作品タイトル不明
追撃戦②
砦を出発して数時間、追撃に出ていた友軍を前方に捉えた。
追撃部隊は簡易拠点を築いて休息している様だ。
私の馬に気付いた兵士が武器を取り警戒するが、姿がハッキリと確認出来る距離まで近づくと、武器を下げ、直立不動で敬礼を送って来た。
「お疲れ様です、エリー軍団長!」
「ええ、皆もお疲れ様。部隊長は何処?」
「ご案内致します!」
兵士は仲間を呼ぶと見張りを交代し、私を先導して歩き始めた。
簡易拠点とは言うが、土嚢が積んでいたり、逆茂木が設置してある訳ではない。
見晴らしが良く警戒しやすい場所に屋根だけの天幕を置いて周囲を見張っているだけの場所だ。
彼らはこの場所を拠点に逃走するハルドリア王国軍の背後を攻め立てている。
一目散に逃げているとは言え、ハルドリア王国軍は大軍だ。
当然、その足は遅い。
騎兵を中心とした追撃部隊はすでに何度も攻撃を仕掛けており、ここに至るまでに転がっていたハルドリア王国兵の死体も彼らの戦果なのだろう。
先導してくれている兵士は天幕の下で作業していた上官に声を掛ける。
「部隊長、エリー・レイス義勇軍団長殿が到着されました」
「ん?ああ、ご苦労。お前は任務に戻れ」
「はっ!失礼致します」
私が案内してくれた兵士に軽く手を上げて礼を伝えると、彼はビシッと敬礼して小走りに見張りに戻って行った。
戦果の大小に大きく影響する追撃部隊に選ばれるだけ合って教育の行き届いた兵士だ。
「邪魔して悪いわね。現在の状況を教えて貰えるかしら?」
「はい。我々は部隊を3つに分けております。
今もハルドリア王国軍の背後を突いて圧力を掛けている者達、周囲の索敵を行っている者達、そして我々拠点で指揮を取る者達です」
「ハルドリア王国軍の動きは?」
「はい。現在は此処から数キロ程離れた場所に最後尾が有ります。
騎兵を中心に手傷を負わせる事を念頭に置いた攻撃を仕掛けております。
反撃は散発的で、末端の兵士の混乱は大きく、潰走に近い状態です」
部隊長の報告に頷いた私は、頭の中にこの周囲の地図を描く。
部隊長は潰走と表現したが、此方の追撃部隊が鶴翼陣形で攻め立てているので、敗残兵が山や森に逃げ隠れ、野盗になる様な事は少ないだろう。
さながら羊を追い立てる牧羊犬の様だ。
「私も追撃を行うわ。広範囲魔法を数発撃ち込むだけでかなりのダメージを与えられるでしょう」
「はっ!前線にご案内致します。護衛の兵士は必要でしょうか?」
「必要無いわ。案内の兵士だけ貸して頂戴」
「了解致しました。直ぐにご用意致します」
私は部隊長が用意してくれた兵士に案内され、ハルドリア王国軍の最後尾を追撃している最前線へと向かって馬を向けたのだった。