軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帝都の祝祭②

アデルからの誘いに悩みながらも、私はアリス達と祝祭を楽しんでいた。

2日目には、神殿での礼拝に参加した。

そして多額の寄付金を出しておくのも忘れない。

祝祭で貴族や大商会などが神殿に寄付するのは定番だ。

更には私の屋敷で、帝都の孤児院の孤児や先生達を招いて食事会を開催する。

コレはとても好評で、来年からは真似する商会や貴族が出るかも知れない。

イブリス教との関係は良好に保っておきたいので此処でお金をケチったりはしないのだ。

3日目はイーグレットとの商談を行った。

アリス達はミレイを付けて遊びに出したので、屋敷に残っているのは私と数人の使用人だけだ。

イーグレットとの商談は特に問題無く進み、アクアシルクを使った商品をナイル王国の貴族向けに販売する事に決まり、更にチョコレート菓子も試験的に輸出する事になった。

帝国内でも需要を満たせていない状態なので、質の良い物を少数のみ。

本当に超高級品としての輸出だ。

特に揉める事もなく契約書を交わした私達は和やかに珈琲を飲む。

イーグレットは初めて珈琲を飲んだそうだが、ミルクを多めに入れたカフェオレの様な飲み方が気に入った様だ。

「そう言えば今日はあの娘……アリスだったかな?留守にしているのかい?」

「ええ、ミレイや他の子達と祝祭に行っているわ」

「そうか、それは済まなかったね。

俺との商談で娘との時間を取れなかっただろ?」

「気にする事はないわ。

これが成功すれば、ナイル王国への販路の確立の一歩になる大きな取引だし、アリスにはルノアやミーシャが付いていてくれているわ。

まぁ、明日は1日遊んであげないとダメでしょうけどね」

イーグレットと笑い合う。

今日は良い取引が出来た。

4日目は闘技場での武術大会の決勝トーナメントを観覧した。

3日目までの予選を勝ち抜いた8名による勝ち抜き戦である。

参加者は帝国全土から集まった強者達だ。

光魔法で投影される参加者リストを見る。

Aランク冒険者、『泥のシスティア』

Aランク冒険者、『鋼のゴウラン』

Bランク冒険者、『レオン』

光剣傭兵団団長、『光剣のレイ』

旅の魔導士、『激流のエレン』

流れの剣士、『剣鬼ムサシ』

ラムテ伯爵家の5男『カラッド・ラムテ』

エルフの森の守人『ファム』

流石、決勝トーナメントに残っただけの事はあり、半数以上が『異名持ち』だ。

アリス達はシスティアを始め、劇団や吟遊詩人がテーマにする様な冒険者に興奮している。

こうして始まったトーナメントは盛況で、朝から夜に掛けて数々の激闘が有った。

優勝者はAランク冒険者、ゴウラン。

決勝でエルフのファムとの激戦を制して優勝したのだった。

私が見たところ、ゴウランとファムの実力はまさしく拮抗しており、弓や短剣、魔法などと多彩な攻撃手段を持つファムだったが、ゴウランの強力な身体強化の前にジリ貧になり敗北していた。

3位はカラッド・ラムテ。

魔法と剣技をバランス良く習得している正統派の強者だ。

あのレベルなら騎士団の目にも止まるだろう。

伯爵家とは言え、5男の彼としてはまさに立身出世の足掛かりだ。

アリス達は以前に劇を観たらしい『泥のシスティア』を応援していた様だが、彼女は1回戦で同系統の魔導士であるエレンと戦い、辛くも勝利したが、2回戦で相性の悪いゴウランに敗北してしまった。

その後、参加者達が観覧していた皇帝陛下や皇太子オーキスト殿下からお褒めの言葉を貰い武術大会は幕を閉じた。

そして5日目、私達は帝都の中心部の広場で多くの人々の中に居た。

これからパレードが有り、此処を皇帝陛下が乗った馬車が通るのだ。

正直、かつて為政者側だった私は、コレが人気取りや武威を示す為の物だと分かっている。

だが生粋の帝国人であるルノアやミーシャ、見る物全てが気になる年頃のアリスは、とても楽しみにしている。

なのでわざわざここまで出向いてパレードを見物に来たのだ。

「おや、また会ったね」

「イーグレット、貴方達もパレードを?」

「ああ、せっかく帝都で祝祭を迎えたのだからね。話のタネに観ておこうと思ってね」

そう言えば広場はイーグレット達に紹介した宿の近くだったか。

それから軽く話しながら待っていると、歓声が近づいて来た。

遠くの方から皇帝陛下が乗った馬車が騎士団に囲まれながらゆっくりと此方に近づいて来る。

民衆に手を振りながら進む皇帝ダドリー・ユーティアの姿は、ルノアやミーシャはギリギリ見えている様だが、頭1つ背の低いアリスには人垣で見えていない。

「よっ」

「ひゃっ⁉︎」

するとイーグレットがアリスを抱え肩車をする。

「見えるかい?」

「うん!」

「悪いわね」

「一昨日に『ママ』を独占してしまったお詫びだよ」

そうしてパレードが私達の目の前に差し掛かった時だ。

パレードの進行方向側から悲鳴が上がる。

ギョっとして視線を向けるが人垣に遮られて何も見えない。

すると更に大きな悲鳴が上がり、逃げようとする人々が人波となり押し寄せ、それと同時に濃い血の匂いが風に乗り漂って来るのだった。