軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

辺境での軍議

イグルと別れた後、私達は東に向かって進軍を始めた。

途中にはいくつかの村があり、サージャス王国軍やハルドリア王国軍に占領されていた村は兵士を殲滅し解放する。

初めの村のように、村人が惨殺されていたりする村は少なかったが、それでも多少の被害は出ている。

だがアフターケアまでは手が回らないので、そこはルーカス様が送ってくれる兵士達に任せることにした。

森に沿って走っている街道を東に向かって進んでいる道中、太陽が中天を過ぎた頃に一旦休息を取っていると、ミレイが報告を持ってきた。

「エリー様、進行方向に向かった斥候からの報告です。

“草原に武装集団を発見、紋章からレブリック子爵領軍だと思われる”とのことです」

「そう、では合流しましょう。

走竜傭兵団から使者を出してもらって頂戴」

「畏まりました」

そのまま無造作に近づいてはレブリック子爵領軍に警戒されかねない。

そのため、向こうと面識のある走竜傭兵団の斥候2人に白旗とトレートル商会の商会旗を掲げてアポイントを取りに行ってもらうのだ。

数時間後、私はレブリック子爵領軍の簡易拠点の中央にある本部として使われている大きな天幕でルーカス様と面会していた。

「お久しぶりですわ、ルーカス様」

「ああ、この度はエリー会長が引き連れてきてくれた義勇軍のお陰でかなり助かっている」

「お役に立てたようで幸いですわ」

「エリー会長が投資していた村はどうだ?

被害は受けていたのか?」

私がトレートル商会の生産拠点としてお金を掛けて開発していた村もこの近くだ。

つい先日、サージャス王国軍を排除して取り返している。

「人的な被害は抵抗した村人が負傷した程度ですわ。しかし、運び込んでいた物資の多くが徴発されてしまったようです」

「そうか。死者が出なかったことを喜ぶべきか」

「そうですわね。

盗られた物資は代価を支払っていただきますわ」

私が怒りを滲ませながら微笑むとルーカス様は苦笑いで応えた。

それから私達はお互いの今後の行動をすり合わせ、その結果ブロッケン砦を取り戻すまでは共に行動することになった。

義勇軍の指揮権は引き続き私、その私の上にルーカス様が付くことになったが、私にはある程度の自由裁量を保証してもらった。

そしてレブリック子爵領軍と共に東へ向かって軍を進めること2日。

斥候が前方にブロッケン砦を視認し、私達は再び簡易拠点を設営し、主要メンバーで作戦会議を行う。

レブリック子爵領軍からはルーカス様とイグル、レブリック子爵軍の団長と指揮官が数名、義勇軍からは私とミレイ、そしてエルザと走竜傭兵団の団長であるユリウスが参加していた。

「では夕刻、少数精鋭で一気に制圧するということでよろしいですか?」

「ああ、それしか無いだろうな」

「裏側からとは言え、砦攻めですからね。

大軍で囲めば勝てるでしょうが時間がかかる上、それなりの被害が出るでしょう」

ブロッケン砦は堅城。

正面からではなく、背面からの攻め込みだが、城壁と据え置きのバリスタや投石器などがある防衛側が圧倒的に有利である。

その上、向こうにはブロッケン砦を1日で落としたほどの傭兵団と思われる戦力まである。

正面から普通の兵士をぶつけても無駄に死者を増やすだけの結果になるだろう。

なので此方は神器を使える強者のみ、少数でブロッケン砦の敵戦力を叩くことになった。

具体的には私とルーカス様、エルザ、そしてレブリック子爵領軍の軍団長であるドレッグの4人が攻め込み、レブリック子爵領軍の精鋭と私が連れてきた義勇軍が外側から包囲する。

敵陣にたった4人で攻め入ると聞けば、無茶無謀の類いに聞こえるが、今回の場合はそれに当て嵌まることはない。

それだけ神器を使える者の戦闘能力は特出しているということだ。

「敵方には神器を使える者は居ないのか?」

「今のところは確認されていません」

おっと、ここは情報を出しておくべきね。

「サージャス王国の宗主国であるハルドリア王国が援軍に来ていますわ?

どうやら王太子が勝手に軍を率いてきたようなのだけれど、フリード王太子と近衛騎士のロベルト・アーティは神器を使えるはずですわ」

「うむ、フリード王太子か。余計なことをしてくれたものだ」

「だが王太子とその護衛なら無理に残って戦ったりはしないだろう。

戦況が此方に傾けば、生存を第一に考え撤退するはずだ」

ドレッグの予想は正しいでしょうね。

あのフリードが見下している属国のために命を懸けて戦うとは思えない。

此方が攻め始めればすぐに逃げ出す……いや、もしかしたら既に逃げているかも知れない。と言うか、その可能性はかなり高い。

「ドレッグ軍団長の予想は正しいと思いますわ。自国の危機でもないのに、王太子が危険を冒すとは思えません」

「然り、サージャス王国軍に神器使いが居なければ問題は無かろう」

「情報ではサージャス王国に所属している者で神器が使えるのは近衛騎士団長のみ、かの御仁は国王の側を離れることはありませんでしょうから、ブロッケン砦には居ませんわ」

「可能性があるとすれば件の傭兵団か」

「ええ、ですので総大将であるルーカス様、実質の軍の総指揮官であるドレッグ軍団長は砦の南側から攻め込んで頂きたいと思いますわ」

「な⁉︎」

「エリー嬢、どういうことでしょうかな?」

道中、捕らえた捕虜から聞き出した情報によると、ブロッケン砦内の南側に正規兵、北側に雇われの冒険者や傭兵が駐屯しているらしい。

凄腕の傭兵が居る可能性が高いのは北側だ。

「私は魔法による広範囲攻撃が得意ですし、エルザは凄腕の冒険者、いざとなれば逃げ切る程度のことは可能でしょう」

「むぅ……」

ドレッグは私の素性を知っているので、即答は避け、決定をルーカス様に委ねる。

「…………わかった。だが無理はするな。

サージャス王国軍の抵抗が強いならば長期戦に持ち込んでも構わない。

自らの命を優先しろ」

「ええ、勿論」

決行は半日後、捕虜からの情報によりサージャス王国軍は夕刻頃に見張りなどの交代を行う。

明るい日中を若い兵が、暗くなり見通しが悪くなる夜をベテランが担当する。

そのため、経験の浅い若い兵が最も疲弊している交代の直前に襲撃する予定だ。

こうしてブロッケン砦の奪還作戦が決定した。