軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

勧誘と薬酒

私はシスター・ティーダを2人に紹介し、彼女に帝都の現状とこの町に来た目的を簡単に説明した。

「た、大変じゃないッスか!」

「ええ、だから私達は明日、朝一でダンジョンに向かうわ」

「そうッスか……私にできることは無いッスけど、応援してるッス」

ありがとう、と伝えようとした私を遮ってユウが話に加わる。

「ティーダさんは歩き神官なんですよね?

では治癒系の魔法が使えるのですか?」

「え?ええ、光属性の治癒魔法なら使えるッスよ?」

治癒系と呼ばれる魔法は、各属性に存在しており、水属性なら解毒に優れ、土属性なら継続治癒、風属性なら広域治癒に優れるなど、それぞれの属性により特色がある。

その中でも光属性の治癒魔法は特に強力だ。

「それならティーダさん、私達と一緒にダンジョンに来てもらえませんか?」

「えぇ⁉︎」

「おい、ユウ」

ユウはエルザの言葉を手を上げて止める。

「見たところティーダさんはかなり強いですよね。ギルドで聞いた情報によると、最近ダンジョンにアンデッドが増えているらしいんですよ」

「そうね、アンデッドには光属性の魔法が有効よね」

私もユウの提案に賛成する。

ゾンビやスケルトンなど実体のあるアンデッドなら問題ないが、レイスやゴーストなど実体の無いアンデッドは厄介だ。

光属性魔法が使える者が居れば非常に助かる。

私も【 暴食の魔導書(グリモア・ベルゼブブ) 】を使えば光属性魔法も使えるが、【 強欲の魔導書(グリモア・マモン) 】を使ってエマヤ鉱石を運搬することを考えると、魔力を温存するに越したことはない。

なので私もティーダをダンジョン探索メンバーに勧誘する。

「えぇ⁉︎マジで言ってんッスか?

ダンジョンッスよ!そんな危な……皆さんの足手纏いになるッスよ」

本音を隠しそこねながら両手をブンブン振るティーダだが、彼女の実力を考えれば足手纏いなどと言うことはないだろう。

「謙遜することは無い。見たところかなり鍛えているだろ?」

エルザの追撃にティーダは視線を彷徨わせる。

ふむ、ティーダをこちらに引き入れるにはやはりアレか……。

チャリン。

私は懐から金貨が入った小袋を机の上に置き、口を緩めて中を覗かせる。

「当然、一緒に来てくれたら報酬を出すわ」

「うぅ……き、金貨……い、いや!命あっての金貨ッス!

あ、いや、私には女神様の威光を広めるという崇高な使命が……」

ティーダは金貨に伸び掛けた右手を左手で押さえつけ、決死の表情で視線を逸らす。

ダメか…….。

するとユウが先ほどからティーダが握りしめたままの酒瓶に視線をやる。

「ところでティーダさんはお酒、好きなんですか?」

「へ?ええ、まぁ……あぁ、いや、その……お酒は女神様が人々に与えられた物ッスからね。うん」

「なるほど」

何かに納得したユウは、肩から下げていた小さなバッグから1本の瓶を取り出した。

明らかに瓶の方がバッグより大きい。

「おお!『マジックバッグ』ッスか!初めて見たッス」

マジックバッグとは見た目以上の物を収納できるマジックアイテムだ。

非常に希少な物で、作成できる職人はほぼ国か、大貴族に召し抱えられている。

そんな職人が希少で高価な素材と長い年月を費やして作成する物なので、買おうとすると、とてつもない金額が必要となる。

馬車1台分程度の容量ですら、今の私でも躊躇するほどの金額だ。

「コレですか?前に遺跡で手に入れたんですよ。容量も大きめで重宝しています」

「凄いっスね、売ったら一生遊んで暮らせるッスよ」

「ふふ、こんな便利な物手放さないですよ」

そう笑いながらユウは宿の主人から小さなショットグラスを人数分貰う。

ユウが取り出した瓶は透明な液体で満たされており、中には幾つもの葉や木の根、木の実などが詰められている。

ユウが栓を抜くと、独特の薬臭さが漂ってきた。

「どうぞ」

ショットグラスに半分ほど。

少量だけ注ぎ込み、ティーダを含めた私達の前に差し出した。

「コレは?」

ティーダはユウから差し出されたグラスの匂いを嗅いで顔を顰める。

私も匂いを嗅いでみると、青臭い匂いと共に酒精の香りがした。

「お酒かしら?やけに薬臭いけど……」

「飲んで大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ。まぁ飲んでみてください」

ユウに促され、私達は恐る恐るグラスに口を付けた。

「「「⁉︎」」」

「こ、コレは……」

「凄いわね。複雑な苦味やコクが絡み合っていて、それでいて飲みやすい」

「そうだな。なんて言うか……そうだな、深いって感じだ」

私達の驚きの声を聞いてユウは満足そうに、そのささやかな胸を張る。

「わたしが作った薬酒です。なかなかの出来でしょう?」

「美味いッスね。とんでもなく。

ベースになっている透明なお酒も飲んだことの無い物ッス」

「わたしの故郷のお酒ですよ。米という穀物から作られる清酒です」

自慢げに説明するユウは更にもう1瓶同じ薬酒を取り出すと、栓を閉めた先程の瓶や私が出した金貨と一緒にティーダの方に押しやる。

「わたし達に協力してくれれば差し上げます」

「うぅ……」

ティーダの視線は薬酒と金貨の間をうろうろと彷徨う。

「………………も、もう1瓶……」

ユウは3本目の薬酒を取り出した。

「や、病で苦しむ無辜の人々を見捨てるわけにはいかないッスよね。

今日、此処で皆さんに出会ったのはきっと女神様のお導きッス。

ええ、間違いないッス!」

ティーダは嬉しそうに金貨の小袋を懐にしまい、薬酒の瓶を抱きしめた。

「…………私、貴女のそういう所、嫌いじゃないわ」

あと、帝都に帰ったら私もユウに薬酒を売ってもらおう。