軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アデルの進行

軍を率いて王都を出たアデルはユーティア帝国の領土の近く、荒野の真っ只中に布陣していた。

「アデル陛下、全軍布陣を完了致しました」

「うむ、ユーティア帝国への通達は?」

「はっ!ハルドリア王国離反軍征伐の為、進軍の許可を願っていますが今のところ返答は有りません」

「まぁ、当然だよね。今の状況で「はい、そうですか」って軍が国内に入る事を許す筈がないよ」

アデルはそう言って報告に来た兵士を退がらせた。

その後、1番大きな天幕に幹部を集めたアデルは現在のハルドリア王国軍の配置やレクセリン砦を中心に展開しているユーティア帝国軍の配置を予想した図を囲んでいる。

「おそらくブラート様は帝国軍の補給を断つ手を取ると思われます」

「そうだね。ジークならそう進言して、父上は受け入れるだろう」

「ですがどう致しますか?帝国から軍を入れる許可が出るとは思えませんが」

「無許可で入るしか無い」

「アデル陛下!それではブラート様と同じ事になります!帝国との講和が成ったとしても後の軋轢になります」

「分かっている。行くのは僕と数名の精鋭だけだ。

君達は軍を纏めてこの場で待機、僕は帝国側と接触するか、父上を叩きのめすかして戦いを一旦止める」

「しかし……」

「このまま此処で立ち止まっていては意味が無い。

早急にこの戦争を止めなければ更に民が苦しむ事になる」

「…………」

アデルの言葉に幹部達は押し黙った。

彼等はアデルが重用した新しい幹部達だ。

今までは爵位が低かったり、敵対する派閥に頭を押さえられていて、表に出られなかった者達が多い。

彼等は皆、民の事を第一に考える立派な貴族達だ。

幹部達をどうにか説得したアデルはオルトとフロンテ、他数名の供回りだけを連れて帝国領へと侵入した。

神器を使い全員纏めて風で運んで行く。

説得するならば父上よりもジークだ。

彼の目的は王国の存続、父上の行動のリスクと僕が提案する案を秤に掛ければ、僕を支持してくれる可能性が高い。

彼を騙す形になるが、民を守る為には仕方ない。

全てが終わった後、父上や兄上とまとめてエリザベート姉様に引き渡すか、もしくは僕の手で始末する。

ハルドリア王国とユーティア帝国の軍の位置から王国が街道封鎖を行うルートを予想する。

父上達が帝国側にエリザベート姉様が居る事に気付いているのかは分からないが、もし気付いて居なくても帝国の首脳陣を舐めている筈はない。

多分、二手に分かれて浸透行軍を行っているだろう。

そうなるとルートは2つ、うち1つは本体兼囮、もう一方が本命だろう。

ジークが居るならこの本命の部隊だ。

予想したルートの辺りで戦闘音が聞こえて来た。

近くに着地して僕達は念の為気配を消しながら戦闘中の場所を確認する。

「エリザベート姉様!」

すると、白い霧の中、ジークと戦うエリザベート姉様の姿と、ハルドリア王国軍の精鋭部隊に足止めする様に群がるレッサーデーモンが居た。

「アデル様!」

フロンテの声に視線をエリザベート姉様の方に戻すと、エリザベート姉様の剣がジークの首を刎ねるところだった。

「間に合わなかったか」

エリザベート姉様は霧を払い、残った精鋭部隊の方に足を向けた。

彼等は王家への忠誠が高い者達だ。

帝国側であるエリザベート姉様に降る事は有り得ない。

しかし、父上の命令が実行不可になった今、王族である僕の命令なら聞くだろう。

有能な彼等を此処で失いたくは無い。

「皆は此処で待機。エリザベート姉様に対しては一切の手出しを禁止する」

「アデル陛下!」

僕はオルトの制止を無視して飛び出した。