作品タイトル不明
一方その頃:王者
次々に繰り出される刺突をティーダはステップを踏み、体を逸らせ、大鎌で弾く。
やられはしないが攻め切る事も出来ない。
1対1ならば確実に勝てるが、3対1では拮抗するのがやっと、むしろ少し押されている。
もし変異種などの強力な魔物が乱入すれば一気に均衡が崩れてしまうだろう。
「多少戦える人が居るのが救いッスかね」
ティーダが視線を向けると、先程のAランク冒険者が中心となって変異種の相手をしている。
「余所見とは余裕だな!」
悪魔の1人が槍を突き出すのを左手で掴み取り、胸を蹴り付ける。
「当然余裕ッスよ、お前らの様な雑魚の相手くらい」
そう強がりながら奪い取った槍を倒れ込んだ悪魔に投擲するが、槍を別の悪魔の槍で弾かれ、更にもう1人の悪魔が斬りつけて来るのを背後に跳んで躱す。
「…………とは言ったものの、このままではジリ貧ッスね」
「「ぐぁああ!!」」
「っ⁉︎」
声のした方を見ると、数人の冒険者を薙ぎ倒した2体の変異種らしき魔物が此方へと向かって来ていた。
「くっ!」
悪魔はニヤリと笑みを浮かべてティーダから距離を取った。
変異種の魔物を前面に出して一気に叩き潰すつもりなのだろう。
「ちっ!これだから悪魔は!奥の手を使うしか無いッスか」
ティーダは大鎌を担ぐ様に構えて魔力を練り上げる。
しかし、魔物の方が僅かに速い。
「…………」
額から流れる汗と背中に氷を突き込まれた悪寒の中、ティーダはギリギリまで魔力を高める。
「【聖……っ⁉︎」
「グラァア!!!」
間に合わない!
その言葉がティーダの脳裏を過った時、突然足下の砂が巻き上がり蛇の様に2体の変異種を巻き取り悪魔達の方へと投げ飛ばした。
「っな⁉︎」
「間に合ったの〜、ティーダ、大丈夫なの〜?」
「フラウさん!」
その場に現れたのは冒険者ギルドの制服を着た男に背負われたハーフエルフの少女フラウだった。
「は〜、今日は沢山働いたの〜」
「ちょ!フラウ様!まだ終わっておりません!ピンチの真っ最中ですって!」
フラウを背負っている冒険者ギルドの職員が焦りの表情を浮かべる。
当然だろう。
フラウはティーダに襲い掛かろうとしていた変異種の魔物を吹き飛ばしただけで、全身の力を抜いてだらけ始めたのだ。
「フラウ様!あ、悪魔が向かって来ます!お、起きて下さい!」
「え〜、めんどいの〜」
非常に嫌そうにギルド職員の背中から降りたフラウは、フラフラとティーダの側まで歩いて来ると、一瞬、膨大な魔力を放出するとそれを瞬時に凝縮、フラウの背後に豪華に装飾された王座が現れた。
「神器〜【王者の証明】なの〜」
フラウの魔力に悪魔達は怯み、足を止める。
唖然とするティーダの目の前でフラウは「よっこいせ」と気の抜けた言葉と共に、王座にグデっとダラシなく座った。
すると地響きと共に足下の土が砂に変わりグングンと盛り上がって来た。
「な、なんッスか!何が起こって……」
「だ、大丈夫です、ティーダ殿。コレはフラウ様の神器の能力です」
ギルド職員の男は慣れた様子でバランスを取っていた。
そして揺れが収まり、ティーダは周囲を見回す。
「な、ど、如何なっているんッスか!!」
出来上がったのは砂で作られた巨大な城だったのだ。
「こ、コレは……」
「何だ!何が起こった?」
見れば近くで戦っていた冒険者達も皆、城の中に収容されていた。
ティーダが居るのは城のバルコニー。
眼下では魔物が城壁を破壊しようと攻撃を加えているが、崩れた場所から直ぐに元に戻る砂の城壁を突破出来ていない。
そんな魔物の後ろで3体の悪魔は目を丸くして突然出現した巨城を見上げていた。
ティーダの側、王座に腰掛けたフラウは広く開けたバルコニーから面倒臭そうに手を振るう。
「【砂の騎士団】」
複数有る城門の1つが開くと騎馬に乗った騎士達が飛び出して行く。
どう見ても精強な騎士の一団だが、その身から馬や鎧、武器に至るまで全て砂で出来ており、次々と魔物を討伐し始めた。
「ふ、フラウさんは何者なんッスか?」
「あちしは〜帝国の〜冒険者ギルドの〜……はぁ、以下略なの〜」
「いやいやいや!それで通る訳無いッスよ!」
「え〜、む〜、あちしは〜帝国冒険者ギルドの〜グランドマスターなの〜」
「帝国冒険者ギルドのグランドマスター⁉︎」
側の冒険者ギルドの職員に視線を向けるとコクリと頷く。
どうやら嘘では無いらしい。
帝国冒険者ギルドのグランドマスターと言えば有名人だ。
「で、ではフラウさんがあのSランク冒険者『王者フラウリエット』ッスか⁉︎」
「うん、そうなの〜」
フラウは、肘置きに上半身を引っ掛ける様にダラシない格好でティーダの言葉を肯定するのだった。