能性を摘んでおきたいというわけだね。

他には?」

「【聞き耳】という汎用スキルを一定数に持たせておけば、歩哨の効率が上がると思う。

あとは、魔法の活用かな。

騎士に魔法使いは少ないの?」

「魔法を使えるということなら、まったくできない人のほうが少数派だね。

でも、実戦レベルで使える人となると、100人いても2、3人だと思う。

ただ、これを育てるにも微妙な問題はあってね」

「問題?」

「そもそも、実戦レベルで魔法を使える人は、冒険者になった方が儲かるんだよ。

優秀な魔法使いは、冒険者パーティでも分け前を多く主張できたりするから」

「ああ、なまじ魔法使いとして育ててしまうと騎士を辞める人が出てくるのか。

でも、貴族出身の騎士なら、冒険者にはなりたがらないんじゃないの?」

「貴族出身で魔法の適性がある人は、騎士団ではなくて宮廷魔術師を目指すからね。

で、彼らは特権を振りかざして前線に出たがらない。

結果として、騎士団は常に魔法攻撃力の不足に悩むことになるんだ」

父さんが肩をすくめる。

「……実戦レベルにならないってのは、どのくらいのものなの?」

「【火魔法】なら何とか着火ができるくらい、【水魔法】なら洗面器に水を満たせるくらい、【風魔法】なら細い枝が折れない程度の風、【地魔法】なら膝くらいの深さの穴が掘れるくらいかな」

スキルレベル1相当ってところか。

でもそれなら――

「鍛えれば、ある程度は強くできるよね?」

スキルさえ習得できるのなら、後は訓練しだいでどうとでもなるような。

騎士団から逃げそうにない人たちを選んで鍛えればよさそうだ。

「でも、スキルレベルの壁があるからね」

「スキルレベルの壁?」

初めて聞く言葉だ。

「まあ、エドは経験がないかもしれないけど、たいていの人はスキルがある程度まで上がると、そこで成長が止まってしまうんだよ。努力でそこから抜け出せることもあれば、あきらめるしかないこともある」

「でも、【適性診断】で適性があることはわかってるんでしょ?」

「だから、【適性診断】はあくまでも可能性を占うものであって、現実には割り引いて考えるべきだ、と言われているよ。いくらか司祭のリップサービスが入ってるんじゃないかと疑ってる人もいる。僕はソロー司祭と親しいから、リップサービスはないと思ってるけどね」

俺もソロー司祭がそういうことをするとは思わないが、他の司祭はどうだろう?

気の弱い司祭なら、「適性がない」とはっきり言うことを躊躇って、診断内容を盛ってしまうかもしれない。まして、相手が貴族の子弟だったりすればなおさらだ。適性に多少の潤色があったところで、他の人と比べることが難しい以上、バレることはまずないのだから。

「単体であまり意味のないレベルでも、集団で使えば意味のあるものもあるんじゃないかな?」

「集団で使うと意味がある……?」

「うん。たとえば、塹壕――即席の壕のようなものを掘るとか、落とし穴を作るとか、矢避けの壁を作るとか、大量の水でぬかるみを作り出して敵の足を止めるとか、【光魔法】の《ミラージュ》を一斉に使って集団の位置や数を誤認させるとか、風を同時に起こして降ってくる矢の雨をまとめて吹き散らすとか……」

「ち、ちょっと待ってくれ!

今エドはすごく重大なことを言ってる!

メモするから繰り返してくれないか?」

「え、うん」

あわてて紙とペンを取り出した父さんに頷き、俺はさっきの言葉をもう一度繰り返す。

「魔法のスキルレベルが1だと厳しいけど、スキルレベル3以上――贅沢を言えば4から5くらいあったら、今言ったくらいのことはできると思うよ」

「人数はどうだろう?」

「10人くらいいれば落とし穴や矢避けの壁、風で矢を落とすくらいはできると思う。それ以上は人数次第で規模が変わるね」

「なるほど……低レベルの魔法でも、集団で運用すればそれなり以上の効果が見込めるかもしれないわけだね。魔法使いはだいたい単独行動だからそういう発想はこれまでなかったよ」

「ちょっとあくどいかもしれないけど、単体では意味がない程度の魔法しか使えないなら、冒険者や宮廷魔術師になって騎士を辞められてしまうおそれもなくなるね」

「はぁ……参ったよ。これも前世の知識なのかい?」

「いや、前世には魔法はなかったから。

でも、軍の中に、工兵という兵種があって、道を作ったり橋をかけたりすることを専門にやっていたね」

「なるほどね。サンタマナの兵制では、騎士はそういうことをやりたがらないから、臨時徴募の兵士たちにやらせてるよ。でも、彼らは普段は農民だったりするから、必ずしも工事が得意とは限らない……というか、知識なんてないからかなり適当なものだよ」

「前世の俺の生まれた国の軍隊は、災害地に派遣されてインフラ――道路や橋や港湾なんかの復旧にあたったりもしてたよ」

「その軍隊は、貴族たちの私兵なのかい? それとも、国の常備軍?」

「国の常備軍だね」

「となると、特権階級だろう? よく、彼らが厭わずにそういう作業をやるもんだね?」

「特権階級ってわけじゃないよ。それに、災害などから民を守ることにやりがいを感じてるから、いやいややってるわけでもなかった」

アルフレッド父さんはこの世界の人にしては相当に頭のやわらかい人だと思うけど、前世の話は今ひとつ噛み合わなくなることが多い。

父さんにとっては国といえば王国だし、軍と言えば騎士団なのだ。

「そうそう、前世の知識についてなんだけど……」

アルフレッド父さんやジュリア母さんには、俺と同時にあっちの世界でたくさんの人を殺した男がこの世界に転生してきているという話はもうしてある。

「例の、もう一人の転生者も、俺と同じような知識を持っている。

奴がその知識を使って、この世界にはない武器や兵器を生産しようとする可能性は捨てきれない。というか、ほぼ確実にそういうことをしてくると思う。

その対抗策を考えておきたいんだ」

杵崎亨(きざきとおる) という名前の転生者――俺が前世で刺し違えたような形となった通り魔もまた、この世界で活動を始めているはずだ。

杵崎は自分を追って俺がこの世界に転生したとは知らないはずだから、まだ本格的には動き出していないと思うのだが、それは楽観的な予測にすぎない。

「よくわからないのだけど、君の前世の知識というのは、そんなにも危険なものなのかい?」

「極端な例を上げれば、核爆弾というのがある。

これは、俺の住んでいた国が前の戦争をしていた時に落とされて、都市二つが完全に焼け野原になった上、辛うじて生き残った人々も後遺症で何十年も苦しむことになった爆弾だ。

前の世界では、あまりの危険性に、国家間で交渉が持たれて簡単には使えなくなっていたけど、もしどこかの国が使い出したら核爆弾の報復合戦になって世界中が焦土と化すと言われていた」

「……それを、エドは作れるというのかい?」

「いや、なんとなくどういうものかは知ってるけど、作り方は軍事機密だからわからないよ。

でも、悪神側の転生者は俺よりずっと頭がいい。

医者だったから、工学系の専門知識はないはずだけど、銃や自動車や飛行機について、簡単な仕組みや作動原理くらいはわかるだろう」

悪魔研究と快楽殺人が趣味のエリート外科医が、せっせと戦車や飛行機を作ってるのも想像しにくい光景だが……そんなのは俺の勝手なイメージだからな。

単純に知恵比べでは負ける公算が高い以上、俺と一緒に動いてくれる仲間を少しずつでも増やしていきたいと思っている。

「前も言っていたけど、銃というのはそんなにすごい武器なのかい?」

「じゃあ、ちょっと見てもらおうかな。

メルヴィ、悪いけど」

「はいはい。これね」

メルヴィがそう言って次元収納から銃――ワルサーP38を取り出して渡してくれる。

俺は思い切って銃把を握ってみる。

……うん、大丈夫だ。

そう思いかけて、ふと思い出す。

今さらだけど、俺って前世では警官に射殺されて死んだんだよな。

その時の衝撃を思い出してしまい、俺の顔から血の気が引いた。

「ちょっと、エド、大丈夫?

顔色が悪いわよ?」

「あ、うん……なんでもない。

危ないから中庭で見せるよ」