軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

探索の日

「何か騒がしいわね?」

「そうね、音が響いてよく分からないけど揉めているみたいよ」

エリーとヒルデは身を隠しながら誘拐犯のアジトらしき遺跡を探索していた。

遭遇する人間は、首から聖印を提げた聖職者らしき者や、チンピラっぽい奴など。

しかし、そのどれもが何処か柄が悪い気がする。

「ん、この通路は知ってるわ」

「来た事があるの?」

「ええ、コレでも私はこの街ではそれなりの立場だからね。

此処にも何度か来た事があるわ。

確か、この通路の先に聖堂がある筈よ」

「聖堂……」

「聖堂と言っても遺跡だから、何も無い広い空間に旧時代の神の像があるだけの場所よ」

「旧神の像か……確か、イブリス教の教典では、この世界には元々古き神々が居て、天界を去る時にイブリス教の聖女を天界に招いて力を与え、女神として世界の守護を任せた、て言うヤツよね」

「ええ、だからこの遺跡はイブリス教の聖地とされているのよ」

ヒルデの先導で広い場所に辿り着いた。

どうやらこの広間が聖堂らしい。

かつては豪奢な装飾や優美な彫刻が施されていたのだろうが、現在は石壁が剥き出しになっており、所々崩れかけた旧神の石像が旧時代の威光を僅かに残すだけであった。

「…………何も無いわね」

「そうね……一応、この聖堂がこの遺跡の中心部なのだけど」

「となると、アリス達は途中の分岐の先に……」

私の言葉の途中、轟音と共に遺跡が揺れたと感じる程の衝撃が響いた。

「な、何⁉︎」

「今の揺れ、下から?」

「先程の騒ぎと言い、どうやら今この遺跡では何かが起こっている様ね」

「アリスとルノアが巻き込まれているかも知れないわ。下へ向かう道を探しましょう」

「そうね、仕方ないわ。

本当はあまり使いたくは無かったけど……」

ヒルデから溢れ出た魔力が右手に凝縮され、銀色の煙管を形作った。

「神器【 泡沫の蝶(ペタルダ) 】」

ヒルデは煙管を咥えると大きく吸い、『ふぅ』と白煙を吐き出した。

「コレは?」

「私の神器【泡沫の蝶】は魔力を煙状の半物質へ変換する事が出来るの。

魔力の消費が大きいし、目立つから使いづらいんだけどね」

ヒルデは何度か白煙を吐き出し、小さな雲の様になった煙に煙管を向けてクルクルと掻き混ぜる様に振る。

すると白煙は聖堂中に広がって薄い霧の様に漂う。

「ここまで薄くすると殆ど何も出来ないけど、これなら私達の周囲を隈なく調べられるわ。コレで通路を……ん?」

「ヒルデさん?」

「コレは?」

ヒルデは聖堂の中心にある大きな男神の像の足元を見た。

すると白煙が神像の足元の辺りに集まり数秒漂うと、ゴゴゴと音を立てて石床が持ち上がり下へ向かう階段が現れた。

「隠し階段よ」

私は階段に近づいて状態を調べる。

「頻繁に使われていた形跡があるわね」

「行きましょう。拐われた子達を隠すならやはりこの手の仕掛けの先の可能性が高いと思うわ」

私はヒルデの言葉に頷くと、2人で階段を 下(お) りて行った。

◇◆☆◆◇

遺跡の地下にある一室で、イブリス教の大司教ドンドルは豪奢な椅子にドカリと腰を下ろしていた。

「騒がしいぞ!何事だ!」

「も、申し訳有りません。どうやら侵入者がいる様で……」

「何?聖騎士団の連中か?」

「いえ、金髪の女が1人、暴れているそうです」

「ふん、ならさっさと始末しろ」

「はっ!」

ドンドルは慌てて出てゆく配下の聖職者を睨みつける様に見送った後、視線を正面に戻した。

「全く申し訳有りませんな、コロンゾン伯爵」

「いやいや、ドンドル大司教も大変ですな」

「使えない部下ばかりで苦労しますよ」

ドンドルは肩をすくめる。

「ところでコロンゾン伯爵、本日はどの様なご用件で?」

「ああ、馬車の事故で右足をな。

難儀していた所、ここの事をトアリート侯爵にお聞きしまして」

「そうですか、では早速治療を始めましょう」