軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

123 女神様タイムwith家族

――少しだけ時間を遡る。

デヴィッド兄さんが 切り裂き魔(リッパー) 模倣犯の正体を暴く前、杵崎との戦いが終わり、ミリア先輩から話を聞き終えた後のことだ。

俺は睡魔に襲われた。

これが成長眠だということはわかっていたので、ミリア先輩の話を聞き終えるまで我慢してからひさしぶりに眠りについた。

もしかして、と思っていたが、案の定、俺は気づくといつもの宇宙空間にいた。

「はぁい、生で会うのはひさしぶりね」

薄絹をまとった絶世の美女が言った。

「ああ、そういえばそうだな。【祈祷】ではけっこう話してるけど」

俺がさらに話を続けようとすると、

「な、なんだこれは……!」

「そ、空の上ぇ?」

「ここは……それにこの神々しい気配はいったい……!?」

「エ、エエエ、エドガー君! 落ちるよ、落ちちゃうよぉ!」

「はわわ……何ですか、これぇ!?」

「……あら、また呼ばれたのね」

俺の背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

振り返ってみると、予想通りそこにはアルフレッド父さん、ジュリア母さん、チェスター兄さん、エレミア、ステフ、メルヴィがいた。みんな見慣れない場所(惑星マルクェクト衛星軌道上の女神様スペースだ、もちろん)に驚いている。いや、一度経験のあるメルヴィだけは落ち着いているが。

要するに、キュレベル一家が揃ってるってことだ。

デヴィッド兄さんやベルハルト兄さんはいないけどな。

「今回は、家族ごと呼ばせてもらったわ。ちょうどみんなレベルが上がっていたし」

なるほど、成長眠に割り込んだ形だから、杵崎との戦闘に参加していない者はここにいないわけか。

「……待てよ、ミリア先輩は?」

ミリア先輩は杵崎に止めを刺していたから、レベルが大きく上がっているはずだ。

「あなたとの絆の深い人物しか一緒には呼べないのよ。ミリアさんとの関係は、まだここに連れてこられるほど強固にはなっていないってことね」

そう言われるとミリア先輩と仲が良くないみたいで不服だが、先輩には俺が転生者だってことも話してないしな。絆っていうのが心が通じ合っているという意味なら、隠し事が多い時点でダメだろう。

女神様と会話を続けようとした俺に、アルフレッド父さんが言ってくる。

「ち、ちょっと待ってくれ、エドガー。そちらの人は……いや、そちらの方は、まさか……」

「ああ、紹介するよ。この人が……いや、人じゃないけど、まぁこの人が、何度も話してた女神様――魂と輪廻を司る神アトラゼネクだよ」

「はぁい、キュレベル家の皆さん。わたしが女神様です」

えへんと、女神様が胸を張る。

薄絹に覆われただけの大きな胸が強調されて、目が釘付けになりそうだ。

「ははぁ~!」

父さんが片膝をついて、見たこともないほど平伏する。

ジュリア母さんとチェスター兄さんもそれに習って片膝をつく。メイドとして礼法を仕込まれているステフもそれに続き、エレミアも戸惑いながらしゃがみ込む。メルヴィは前にも会っているので普通だ。

みんなの様子に、女神様がふふんと笑った。

あ、調子に乗ってるな、と思った。

「―― 面(おもて) を上げなさい、キュレベルの一族よ」

女神様が聞いたことのない厳かな口調で言った。

さすがに本物の神様だけあって堂に入っている。

「アルフレッド・キュレベル、ジュリア・キュレベル、チェスター・キュレベル、エレミア・ロッテルート・キュレベル、ステファニー・ポポルス、テテルティアのメルヴィ、それからもちろん――エドガー・キュレベル。

あなたたちの働きによって、悪神側の転生者である杵崎亨を無事に討ち取ることができました。世界の平穏を願うすべての善神を代表して、魂と輪廻を司る神アトラゼネクから、最大限の感謝と賞賛を送ります。本当に、ありがとう」

女神様はそう言って微笑んだ。

「はっ。もったいなきお言葉でございます」

父さんがみんなを代表して答える。

女神様は父さんの言葉に頷くと、

「ま、堅苦しいのはここまででいいわね。普通にしていいわよ」

がらりと口調を変えてそう言った。

俺とメルヴィ以外のみんなは突然の変化に戸惑って顔を見合わせている。

「さて、まずは恒例のご褒美タイムね。……と言いたいところだったのだけれど。これを見て?」

女神様がそう言って手のひらを上に向ける。

女神様の綺麗な手の上に前衛的なオブジェのようなものが現れた。

しいていえば、それは銀のリングを重ねたモビールのように見える。が、よく見るとリングのひとつひとつがメビウスの輪のようにねじれている。

環のひとつを目で追うと、ねじれながら他の環へと繋がっていた。しかしそのねじれを逆に辿ってみると、元の環に戻るのではなくなぜかひとつ上の別の環へと行き着いてしまう。

……いや、言っていてわけがわからないと思う。

要するに、騙し絵を立体にしたような複雑怪奇なシロモノだった。

「……これは?」

「【自己定義】よ。回収して、浄化しようとしてみたのだけれど、あなたの使える形にはできなかったわ」

そう言って女神様がオブジェ――【自己定義】の一部を指さした。

そこには、赤紫の虫食いのようなものがあった。他のリングがゆっくりと旋回している中、虫食いのあるリングだけが動いていない。注意して見ると、他にも同じような虫食いのあるリングがいくつか見つかった。

「……というわけで、残念ながら今回はあなたにスキルをあげられないわ。ごめんなさい」

女神様が小さく頭を下げる。

「いや、いいよ」

俺は強く首を振った。

「でも、ほしかったでしょう? これほどのスキルだもの。使いようによっては敵なんていなくなるわ」

「それはそうかもしれないが、もし女神様がこのスキルを復元できていたとしても、断ってたと思う」

「あら、どうして?」

「あんな 反則(チート) そのもののスキルなんていらないよ。俺は女神様からもらった力で十分に満足してる。新しいスキルを一から習得するのは、いつも驚きがあって飽きないんだ。【自己定義】で好きなスキルを一発習得できるようになったら、そういう楽しみが台無しだ」

女神様が、ぽかんとした顔をする。

そんな間の抜けた顔すら綺麗で、ため息が漏れそうだ。

たっぷり数秒は経っただろうか。

「……ふっ、ふふっ……そうね。あなたはそういう人だったわ。

それに、それでこそわたしの使徒。こんなチートスキルを浄化しようとしたわたしが馬鹿だったわ」

女神様が手にした【自己定義】をポイと投げ捨てる。

【自己定義】は空中に溶けこむように見えなくなった。

パンパンと手をはたきながら、女神様が言う。

「それにしても、あなたは本当に見ていて飽きないわね。

ふふっ……なんだか、好きになってしまいそう」

うっすら頬を染めて、女神様がとんでもないことを言った。

「なっ……す、好きって……!」

エレミアがバッと前に出て、女神様と俺の顔を見比べる。

女神様がそんなことを言ってくるとは思ってなかったから、ポーカーフェイスを保てた自信がない。俺も女神様のことは好きだしな。恋愛感情とは違うけど。

「む~……」

俺の表情に何を見たのか、エレミアが唸る。

「ふふっ。大丈夫よ。あなたの彼氏を取ったりはしないわ。神と人が恋愛してもあまりいいことはないしね」

「なっ、か、彼氏だなんて……!」

エレミアが顔を赤くしてうつむく。

「と、ところで、女神様」

「なぁに?」

女神様が小首をかしげてかわいらしく聞いてくる。

……さっきの発言の後だからか、それだけで頬が熱くなるな。

「杵崎は本当に死んだのか?」

「まちがいないわ」

「本当の本当に? あとでやっぱり生きてましたとかないよな?」

「あなたの前に現れた杵崎亨が死んだことは確実よ。カースも回収できているのだから」

「〈バロン〉や〈クイーン〉みたいに死霊化するおそれは?」

「その場合カースは回収できないことになるから、ないと言っていいわね」

「【自己定義】で何か想像を絶する小細工をしている可能性は?」

「大元の【自己定義】を回収している以上、それ以前の定義が有効かは怪しいわね。わたしのシステムを逸脱したスキルだから絶対とは言えないけれど」

「まず大丈夫ってことか」

「そういうことよ」

これで、ようやく安心できるな。

スキルがスキルだけに、何か逃げ道があるのではないかと不安だったのだ。

「さて、今回は質問はあるかしら?」

「質問というか、相談ならある」

俺は自分の身体をちらりと見下ろす。

「杵崎との戦いで痛感した。今のこの身体じゃ、いくらスキルを覚えても限界がある」

「身体を大きくしてほしい、ということ?」

俺は頷く。

「杵崎はもういないけど、この先何かあってからじゃ遅いからな。頼めるか?」

「杵崎から膨大なカースを回収できたから、意図的に大きくしてあげることは可能だけど……」

女神様はそう言って、ジュリア母さんへと視線を向ける。

「アトラゼネク様。発言をお許しいただけますか?」

ジュリア母さんが言う。

「もちろん。それに、そんなに畏まらなくていいのよ? わたしのことはアトラちゃんでいいわ」

いいのか。

「じゃあ、アトラちゃん」

あんたも採用するのかよ!

俺が内心でつっこんでいる間に、ジュリア母さんは真剣な顔をして言った。

「――わたしは、エドガーくんを一気に大人にするのには反対です」

女神様が頷いた。

「そう言うと思ったわ。彼はピンと来てないみたいだけど、理由は?」

「理由は……寂しいから。ただでさえ、いちばん手のかかる乳児期を飛ばしてしまったのに、子ども時代まで飛ばしてしまうのは、母親として寂しいです。危険があるならわたしやアルくんが力になります。だから、エドガーくんにはもうしばらく子どものままでいてほしい」

言われてみればその通りだ。

俺は戦いのことばかり考えてしまっていたが、それ以前に俺はジュリア母さんの息子なのだ。たとえ転生者で中身が大人だとしても、成長の過程をすっ飛ばされるのは母さんにとっては寂しいだろう。

「それに、エドガーくんが急に大きくなったら、アスラちゃんやエレミアちゃんが混乱します」

これまた、言われるまで気がつかなかった。

エレミアはしっかりしているようでもまだ12歳だ。精神的に依存している俺が年上になったり年下になったりしたら混乱するかもしれない。

アスラについてはなおさらだ。杵崎によってキメラとして造られたアスラは、ただでさえ情緒が未発達なように思える。アスラにはなるべく安定した家庭環境を与えてやりたい。

「他の家族の人はどう?」

女神様が聞く。

「僕は、エドの言い分にも一理はあると思う。キザキトオルを倒したとはいえ、エドは今後も悪神の使徒と戦っていくつもりなんだろう? それなら、魔法だけじゃなく武技についても磨いていかなくちゃならない。それには身体が大きい方がいい。それに、身体ができていないうちに訓練しすぎるのは、発育にも良くないよ」

とアルフレッド父さん。

「僕も、父さんに賛成かな。弓を引くのは精妙な作業だから、今技術を高めても身体が大きくなると感覚が変わってしまうよ。弓以外でも、戦いのレベルが高度になればなるほど、自分の身体の大きさを正確に把握しておく必要が出てくる。

それに、今のままの姿で戦っていれば嫌でも目立つ。キュレベル家としても外聞が悪いんじゃないかな。……この家はそういうのに無頓着で誰も言いそうにないから僕が言うけど」

チェスター兄さんがそう続ける。

エレミアは、

「エドガー君がボクより大きくなるの? ボクがお姉ちゃんなのに? でも、エドガー君が年上の方がボクには都合が……ううん、ダメダメ。お姉ちゃんなんだからそんな身勝手なこと。でも、ボクより大きくなったらエドガー君がお兄ちゃんに?」

ブツブツ言ってるけど、全部聞こえてるからな?

〈 八咫烏(ヤタガラス) 〉では驚くほどしっかりした子どもだと思ったものだが、最近のエレミアは歳相応の部分も出すようになってきた。

いいことだ。あまり小さい頃から聞き分けがいいと大人になった時に辛いからな。子どもの時に大人にたっぷり甘えておくことが、その後の自尊感情を育む上では大切なのだと聞いたことがある。エレミアはこれまでにそういう機会がほとんどなかった。だからこそ、混乱させるような真似は避けたいな。

俺と女神様は、今度はステフに目を向けた。

ステフは俺たちの視線をしっかり受け止めてから言う。

「わたしは坊ちゃま付きのメイドですから、坊ちゃまのお好きなようになさってください。急に大きくなられると、すこし寂しいかもしれませんけど」

ステフは昔に比べてずいぶん落ち着いたよな。

かつてのドジっ娘メイドが、父さんと肩を並べて杵崎と戦っていたんだから感無量だ。

だけど同時に、俺にどこまでもついていくという覚悟を決めつつあるようで、最近はちょっと重たく感じないこともない。主人と従者というのは、現代日本ではありえない関係だからな。

俺は最後に、小さな相棒を見る。

「ま、いいんじゃない?」

メルヴィは小さな肩をすくめながらそう言った。

「軽いな」

「軽くはないわよ。妖精として、身体が大きいとか小さいとかは大した問題じゃないってだけ。大事なのは魂の綺麗さよ。見かけがどんなだろうと、わたしにとってエドガーはエドガーよ」

頬を少し紅くして、メルヴィがぷいと顔をそらす。

要するに、アルフレッド父さんとチェスター兄さんが賛成、ジュリア母さんが反対、エレミア、ステフ、メルヴィは保留ってことか。

数の上では賛成派が勝っているが、母さんの反対を押し切って成長するようなことは避けたいな。初めての子どもの成長過程を見られないってのは可哀想だ。いや、今さらといえば今さらなんだけど。

それに、杵崎が死んで、さしあたって大きな脅威はなくなっている。ひとりでも反対するなら見送った方が無難だろう。

俺が考えをまとめて口を開きかけたところで、

「うーん……大きくなったり小さくなったりできればいいんですけどねぇ……」

ステフがそんなことを言った。

「いや、さすがにそれは無理だろ」

俺はステフにジト目を向けてつっこんだ。

が、

「それ、いいアイデアかもしれないわ」

女神様がポンと手を打って言う。

「さっき見せた杵崎の【自己定義】――あれを改造して、大人の姿と子どもの姿を切り替えられるようなスキルを作ればいいのよ!」

「そ、そんなことができるのか?」

「ふつうならここまではしないのだけど、杵崎を倒してもらったお礼もできていないし、特例ということで用意してあげるわ。ちょっと待ってて」

女神様が何やらごそごそと何もない空間をまさぐる。

左手で取り出したのは、さっきポイ捨てした【自己定義】だ。右手には電動ドリルのようなもの。って、まさか……。

「えいっ」

ギュルルルル!と凄まじい音を立てて、ドリルが【自己定義】を削っていく。

オーロラ色の火花が飛び散る。

最後に女神様は、大黒様みたいな大きな木槌であっちこっちをガンガン叩く。

「ふぅ。できたわ。こっちにきて、エドガー」

俺が女神様の前に進み出ると、女神様は改造した【自己定義】を手にしたまま、俺の頬にキスをした。

「ええっ!?」

「ふわぁっ!」

エレミアとステフが声を上げる。

その間に改造された【自己定義】は銀色の糸を 解(ほど) くように宙に消えていく。代わりに俺の中に何かが入ってきた感覚があった。

「ここには魂しか呼んでないから使えないけど。元に戻ったら試してみてちょうだい。服も同時にアジャストするようになってるから、いちいち着替える必要もないわ」

「至れり尽くせりだな。助かる。ありがとう、女神様」

俺はぺたぺたと自分の身体を触りながら礼を言う。

「ますます人間離れしていくわね」

とメルヴィが呆れたように言った。

「杵崎を倒したってことは、さしあたって脅威となるものはないってことでいいんだよな?」

「そうね……ただ」

「ただ?」

女神様は首を傾げ、うーんと唸ってから言う。

「モノカンヌス周辺のステータスの動きに、少し違和感があるのよね。何がどうおかしいとも言えないのだけれど、たまにエラーが出ているの」

「ひょっとして……杵崎の【自己定義】の影響か?」

杵崎のやっていたのはステータスシステムへのハッキングみたいなものだからな。

どこかに問題が出てもおかしくはない。

「かもしれないわね。あの時は、アルフェシアさんが無理をした影響もあって、次元が相当不安定になっていたから。シエルさんの〈 空間羽握(スペースルーラー) 〉も空間にかなり負荷をかける聖剣だし。そういえば地下には死霊までいたわね。ステータスシステムは余剰次元を利用して張り巡らせているから、これだけの負荷がかかればひずみが生じてもおかしくないわ」

なるほど、王都で起きていた事件のほとんどすべてがステータスシステムに負荷をかける結果になっていたのか。

「あなたやメルヴィさんはステータスが見えるから、何か変なことがあったら【祈祷】で教えてちょうだい」

「わかった」

「わかりました」

俺とメルヴィが返事をする。

そこで、俺は思い出す。

「そういえば、北の事情はよかったのか?」

女神様は今回の一件の前に、大陸の北が騒がしいからしばらくはそちらに専念すると言っていた。

「そうそう。北も大変よ。なにせ、フロストバイトに隣接する北限帝国が4つに分裂してしまったから。今、それぞれが『北限帝国』を名乗って正統性を主張しているわ。だから現在、 竜蛇舌大陸(ミドガルズタン) の北には4つの同名の『北限帝国』が存在していることになるわね」

「大変じゃないか!」

女神様の言葉に、アルフレッド父さんが反応した。

「北限帝国は建国以来フロストバイトに住む魔族の侵攻を食い止め続けてきた人間の国家だ。それが分裂したとなると――」

「魔族がこの隙に南下しかねないってことか」

父さんの言葉に相槌を打って、俺は女神様を見る。

が、女神様は小さく首を振った。

「わたしもそう思ったのだけれど、今のところ魔族側に大きな動きはないわ。むしろ、こうしてサンタマナに杵崎が現れたことを考えると、北の動きは陽動だったのかしら?」

「でも、今回杵崎はアスラを回収しに来ただけだったよな。陽動が必要とも思えないけど」

「そうなのよねぇ……まぁ、杵崎が予期せずしてあなたに倒されたことで、策が不発に終わったのかもしれないわ」

そういう考え方もあるか。

さて、女神様と話していると、俺の身体透け始めたのがわかった。

ついで、身体に重力がかかるような感覚。

さすがに三度目なので驚きはないが、メルヴィ以外のみんなは、あわてて 空(くう) を掴むような動きをしている。

「時間か」

「ええ。名残惜しいけれど。

そうそう、みんなにプレゼントをしておくから、戻ったらステータスを確認してみて」

女神様の言葉を最後に、俺の意識が遠くなった。

俺は、自分の部屋で目覚めた。

外はまだ暗い。

【不易不労】のおかげで成長眠は俺だけ短いから、他のみんなはまだ起き出していないだろう。

「すーすー」

ベッドサイドのテーブルに置かれた専用のカゴ(前世の猫用のベッドみたいなもの)の中でメルヴィが眠っている。

そういえば、女神様は最後にプレゼントがあると言ってたな。

俺は眠っているメルヴィに【真理の魔眼】を向ける。

メルヴィ(テテルティア妖精郷出身・妖精長・《苦労人》・《がんばり屋さん》・《みんなのお姉さん》・《チート妖精》))

妖精

レベル 51(↑3)

HP 55/55(45+10、↑15)

MP 3380/3380(3140+240、↑282)

状態 妖精の誓い

成長眠

クラス

〈ミスティックフェアリー〉E(NEW!)(メルヴィの専用クラス。クラス〈ハイフェアリー〉を核にこれまでに習得した多くのスキル・クラスを有機的に統合したもの。ランクごとにHPに+10、MPに+240のアッドがつく。なお、合成に用いられて消滅したクラスのアッドはHP、MPに吸収される。)

スキル

・伝説級

【鑑定】7

【次元魔道具作成】2

・達人級

【魔道具作成】9(MAX)

《始祖エルフの祝福》

《善神の祝福(アトラゼネク)》(死に至るダメージを受けた時に、一度だけHP1で生き延びることができる。ただし、発動後24時間は再発動ができない。)

ステータスがすっきりしていた。

メルヴィはもともと〈ハイフェアリー〉〈エレメンタルマスター〉〈錬金術師〉〈機工術師〉〈サイキック〉の5つのクラスを持っていた。大量のスキルを持っているより楽とはいえ、この5つを使い分けるのはメルヴィにしても大変なようだった。

それが、この5つに加えていくつかのスキルまでもがメルヴィ専用クラス〈ミスティックフェアリー〉に統合されている。「有機的に統合」ということなら、能力間の使い分けがよかったり、複数の能力を組み合わせてこれまでにはできなかったことができるってことだろう。これは強い。

それから、最後に《善神の祝福(アトラゼネク)》というものがある。

この効果はわかりやすいな。死にそうになった時に一度だけ死を免れるというものだ。連続での使用はできないようだが、それでも十分に有り難い。とくにメルヴィはHPが低いからな。これがあれば安心だ。

「ひょっとして俺も?」

俺はわくわくしながら自分自身に【真理の魔眼】を向けてみる。

エドガー・キュレベル(キュレベル侯爵家四男・サンタマナ王国貴族・《 赫ん坊(ベイビー・スカーレット) 》・《底無しのオロチ》・《 交渉者(ネゴシエーター) 》・《 竜を退けし者(ドラゴンバスター) 》・《妖精の友》・《精霊魔術師》・《阿弥陀様の遣い》・《 導師(グル) 》・《びっくり箱野郎》・《悲劇の英雄》・《〔キュレベル家の〕鬼子》)

6歳

人間/アトラゼネク神族

レベル 63(↑4)

HP 327/327(227+100、↑94)

MP 33301/33301(32901+400、↑602)

クラス

〈やりこみ戦士〉E(エドガー・キュレベルの専用クラス。これまでに習得した多くのスキル・クラスを複数のスキル・クラスの使い分けに重点を置いて並列的かつ有機的に統合したもの。今後習得するスキル・クラスも【スキル魔法】で追加統合できる。ランクごとにHPに+100、MPに+400のアッドがつく。なお、合成に用いられ消滅したクラスのアッドはHP、MPに吸収される。【スキル魔法】でリネーム可。)

スキル

・神話級

【不易不労】-

【スキル魔法】-

【真理の魔眼】3(↑2)

【フォームシフト】-(NEW!)(現在の姿から16歳相当の姿へと変身することができる。変身する時には「変・身」と叫ぶ必要がある。変身可能時間は1日につき8時刻まで。16歳になるとこのスキルは消滅する。)

・伝説級

【魔槍術】4(↑2)

【闘槍術】3(↑1)

【死霊魔法】1(NEW!)

【データベース】-

・達人級

【治癒魔法】5(↑2)

【統率】1(NEW!)

・汎用

【指揮】9(↑2、MAX)

【祈祷】8(↑2)

《善神の加護+1(アトラゼネク)》

《善神の加護(カヌマーン)》

《善神の祝福(アトラゼネク)》

〈やりこみ戦士〉て。

……いや、そうだけど。そうだけど!

メルヴィのはちゃんとかっこいいのになんで俺のは投げやりなんだよ!

【フォームシフト】の「変・身」といい、なぜあの 神(ひと) はネタを仕込まずにはいられないのか。

リネーム可なのは温情だな。何か考えておこう……。

後で、起き出してきたみんなのステータスをチェックすると、俺やメルヴィと同様それぞれが専用クラスを授かっていた。《善神の祝福(アトラゼネク)》も全員が授かっている。

屋敷は狂喜の渦に包まれた。

【データベース】を使って各自が授かった専用クラスを一覧にしておこう。

〈魔氷槍師〉(アルフレッド・キュレベルの専用クラス。【魔槍術】を核にこれまでに習得した多くのスキル・クラスを有機的に統合したもの。ランクごとにHP、MPにそれぞれ+100のアッドがつく。なお、合成に用いられ消滅したクラスのアッドはHP、MPに吸収される。)

〈炎獄の魔女〉(ジュリア・キュレベルの専用クラス。火属性魔法と魔法技術を核にこれまでに習得した全てのスキル・クラスを有機的に統合したもの。ランクごとにHPに+40、MPに+200のアッドがつく。以下略。)

〈森羅の狙撃手〉(チェスター・キュレベルの専用クラス。【弓術】と【狙撃術】を核にこれまでに習得した全てのスキル・クラスを有機的に統合したもの。ランクごとにHPに+80、MPに+80のアッドがつく。以下略。)

〈破断の魔剣士〉(ステファニー・ポポルスの専用クラス。クラス〈魔法戦士〉を核にこれまでに習得した全てのスキル・クラスを有機的に統合したもの。ランクごとにHP、MPにそれぞれ+100のアッドがつく。以下略。)

〈闇隠れの巫女〉(エレミア・ロッテルート・キュレベルの専用クラス。クラス〈アサシン〉と〈黒魔術師〉を核にこれまでに習得した全てのスキル・クラスを有機的に統合したもの。ランクごとにHPに+80、MPに+120のアッドがつく。以下略。)

……もう絶対、他人にステータスを見せたりできないな。