軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

経済界の怪物達②

「お初にお目に掛かります。

トレートル商会商会長エリー・レイスと申しますわ」

私が頭を下げると、円卓に座る1人から声を掛けられた。

「うむ、座りたまえ」

「失礼致します」

私は空いていた入り口から一番近い席に座り、その右隣にセドリックが座る。

円卓であるが故、上座は存在しない。

だけれど部屋の入り口から見て正面、一番奥に座るその男からは明らかに最上位者の風格を感じる。

縦に長い瞳と手甲のような鱗、折り畳まれた翼が見えることから種族はドラゴニュートね。

となるとあの壮年の男性が帝国商業ギルドのグランドマスター、《先見伯》アルバート・グイード伯爵か。

様々な種族が集まって建国されたユーティア帝国では貴族にも亜人が多く居る。

グイード伯爵領には大きな港があり、先物取引や他国との貿易で途轍もない利益を生み出している人物だ。

「さて、レイス商会長。

話は聞いていると思うが、帝国から特別認可商人への推薦があった。

今回の評議会でその可否を決定する」

「よろしくお願い致します」

「うむ、では先ずルーインス」

「はい、私はエリー会長の特別認可商人への認定を支持致します。

彼女の商会は帝国に多大な利益を齎すと考えます」

セドリックはいつもの笑みでそう答えた。

彼は帝国への利益と言っているが、まぁ建前でしょうね。

その実は、自らの利益か。

「では、カラード」

アルバートはセドリックの意見に頷くと、次に私の左隣に座る女性に視線を向ける。

薄いナイトドレスを着た妖艶な魔族だ。

側頭部から生えた角がティアラのように伸びている。

娼婦から歓楽街の支配者にまで上り詰めた女傑、《銀蝶》ヒルデ・カラードね。

「わたくしも彼女を推しますわ。

トレートル商会の化粧品の質は従来の物を遥かに上回る物です。

このまま規模を拡大してもらうのが良いですわ」

ヒルデもセドリック同様に私を特別認可商人へ推してくれる。

「待っていただきたい」

そこに不機嫌そうな声が上がった。

視線を向けると、腕を組んだ人族の男が私を睨んでいた。

《頭目》ダルク・ノーチェス。

表向きは貴族や大商会を相手にする金融屋だが、裏では賭博場の経営や、盗品、規制品などのグレーな品物を扱うブラックマーケットなどを支配する裏社会の大物だという話だ。

社会的には悪人だが、彼が睨みを利かせているため、他国に比べて帝都では麻薬や人身売買などが遥かに少ない。

その辺りのバランス感覚が優れている故、彼の存在は必要悪として黙認されている。

「俺は反対だ。

その女は王国貴族の出だろ。信用できないな」

その言葉に誰も驚きはしない。

やはり私の出自は筒ぬけか。

「僕も反対します」

ダルクに追従したのはエルフの男《千里眼》ロットン・フライウォーク。

帝国だけでなく他国にも系列の宿屋を持ち、傘下の店を含めれば千を超える、宿屋の頂点に立つ男だ。

その情報網は広く、役人の不正から隣国の王の朝食のメニューまであらゆる情報が彼の下に集まってくるらしい。

「現在のハルドリア王国の状況から、彼女がスパイの類いではないとは思いますが、懐に入れるのは時期尚早だと感じますね」

「ふむ、ノーチェスとフライウォークの意見も尤もだ。

クスノキはどうだ?」

アルバートが話を振ったのは暇そうにしている黒髪の少女だ。

彼女が《漆黒》ユウカ・クスノキね。

帝国最高の薬師。

小柄で小人族のようにも見えるけど、人族だ。

彼女は東にある島国の出身である。

かの島国の人々は皆小柄で南大陸の人々と同様に黒い髪と黒い瞳を持つ者が多い。

また、ユウカは冒険者としても有名な人物であり、普段は店を弟子に任せて冒険に出ていることも多いと聞く。

「わたしはパスです。

この手の決め事には関わらないって約束で評議員になりましたからね」

ユウカが言うと、彼女の隣に座るドワーフの男も頷く。

「ワシも降りるぞ。理由は黒の嬢ちゃんと同じじゃ。面倒事はお主らでさっさと決めろ」

彼は《神工》ガイエン・ドラファンか。

帝国一の鍛冶職人であり、彼の打った剣は一本で屋敷が建つほどの値段が付く。

性格は見た目通りの職人肌で、細かいことを嫌うようだ。

「レイス商会長は今回の件をどう考えている?」

アルバートは私にも話を振ってきた。

「私は皆様から見ればまだまだ若輩者ではあるかと思いますわ。

ですが、私の商会は多くの方々に幸福をお届けできると確信しております。

また、私の出自をご心配されるのは当然のことかと思いますが、それは無用な心配というものですわ。

私は最早、あの国に見切りをつけましたの。

これからは未来ある帝国で商人として生きていくつもりですわ」

「………………なるほど」

アルバートは私の言葉の真偽を確かめるように目を細めた。