軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

レクセリン砦⑤

バアルは拳を覆う薄手のグローブを中心に魔力を練り上げる。

このグローブに仕込まれているアダマンタイトは魔法に対する高い耐性を持っている。

オーガキング変異種は全身に雷を纏っており、近づくだけでもダメージを受け、触れれば肉が焼け焦げる。

懐からポーションを取り出したバアルは、オーガキング変異種から視線を外さない様にしながら足の傷に振りかける。

すると激痛が和らぎ、皮膚が再生を始める。

「グォン!!」

バアルが傷を治療している事に気が付いたオーガキング変異種は、そうはさせまいと放たれた矢の様に距離を詰めてくる。

「ちっ!これだから無駄に知恵の回る魔物は!」

まだ完全に傷は再生していない。

無理に動いては不完全な治癒になるだろうが、このまま攻撃を受ける訳には行かない。

バアルは側転からのバク宙で大きく距離を取る。

(右足が痛むが動かせる程度には回復したか)

「グォ!」

オーガキング変異種は大きく右腕を振り上げ、紫電を迸らせながらバアルに向けて振り下ろす。

「おらぁ!!」

その拳に合わせる様にバアルも魔力を込めた拳を振るい、オーガキング変異種の拳を迎撃する。

お互いの拳が激突した瞬間、閃光が走る。バアルは多少の火傷を負っているが焼け焦げる程ではない。

アダマンタイトの魔力耐性と魔力により雷を抑え込んだバアルは、更に拳を繰り出す。

右、右、左、バアルの連撃にオーガキング変異種は拳を砕かれ腕を押さえてタタラを踏む。

その隙を逃さずオーガキング変異種の懐に飛び込んだバアルは、身体を焼く雷撃に耐えながら腰を深く落とし、右腕をグッと引く。

「【烈震正拳】!」

渾身の魔力を込めた正拳突きのスキル。

地属性の魔力が込められたバアルの正拳は、オーガキング変異種の胴体に突き刺さり、その身体に強力な振動を与える。

「グゴォォオオオオ!!!」

全身をガクガクと震わせたオーガキング変異種は、紫電を撒き散らせながらのたうち回る。

バアルが撃ち込んだ魔力が振動となり、オーガキング変異種の体内で反射、共振、増幅され、内臓をぐちゃぐちゃに破壊する。

「グッ、ゴバ……ガフ」

血を吐き倒れ伏したオーガキング変異種の死を確認したバアルは、新しいポーションを取り出し飲み干した。

「はぁ、はぁ、ったく……手間かけさせやがって……」

周囲には未だに魔物が溢れかえっており、全身に火傷を負ったバアルが、後方に退がって回復を待つ時間は無い。

グローブを締め直したバアルは、再び魔物の群れの中へ飛び込んで行った。

◇◆☆◆◇

「あ〜あ、こりゃあ無理だべ」

「そうね」

外で魔物を倒す冒険者、中庭でサラマンダーと戦う3人、援軍は間に合わないだろうし、間に合ったとしても帝国軍が万全の態勢で待ち構えている。

蠍と百足がこの場に居る以上、王国の無能王子の指揮では勝てる筈などない。

「此処は撤退するわ」

「んだな」

蠍が手を挙げて合図を送ると、通常のワイバーンよりも一回り大きなワイバーンが砦へと舞い降りた。

「今は私達の負けよ」

蠍と百足を背に乗せたワイバーンは空高く舞い上がり、フリード達が駐留している都市がある方向へ飛び去って行った。