軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

辺境の惨劇

謎の爆発騒ぎがあった日から半月、私達はサージャス王国の王都を占領していた。

調査の結果、あの爆発は何者かによる破壊工作であったと分かり、更に例の傭兵団が1人残らず姿を消したことから、彼らが事件に関わっているというのが私達の見解だ。

一般にはハルドリア王国が国際法違反の証拠を処分するために行なった可能性が高いと発表した。

真実は定かではないが、グリント陛下が保管していたフリードからの書状がピンポイントで燃やされていて、燃え残った物では少々証拠としては弱いので、せめてもの嫌がらせだ。

あの傭兵達が何者なのかはわからないが、ハルドリア王国に利するように動いていたと考えられる。

しかし、ハルドリア王国にはあのような部隊は無かったはずだ。

私が王国を去ってから設立したにしては練度が高い。

故にサージャス王国、ハルドリア王国とは違う第3の勢力の工作員ではないかと予想している。

現在の執政はグリント陛下とルーカス様が行なっており、私は一切手を出していない。

そして先日、帝国政府から執政官などの役人が到着したので政務の引き継ぎをした後、グリント陛下はルーカス様と帝都へ向かうことになるそうだ。

そして帝国の人員が到着したため、私達義勇軍はもう必要ない。

なので私達は一足早く帝都へと帰還することになった。

サージャス王国の王都の外に集まった義勇軍とロベルト達ハルドリア王国離反軍を前に私は主要メンバーを集めていた。

「集まったわね。

では此処からは義勇軍とロベルト様達とで別ルートで帝都へ向かうわ」

「え?」

ロベルトが不思議そうに声を上げる。

「エリー嬢、何故別行動を?」

「ロベルト様……此処からは帝都に戻る通常ルートは今回の紛争で被害を受けた村々を通りますわ。

離反したとは言え、ハルドリア王国軍であるロベルト様達が無事に滞在できるとお思いですか?」

「そ、それは…………」

「ですから、ロベルト様達にそれらの村々を避け、帝都に向かってもらいます。

多少、険しい道乗りになりますが皆さん正規の兵士ですし問題無いでしょう。

私も同行致しますのでご安心ください」

「…………わかった。世話をおかけする」

「そういうことでミレイ、義勇軍の方は頼んだわよ」

「はい、お任せください。エリー様もお気を付けて」

こうして義勇軍と分かれて帝国を目指して進む私達は、渓谷のような場所を通っていた。

既に数日、道なき道を進んでいて兵の消耗はかなりのものになってきている。

「エリー嬢。

済まないが少々休息を取らせてもらえないだろうか?

兵が限界に近い」

「そうですわね。

この渓谷を越えれば帝都はすぐそこですから、此処で大休止を致しましょうか」

私達は近くにあった広めな空間に移動して、兵達に休息を言い渡した。

この場所なら周囲を高い崖に囲まれているため、私達が入ってきた方だけを警戒すれば負担も少ないと提案した。

「ふぅ、帝都まではもう一息ってところですか?」

「そうですわね。

此処からなら明日にでも到着致しますわ」

「そうですか………………エリー嬢。

改めて謝罪と感謝を。

貴女にあのような仕打ちをした自分を許し、受け入れていただいたこの御恩は必ずお返しする。

騎士としての誇りに懸けてお約束する」

私は、騎士としての礼を取りながら、何処か清々しい表情で言うロベルトに不思議そうな表情で小首を傾げてみせる。

「あら?何を言っているのかしら?

私は貴方を『許す』なんて一言も言っていないはずですわよ」

「え?」

「何を勘違いされているのか分かりませんが、私は貴方を殺したいほど憎んでいますわ」

「で、ですが……もう……済んだことだと……」

「ええ、もう済んだことですわ。ですから今更どうしたって私が貴方を許すことはありませんわ」

「エ、エリー嬢……」

「ふむ、丁度良い地形ですし、此処で始めましょうか」

「……始める……とは?」

「…………ロベルト様は私の神器についてご存知ですか?」

「…………【 叡智の魔導書(グリモア・ウィズドム) 】……ですか」

「いいえ、それは嘘です。

私の本当の神器は【 七つの魔導書(グリモア・セブンス) 】。

七種類の魔導書を作り出す能力ですわ。

これがその一つ、神器【 暴食の魔導書(グリモア・ベルゼブブ) 】」

私は【暴食の魔導書】を使い、渓谷の入り口を石壁で塞いで離反軍を閉じ込めてみせた。

「な、何を⁉︎」

「神器【 怠惰の(グリモア・) 魔導書(ベルフェゴール) 】」

更に別の魔導書を手にしながらロベルトの鳩尾に拳を叩き込み、ヨロめいたロベルトの襟首を掴むと魔力で強化した身体能力で崖を駆け上がる。

「ごはっ!」

苦しげなロベルトを無造作に投げ捨てながら、突然現れた壁に戸惑う離反軍を見下ろす。

「ごほ、げほ、な、何をするつもりだ⁉︎」

私はロベルトを無視して懐から取り出した大きな魔石を離反軍の上へと投げた。

魔石とは魔物の体内で生成される、魔力が結晶化した物で、マジックアイテムの動力源や魔法の触媒などに使われる消耗品だ。

「冥府を彷徨う闇の眷属よ 姿を持たぬ無眸の悪鬼 地に満ちし魔粘の祖よ

我、契約に従い魔石を贄として捧げる

【召喚:ウーズ・オリジン】」

私が投げた魔石が砕け散り、中空に黒い光が走り魔法陣を作り出す。

その魔法陣から現れた粘液が、驚き魔法陣を見上げていた兵士達の頭上へと降り注いだ。

「ぎぁああ!!!」

「うぁあ!!」

「痛い!ぃだあ!!!」

「溶ける!どげぇぶぅ」

兵士達の上に落ちたその粘液は、意思を持つように蠢き、近くにいる兵士へ粘液を触手のように伸ばして捕まえると、ゆっくりと溶かしながら捕食し始める。

「な、なんだ……アレは……」

次々に兵士が悲鳴を上げながら溶かされていく光景を唖然としながら見つめてロベルトが呟く。

「あれはウーズ・オリジン。

冥界に生息するスライムの原種ですわ」

「……………エリー嬢……な、何故こんなことを……」

「決まっていますわ。これは報復です」

「なら!それなら自分だけを殺せば良いだろう!!何故、罪の無い兵士達まで!」

「理由なんてありませんわ」

「な⁉︎」

「単に貴方と共に居たから殺しました。

彼らは貴方と共に居たから死ぬのです。

貴方さえ居なければ彼らは苦しみながら溶かされることなく、愛する家族の許に戻ることができた。

でも、貴方が居たから今日此処で死ぬのです」

「…………自分が……僕が……」

「そうですわ。これが貴方の罪。

身勝手で自己満足な貴方の騎士ごっこに巻き込まれた哀れな犠牲者ですわ」

「………………騎士……ごっこ?」

ロベルトは膝から崩れ落ちながら眼下の光景を見つめている。

「ええ、貴方のやっていることはただの騎士ごっこ。誇りなんてカケラも無い。

主の暴走も止められず、挙げ句の果てに裏切りまでした自分が、本当に騎士を名乗れる人間だと思っていたのですか?

随分と都合の良い騎士道ですわね」

「ち、ちが……」

「違いません。

貴方は裏切った。貴方は仲間を守れない。貴方は誇りが無い。

貴方は…………ただのグズですわ」

「あ、あぁ……」

剣を抜くことすらせずに、ただ地獄のような光景を見ながら涙を流すロベルトを前に私は新たな魔導書を手にする。

「さて、仕上げですわ。神器【 色欲の(グリモア・) 魔導書(アスモデウス) 】」