作品タイトル不明
決戦②
ユウが振るった大斧は、一薙で5人もの敵兵を切り飛ばした。
更に遠心力を使ってクルリと体を回転させ、魔法武器である投げ斧を投擲した。
ユウが投げたのは風属性魔法が付与された《烈風の斧》である。
烈風の斧を中心に風が逆巻き、回転を増してハルドリア王国軍の兵士の間を飛び、腕や足を切断して再びユウの手に戻った。
そして直ぐに烈風の斧を赤い柄の片手斧に持ち替えると、大きく振り上げて地面に叩き付けた。
すると赤い柄の片手斧の刃が輝き、炎が吹き上がり敵兵を飲み込んだ。
「ぎやあぁぁ!!!」
「熱い!た、助け……」
ユウの周囲ではハルドリア王国兵の悲鳴が絶え間なく上がり続ける。
「…………ユウと敵じゃなくて良かった」
その光景を目にしながら、エルザは小さく呟きながら迫りくる敵兵を斬る。
エルザはこの戦争での雇主である友人、エリーの事を思い浮かべた。
エリーは以前、小国との紛争で依頼人として出会った。
その仕事の後にもエリーと気が合ったエルザは交流を続けていた。
そして共にダンジョンに潜った事で更に親しくなった。
エリーがハルドリア王国の貴族の出身だと言うのは知っていた。
私もAランクの冒険者だ。
人よりも強力な力を持っている事は自覚しているし、当然それなりに警戒心だって持っている。
親しくなった人間について調べるのは当然の事だった。
それを怠れば、仲間が犠牲になるかもしれないのだ。其処だけは手を抜く事は出来ない。
そうして知ったのは、ハルドリア王国に裏切られたエリーの過去、国に尽くしたのに国に見放され、守ろうとした国民に蔑まれ、指名手配までされる仕打ちだ。
エリーがハルドリア王国を恨むのも当然だろう。
しかし、エリーは少し不安定にも見える。
普段の聡明で余裕のある様子からは想像出来ないが、ハルドリア王国が関わると途端に無茶をしようとする様だ。
先日も独断で王国軍の精鋭部隊を1人で返り討ちにしたらしい。
エルザが戦争に参加したのも祖国を守りたいと言う気持ちも有ったが、この新しい友人を放って置けないと言う気持ちが有った事も否定はしない。
詳しくは話した事は無いが、ユウも似たような物だろう。
あれでも彼女は帝国商業ギルド評議会の議員の1人だ。
当然、相応の情報網を持っているだろう。
エルザはずれ始めた意識を戻す。
周囲を取り囲む兵士の質が上がったのを感じたからだ。
「正に絶体絶命だな」
エルザはニヤリと笑みを浮かべる。
エルザは焦らない。
こんな危機など、今まで何度だって切り抜けて来たのだ。
魔力を高めたエルザは神器を手にするのだった。
◇◆☆◆◇
雷鳴が轟き帝国兵が一瞬で炭に変わる。
それを遠目に見た私は、口の端に笑みが浮かぶのを堪えた。
「ようやくですわね、ブラート陛下」
私は【暴食の魔導書】とフリューゲルを手に尖塔から飛び降りると、晴天の中、不自然に雷が降り注ぐ方へ向かうのだった。