軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帝都への道中

準備が整い、私とミレイ、ルノアの3人は帝都を目指してレブリック子爵領を出発していた。

馬車は小さく簡易的な屋根がついただけの物だけれど、馬は名馬とは言えないがそれなりの健馬。

その上、長旅とは思えない程、荷物が少ないので軽快に街道を進んでいた。

荷物について、ルノアには簡単に説明してある。

ここ数ヶ月見ていたが、この子ならそうそう言いふらしたりはしないだろう。

そもそも、この子自身は私の神器について知らなかったのだから、そう言う物として認識してくれた。

【 強欲の魔導書(グリモア・マモン) 】に収納せずに馬車に積んでいるのはミレイとルノアの着替えなどの私物、非常時の為の水や食料くらいだ。

【強欲の魔導書】は非常に便利な神器だが、勿論何でも収納出来る訳ではない。

収納出来るのは私の『所有物』に限られる。

宣伝用の商材は商会自体が私の所有物なので収納出来るが、ミレイやルノアの私物は収納する事が出来ない。

また、生物も収納する事は出来ず、川の水や空気などは入れ物に入れて『個』として認識しなければ収納出来ないなど、色々と制限が存在する。

身軽故、軽快に街道を移動していたのだが、レブリック子爵領から2つ程別の貴族の領地を抜けた所、明らかに街道の質が悪くなった。

「わっわっ!急に揺れ始めましたね?」

「そうね。確か帝国では街道の整備は領有する貴族の仕事だった筈。

ここの領主はあまり街道を整備していなかったのでしょうね」

「へぇ、そうなんですか。私、レブリック子爵領を出るのは初めてで」

「普通の町人ならそんな物よ。

領を超えて移動するなんて商人か冒険者、後は巡礼者くらいでしょう」

私はルノアにそういうと、手綱を握るミレイに顔を向けた。

「ミレイ、気を付けてね」

「はい、心得ております」

そこに不思議そうなルノアの声が掛かる。

「何を気をつけるのですか?」

「街道を整備すれば物流が良くなり領内の経済が活発になる。これは分かるわね?」

「はい。物流が良くなれば領内での物の移動がスムーズになり、市民の生活水準も上がりますし、購買意欲もあがる。

他所から商人や冒険者を呼び込む事にもなる。

その結果、税収も増えて領が潤う。

だから領主様は街道の整備や保守に力を入れる。……ですよね」

「そうよ」

以前教えた事を誦じて見せたルノアの頭を撫でながら続きを話す。

「じゃあもし街道が荒れていたらどうなると思う?」

「えっと……」

ルノアは少し考え込んでからゆっくりと自分の考えを口にした。

「……領内の物流が滞ります。

その為……え〜と、農村部や僻地にある村に十分な物資が行き届かなくなる?」

「そうね、他には?」

「え〜、農村部で作られた作物や僻地で採れる薬草などを街まで運ぶコストも上がります。

だから……そうか!食料や薬などの生活必需品が高騰するんですね」

「正解よ。

特にこの辺りは海から離れた内陸の領地だから塩は他領から運ぶか岩塩を取るしかない。

その為、とくに輸送費が高くなる街などでは必需品である塩を始め、物価が高騰。

民衆はそれらを購入する為、財布の紐が硬くなり、嗜好品などの需要が下がるわ。

すると当然景気は落ち込んで行く」

私はうんうん、と頷くルノアに講義をする教師のように指をピンと立てる。

「そして塩や生活必需品は農村部や僻地でも高騰し、食い詰めた農民なんかが野盗になり街道の危険性が上がると、当然護衛を雇ったりする為に更に輸送費があがり、ますます物価は高騰する。悪循環ね」

「はへぇ〜、じゃあ何で領主様は街道を整備しないのでしょうか?」

「まぁ、バカなんでしょうね、多分。

領地の経営に興味が無いか、もしくは目先のお金しか見てなくて街道の整備費をケチっているのでしょう」

上に立つ者が愚かだと民は不幸になる。

王国のブラート王は脳筋だが、暗君という訳ではない。

それにあいつは自らが名君ではないと自覚している。

だから周囲の者達の意見によく耳を傾けるので、周りが有能である限りは無難な治世を続けるだろう。

しかし、息子のフリードは違う。

あのバカはまさしく暗君、いやむしろ暴君と言えるかも知れない。

あんな奴が王になれば国民は不幸になるでしょうね。

まぁ、大半の国民はどうなっても良いのだけれど、私に良くしてくれた商人達には無事でいて欲しいわね。

…………うん、大丈夫ね。

王都に潜ませて居る者達の報告によれば私が親しくしていた商人達の多くは私が国を出て少しした辺りから、何かと理由を付けて拠点を他国に移したり、何時でも移動出来る様に私財を整理したりしているらしい。

商人とは逞しい生き物だ。

「あれ?じゃあさっきの『気を付けて』って言うのは…………」

何かに気が付いた様なルノアの声と共に、何かが風を切る音が耳に入る。

サッと身を翻し、飛んで来た矢を躱した私は、ルノアの肩を狙った矢を突き刺さる直前で掴み取った。

「え⁉︎ひゃあ!」

ひっくり返りそうになるルノアを支えながらミレイを見れば、彼女も短剣で矢を斬り払っていた。

馬が嘶き足を止めると、周囲の茂みから剣や弓を手にした男達が馬車を取り囲む様に現れた。

「こう言った荒れた街道が有る場所は領兵の巡回などもほとんどないから、こんな感じの野盗が出たりするのよ。

だから『気を付けて』なの」