軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ミーシャの迷走:答えに手を伸ばすが如く

お昼を過ぎた頃、ミレイ様の紅茶の淹れ方やマナーの指導を受け終えた私は、商会の仕事をこなして居た。

倉庫で在庫の確認を終え、エリー様の執務室に戻り報告書を提出した私に、エリー様が声を掛けた。

「ミーシャ、悪いんだけど《鋭き切先》のエルザに手紙を届けて貰える?今は帝都のパーティホームに居る筈だから」

「畏まりました」

「届けたらそのままお昼の休息に入って良いわ。

午後の仕事までには戻ってね」

「はい」

私はエリー様から手紙を受け取ると、上着を羽織って屋敷を出た。

エルザ様達が住んでいるパーティホームは平民街だが、貴族街に近い高級住宅地にある。

つまりエリー様の屋敷と同じ区画だ。

10分程歩くと周囲の建物は大きな屋敷から、造りの良い民家へと変わる。

この辺りは羽振りの良い商人や地主の自宅や、上級冒険者パーティや上級傭兵団向けの貸し家が多く有る。

私はその内の一軒、冒険者パーティ《鋭き切先》がパーティホームとして借りている家の門を抜け、呼び鈴を鳴らした。

しばらくの間の後、扉が開き私よりも少し年上の狐人族の少女が顔を覗かせた。

「は〜い、どちら様……あら、ミーシャちゃん」

「こんにちは、マルティ様。エリー様からお手紙をお預かりしているのですが、エルザ様はご在宅でしょうか?」

「うん、居るよ。上がって」

「お邪魔します」

マルティ様に促されパーティホームにお邪魔した私は共有スペースの居間へ通された。

「エルザさん、エリーさんの所のミーシャちゃんが来ましたよ。エリーさんからの手紙を預かっているそうです」

「ん?そうか、わざわざ済まないな」

「いえ」

居間のソファではエルザ様とパーティメンバーのシシリー様がボードゲームに興じていて、それをサリナ様が見物していた。

治癒魔導士のリサ様の姿は見えない、出掛けているのでしょうか?

「それで、手紙と言うのは?」

「はい、こちらです」

エルザ様は私が手渡した手紙を開き、一読すると頷きます。

「なるほど、返事を書くから少し待っていて貰えるか?」

「はい」

エルザ様は手早く返事の手紙をしたためました。

「はい、よろしく」

「お預かりします」

「ふむ……ミーシャ、少し時間は有るか?」

「え?は、はい、この後はお昼の休息を頂いています」

「そうか、では一緒に昼食でも食べるとしよう」

エルザ様に連れられてやって来たのは近くの食堂だった。

食堂とは言え、下町の賑やかな感じでは無く、落ち着いたカフェの様な雰囲気のお店だ。

エルザ様が注文し、机の上に料理が所狭しと並べられる。

「適当に注文したから遠慮せずに食べると良い」

「ありがとうございます、頂きます」

それからエルザ様と談笑しながら食事を進めた。

エルザ様は冒険者らしく、健啖家で、沢山の料理も残す事なく私達のお腹に収まる事になった。

「それで、何か悩み事でも有るのか?」

食後のお茶を頂きながら、エルザ様はそう切り出した。

どうやら、今日私を食事に誘ってくれたのはコレが本題だった様だ。

「…………実は」

私は先日有った誘拐事件について話す。

アリス様とルノア様を守れなかった事、強くなりたい事、ミレイ様に私にしか出来ない事が有ると言われた事など。

「なるほどな。ミーシャは今度こそアリスやルノアを守れる様になりたいのか?」

「はい……でも、どうすれば強くなれるのか……」

「ふむ……なぁ、ミーシャ。『強い』って言うのはどう言う事なのか分かるか?」

「え?」

「ミーシャの目指す強さって奴が具体的に何なのかって事だ」

「それは……」

「何があっても確実に仲間を守れる強さなんて存在しない。どれだけ強くなったとしても、更に強い奴って言うのは存在している」

エルザ様は紅茶で口を湿らせて続ける。

「冒険者パーティって言うのはな、メンバーがそれぞれの役目を全うする事で大きな力となる物だ」

「は、はい」

「斥候に前衛、盾役、援護と治療。それぞれに役目が有り、誰が欠けてもダメだ。

ミレイが言っていたミーシャにしか出来ない事って言うのも、きっとそんな役割を見つけろって事だと思うぞ」

「私の役割……ですか」

「ああ、お前はまだ若い……ん?こんな言い方をすると私が若く無いみたいだな。

まぁ良い、大きな壁にぶつかって自分の在り方に迷うのはよくある事だ。

そしてその壁を乗り越えた者は強くなる。

私から言えるのはこれくらいか。

ミーシャの悩みは自分で考えて乗り越える事に意味があるからな」

「…………はい」

エルザ様の言葉は理解出来る。

しかし、実感する事は出来ない。

ミレイ様の話も同じだ。

2人の言葉から読み取れるのは、単純な強さを求めてもダメだと言う事。

ではどうしたら良いのか、2人が言う私にしか出来ない、私の役割とは何なのか。

深い霧のなか、掴めそうで掴めない何かを探す私は、朧げに見えて来た答えに必死に手を伸ばすのでした。