作品タイトル不明
バアルの華麗なる暗闘:暗殺の場合
悲鳴と喧騒に包まれたブギー子爵領の領都の裏路地を配下を引き連れて進む。
配下の手によって街には火が放たれており、大通りは逃げ惑う人々、領主を狙う者や掠奪を行う者で溢れていた。
「おい、早く来るんだ!」
「ま、待って、お父さん」
別の路地から俺達の前に子供の手を引いた父親が飛び出し、遅れて母親が姿を見せる。
「ん?おい!こっちは危ないぞ!君達も早く逃げるんだ!」
3人の家族は小走りで俺達に近づきながら、父親がそう言った。
「はぁ、嫌な仕事だな」
「へ?」
俺は素早く抜いた短剣で父親の首を斬りつけた。
「うわぁああ!!」
「いやぁあ!!アナタぁ!!」
首から血飛沫を上げながら倒れる父親に悲鳴をあげる母親の喉に短剣を突き立て、返す刀で子供の心臓を背中側から貫いた。
「目撃者は殺せ。例外は無い」
「了解」
配下の返事を適当に聞き流し、更に数人の街人を殺しながら領主の屋敷に到着した。
事前に入手していた情報通り、警備が手薄な場所を狙い、見張りの兵を殺して屋敷に侵入した。
屋敷の周りを民衆に囲まれて混乱するブギー子爵の屋敷は警備の連携もガタガタで、民衆に踏み込まれるのも時間の問題だろう。
俺達は近くの窓から屋敷内へ侵入し、その場に居合わせたメイドと従者見習いを始末する。
「此処からは二手に別れるぞ。俺はブギーを殺る。お前らは宝物庫へ行って民衆の掠奪の様に偽装しろ」
「はい」
「分かりました」
配下と別れ、屋敷の中心部へと向かう。
この手の屋敷の構造なら、偉いやつが立て篭もる部屋は大体決まっている。
予想通り、大きく頑丈そうな扉の前に、武装した兵が5人、不安そうな表情で立っていた。
兵達はお互いに顔を合わせて、不安を紛らわせるかの様に何かを話している。
馬鹿なのだろうな。
そもそも、練度が足りていない。
俺はハリボテの兵達との間合いを一足で詰めると、1番近い兵の首を手刀で叩き折った。
仲間の首が不自然な方向に折れ曲がるのを、驚愕の表情で見つめる兵達。
いや、せめて臨戦態勢くらい取れよ。
此処に来る前に、お嬢の命令で新人教育の真似事みたいな事をした名残りか、全くなってない兵達の動きに嘆息した。
それから残りの4人を殺すまで、5秒も掛かって居ないだろう。
俺はあまりの手応えの無さに誰にともなく肩をすくめて見せた。
そして大きな扉を思いっきり蹴り開ける。
大木が倒れたかの様な音を立てて開かれた扉の奥には、丸々と太った男が1人、その男を守る様に位置取る武装した男女が4人。
こいつらは部屋の前の奴らとは違い、まともそうだな。
護衛として急遽雇った冒険者か傭兵だろうか?
「紅蓮の炎よ 我が敵を焼き尽くせ
【火球】!」
魔導士風の男が人の頭程も有る炎を放つ。
「ふっ!」
しかし、それは俺の蹴りで霧散する程度の物。
残念ながらブギー程度が雇える護衛では俺には勝てないらしい。
【火球】に身を隠す様に走り寄っていた槍使いの女が突き出す刃を、首の動きだけで躱し、カウンター気味に顎を蹴り上げ首を折る。
「マデュラ!!」
仲間を殺されて動揺したのか、詠唱中だった魔法が崩れた魔導士に短剣を投擲し、雄叫びを上げて迫る剣士に槍使いの女の死体を投げつける。
態勢が崩れた剣士を、死して尚、槍使いが手にしていた槍で貫き、その手から奪った剣で、胸から短剣を生やしのたうち回っていた魔導士に止めを刺す。
そして、仲間を瞬殺され、腰を抜かして小便を漏らしながらガタガタと震える治癒魔導士の少女の首を刎ねた。
「まだまだ経験が足りないな」
悪くは無かったが、俺を止めるには20年は早い。
「さて、後はお前だけだな」
「ま、待て!か、金だろ!金ならいくらでもくれてやる!
よ、よせ!来るな!……そ、そうだ、ワシには娘が居るんだ!まだ13だが器量は良いぞ!お前を娘の婿にして家督を継がせてやる!そうすればお前も貴族だ!な、だからワシの命だけは……がぁ!!」
俺は何やら喚く肉ダルマの右足を膝から切り落とした。
「ひっ!ま、待て!待ってくれ!ワシが悪かった!これからは無茶な賦役はしない!税も減らす!だから……ぎゃあ!!」
短剣を左足の腿に突き立て踏みつける。
「悪いが俺はアンタの領民じゃねぇ」
「はぁ?」
間抜けな顔で目を丸くするブギーに一切感情を出さない視線で告げる。
「俺はアンタを殺せと言われただけだ」
「な!だ、誰だ!アルスマン男爵か⁉︎それともスレンガン子爵か⁉︎それとも……」
「エリザベート・レイストン」
「っ⁉︎」
俺がお嬢の名を告げると、ブギーは顔面を蒼白にして歯をガチガチと鳴らし出す。
「そ、そんな……エ、エリザベート嬢が……」
「お前はお嬢を散々利用した挙句、裏切ったんだろ?今後、王国に復讐する時に邪魔だし、要らないから消しておけ、と言われたぞ」
「………………ち、違う、違う!誤解なんだ!エリザベート嬢に……エリザベート様に会わせてくれ!必ず!ワシは必ずお役に立……あ?」
顎を蹴られ、脳を揺らし倒れ込むブギーの胸に足を乗せ、少しずつ力を込める。
「もう黙れ」
「……ひゅ!……ま、まっ……て……ぎびぇ⁉︎」
肋が砕け、内臓に突き刺さったブギーは大量の血を吐き出しながら暴れ、2度と動かなくなった。
「バアルさん!」
「おう、終わったか?」
「はい、宝物庫に有った現金は持てるだけ頂き、その他、適当に荒らしておきました。
それと、使用人を数人、あとブギー子爵の妻と息子、娘と名乗る奴らが居たので殺しておきました」
「ご苦労、帰るぞ」
ブギーの屋敷に火をつけた後、俺は配下を連れて帝国へと戻るのだった。