軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

定番と鎮圧

エルザの取りなしにより、無事ダンジョンに1番近いドルドの町に入ることができた。

するとオリオンは何処かに飛び立ってしまった。

ユウに聞くと、大き過ぎて他の従魔のように牧場で預かってもらうなどはできないらしい。

「帝都なら特別に契約している牧場で預かってもらえるのですが、他所ではそうもいきませんからね。

森の奥でなるべく目立たないように隠れて、呼び出す時はこの笛を使って来てもらうようにしているんです」

そう言ってユウは手の平に収まるほどの小さな笛を見せてくれた。

どうやらマジックアイテムらしい。

「従魔の証を着けていますから大丈夫でしょうけど、一応、冒険者ギルドに話を通しておく必要がありますね」

「そうだな。こんな町の近くでサンダーバードが見つかったら騒ぎになるだろう。

それにダンジョンの情報も買わないと」

「ダンジョンの情報?」

私が疑問を口にすると、エルザが説明してくれる。

「私もあまりダンジョン探索の経験はないが、確かダンジョンの情報は冒険者ギルドで扱っているはずだ。

珍しい鉱石の鉱脈や希少な薬草の群生地などの情報は高く売れる。

まぁ、大抵は独占するために情報をギルドに売ったりはしないものだから主に売られているのは上層部の地図や出現する魔物、安全地帯などの情報だな」

「そうですね。でもエマヤ鉱石はあまり需要が無い鉱石ですから鉱脈の情報があるかも知れません」

「へぇ、そういうものなのね」

ここは本業である2人のプランに従うのが吉よね。

町の門から真っ直ぐ延びる大通りから見える冒険者ギルドの建物に入った。

木造2階建ての建物だ。

ギルドの中は入り口から見て正面に受付があり、右側の壁にはいくつもの依頼が書かれた紙が貼り付けられたクエストボード、左側は酒場になっており、依頼を終えた冒険者や依頼を受けずに休息日とした冒険者がガヤガヤと騒がしく酒を飲んでいる。

物珍しげにギルドの中を見ながら前を歩く2人について受付に行こうとすると、酒で顔を赤く染めた2人の男達が私達の前を塞いだ。

熊系の獣人の男と人族の男だ。

「ヒック、なんだぁ?此処は冒険者ギルドだぜ。お嬢ちゃん達が来るような場所じゃねぇよ」

「ヒヒヒ、なぁ俺たちの相手をしてくれよ。

楽しませてやるからよぉ」

「本当にこんな冒険者がいるのね」

私は感心していた。

前にルノアが読んでいた冒険小説でも似たようなシーンがあったのだ。

ルノアによると、絡んできた不良冒険者を主人公が叩きのめすのが定番らしい。

私達の先頭にいたユウが酔っ払いをあしらうように手を振りながら、ぞんざいに追い払おうとする。

「はいはい、わたし達は急いでいますから。

わたしが魅力的だとは言えナンパは……」

「あん?なんだチビ。ガキはさっさと帰って寝ろ」

「ほら退け。あと10年したら出直してこい」

酔っ払い2人はユウを無視して私とエルザの方に寄ってくる。

ユウはピシッと固まり動かなくなっている。

「ねぇ、エルザ。この場合、冒険者的にはどういう対応をするべきなの?」

ちなみに貴族の世界なら波風立てぬようにあしらい、後日それを弱味にひたすら突き、あらゆる意味で吸い上げる。

「冒険者的には叩き潰して構わないな。この状況で穏便に済ませようとすると舐められる」

「なるほど。小説と同じね」

なら冒険者流で対応してみようかしら?

「なぁ、姉ぇちゃんよぉ、依頼なら俺たちが受けてやるぜ?

俺たちの宿に来てくれるなら依頼料もサービスしてやるからよ」

「まともに依頼しようとすると高いぜ、俺達」

私は絡んできた酔っ払い冒険者が身に着けている防具や武器の品質、傷、手入れの具合などを軽く見て、蠅でも追い払うようにヒラヒラと手を振った。

「悪いけど貴方達では力不足よ。

雇ってほしいならもっと鍛えて出直しなさい」

「なっ!なんだと、このアマぁ!!」

熊獣人の男が赤い顔を更に赤くして拳を振り上げる。

様子を窺っていた冒険者や、騒動に気付いた受付嬢に呼び出され、仲裁しようと出てきた男性職員が慌てて駆け寄ろうとするが、それよりも早く私の拳が熊獣人の胸鎧に叩き込まれた。

身軽に動くため、そんなに厚みはない胸鎧だが、それでも鉄製だ。

それが私の拳で砕け、2メートルを超える巨漢が数メートル宙を飛び、いくつかのテーブルを薙ぎ倒して止まった。

勿論、地の腕力などではなく、瞬間的に魔法で身体強化を掛けた結果だが、無詠唱かつ、体の一部のみの瞬間的な身体強化は高等技術だ。

私が殴られると思っていた周囲の人々は皆、唖然と黙り込む。

なるほど、確かにルノアが言っていた通り、なかなか爽快な気分だ。

無事、解毒できたらルノアに教えてあげよう。

「て、てめぇ!!!」

仲間の人族の男が腰の剣を手にする。

だが、その剣は鞘に納められたままだ。

もし抜剣していれば、殺されても罪に問えない状況だが、流石に酔っ払っていてもギリギリのラインを越えることはなかったようだ。

男は剣を大きく後ろに構えるが、その剣がピタリと動かなくなる。

「あ?」

男が振り返ると満面の笑みを浮かべたユウが、鞘に納められた男の剣を掴んでいた。

バキッ!

丈夫な革で作られた鞘ごと、鋼のショートソードを小枝を折るように握り折ったユウは、男の胸ぐらを掴むと、力任せに床へと叩きつけた。

木製の床は砕け、男の上半身は床下へと消える。

「…………わたしの身長は故郷では平均値です!」

そう言ってプリプリ怒るユウだが、私が過去に会ったことがある東方の島国の出身者から察するに、彼女は故郷でもかなり小柄な方だろう。

勿論、そんなことを口に出すつもりは無い。