軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

褒賞の日

「エリー様、本当にドレスじゃなくてよろしいのですか?」

「良いのよ、貴族として行く訳じゃないんだからね」

私は自分の装いを確認してミレイに答えた。

今日の私は上等な仕立ての服ではあるが、ドレス姿では無い。

どちらかと言うと男装に近い中性的な服装だ。

「エリー会長、時間です」

「今行くわ」

馬車が来た様で、ルノアが呼びにやって来た。

「ママ?」

ルノアやミレイと共に玄関へ向かっていると、中庭の方から私を呼び止める声が聞こえた。

トテトテとやって来たのは散歩中だった金髪に赤目、青目の少女と、共に居たミーシャだった。

「どこいくの?」

「ちょっとお仕事に行くから、アリスは良い子でお留守番しててね」

あの謎の竜種から出て来た水晶球の中から現れた少女だ。

何故か私を『ママ』と呼び、離れると泣き喚く為、紆余曲折の末、私が引き取る事になった。

コレには、まだ謎の多い少女を何処かに預けるのを躊躇ったルーカス様や私の思惑もある。

その結果、私は名前が無いと言う少女に『アリス』と名付け、手元に置く事にしたのだ。

最初の頃は私と離れる事を嫌がっていたアリスだが、最近では少しならお留守番出来る様にもなっていた。

私はアリスの頭を撫でてから手を振り、ルノアが御者をする馬車に乗り込んだ。

ガラガラと大通りを進む先に見えるのは宮廷。

その門の前で番兵に止められ、ルノアが緊張しながら書状を手渡すと、宮廷の一角に案内され、そこからメイドに連れられて控室へ通された。

控室に入ると中に居た人の視線が私に向けられる。

ルノアは緊張している様だが、私は穏やかな笑みを浮かべて挨拶する。

「ごきげんよう、ルーカス様、カルバン様」

控室に居たのはルーカス様と帝都の商業ギルドのギルドマスターであるカルバンの2人、そして2人の連れである従者達だった。

今日は先日の偽金貨事件で功績を挙げた者達が呼び出されている。

王国に乗り込んで犯人を叩き潰した私とルーカス様、そして帝国内に出回ってしまった偽金貨を回収し、新たに偽金貨が流入するのを防いでいたカルバンの3人だ。

正直私はこの手の褒賞を受けるには立場が微妙だ。

だが、既に亡命して年月が経つ上、前回のダンジョンでの功績も有り、褒賞を与えなければ帝国の面子としても不味いと言われ、渋々やって来た。

まぁ、いい加減私の居場所もバレている筈だ。

未だに王国からの接触は無いのが不思議だけれど。

「エリー会長、あの少女の様子はどうかな?」

「変わった所は特には……素直な良い子ですよ」

アリスについて簡単にルーカス様に話していると案内役が控室にやって来た。

「レブリック伯爵、カルバン殿、エリー殿、準備が整いました。

謁見の間へお願い致します」

会話を切り上げた私達は案内役の従者に従って謁見の間へ向かう。

大きな扉を潜り、赤い絨毯が敷かれた謁見の間に入った私達は、数段高くなっている場所の少し前で立ち止まり平伏する。

ルーカス様を先頭に後ろに私とカルバンが並んでいる。

すると、皇帝陛下が入室する。

「面をあげよ」

左右を帝国の貴族達に挟まれた私達。

そこで大臣が私達の功績を読み上げ、皇帝陛下からお褒めの言葉を頂く。

そして私とカルバンは帝国名誉騎士勲章を授与された。

そして最後はルーカス様だ。

「ルーカス・レブリック、此度の其方の働き、実に大儀であった。

其方の功績に対し、褒美として領地を与え、辺境伯へと陞爵とする」

「謹んで拝領致します」

今回の一件で、王国は帝国に対して多額の賠償金と共に、帝国に面した領土の一部を割譲した。

金貨偽造の賠償金だけで無く、広がった偽金貨を回収する為の費用も王国に請求されている。

その為に、わざわざダミー商会を作ってまで偽金貨を吸い上げておいた。

それによって王国は更にダメージを負う事になる。

結果として、あまりにも高額になった賠償金と回収費用を支払う事が出来ない王国は、賠償金の一部を領土で支払った形だ。

そして、新たに得た領土の一部をルーカス様が褒賞として与えられた訳だ。

それによってルーカス様が治める領地は広大になり、晴れて伯爵位から辺境伯位へと陞爵する事になった様だ。

こうして半日掛けて大きなイベントをこなしたのだった。