作品タイトル不明
決戦⑤
わたしがハルドリア王国の兵士を鎧ごと真っ二つに叩き切った時、視界の端で雷光が走り、遅れて轟音が戦場に鳴り響きました。
「雷ですか?」
「みたいだな」
わたしの呟きに、いつの間にか背中合わせになっていたエルザさんが答えます。
「ハルドリア王国軍で雷と言えば《雷神》ブラート・ハルドリアですね」
「ああ、もし冒険者ならばSランク確実と言われている武人だ」
「相手をしているのは……エリーさんですね」
「エリーの来歴を考えれば自然な事か」
「戦況はどうなっているのでしょうか?」
「此処からではよく見えないが、流石のエリーでもあの《雷神》相手では厳しいだろうな」
敵兵は皆、練度が高く連携も巧みです。
その上、時折実力の有る騎士や冒険者が混ざっているので、わたし達でも油断は出来ません。
「【遍断ち】」
魔力を何重にも纏わせた戦斧で目の前の騎士を掲げた盾ごと叩き切ろうとしましたが、騎士が掲げた盾は魔力の光を放つとわたしの戦斧を受け止めました。
「む!」
「《漆黒》ユウカ・クスノキ殿とお見受けした。
我が名はテオドール・ラストランド!
貴殿との一騎打ちを所望する」
「お受けしましょう」
テオドールと名乗った騎士は剣と盾に魔力の光を纏わせます。
わたしと同じ、魔力を凝縮して武器に纏わせる技の使い手の様ですね。
「いざ!」
テオドールが盾を前に突き出して騎兵のチャージの様に突撃してくる。
「ふっ!【飛刃】」
その盾に合わせて蹴りを放ち、テオドールのシールドバッシュの威力を利用して大きく跳び退がりながら斧を振り、魔力の刃を飛ばします。
迫る魔力の刃を剣で叩き落としたテオドールは同じように魔力の刃を飛ばして来るので戦斧の柄で弾きました。
「テオドールさんでしたか、強いですね」
「ふふ、貴女程の強者に認めて頂けるとは、騎士として誇りに思います」
わたしは手にしていた戦斧を背中に背負い、腰から吊るしていた双斧を手にします。
白い柄の斧『 白雪姫(スノーホワイト) 』、赤い柄の斧『 灰被り(シンデレラ) 』。
二振り一対の双斧で強力な魔法武器です。
左手のスノーホワイトを振ると、氷の棘が所狭しと突き上がり、テオドールが回避しようと飛び上がった所に右手のシンデレラから吹き上がった炎が襲い掛かります。
テオドールはそれも魔力の放出で炎や氷を吹き飛ばし、わたしから距離をとり、一瞬の間を置いて斬りかかって来ます。
流れる様な剣戟を双斧で受け止め、受け流し、弾き返します。
エリーさんの方も気になりますが、そんな事を考えていられる相手では有りませんね。
わたしは気を引き締め直して両手の斧を振り上げました。