軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

バーベンベルク家じきとうしゅ

スミスは迷宮都市を管轄する貴族の次期当主として、神台に映る探索者を見てきた。初めはただ単に安定した魔石を供給してくれる炭鉱夫のようなものだと考えていた。

しかし迷宮都市の治安を一任されるまでになった警備団に、大手クランといったものが出来てからは勢力が拡大し、スタンピード後からは探索者たちの影響力も無視出来なくなったことにも気づいていた。

そして異例のスタンピードでカンチェルシア家が崩壊し、王都の貴族は王命で迷宮都市へと駆り出された。バーベンベルク家もその影響を受け、スミスとスオウは当主に言い渡されて探索者としても活動することになった。

探索者になることについてはスミスも異議はなかった。障壁魔法が破られ、無様に気絶して民を守れなかったことは今でも脳裏に焼き付いている。民からの信頼も失墜し糾弾され、死んだ方がマシではないかという気分になるまで追い詰められた。それに比べれば探索者になることなど、嫌ではあったが大したことではない。

しかし神のダンジョンでは魔法が思うように使えないことが発覚し、魔法の劣化であるスキルに頼らざるを得なくなった。そしてアタッカー職の中でも無難な剣士のジョブに就いていたスミスは、久方ぶりに剣を握ることとなった。

障壁魔法が使えないことは大きな痛手ではあったが、スミスやスオウは今までのスタンピードでモンスターを倒すこと自体は経験している。それに高水準の装備と情報があったおかげで階層攻略にそこまでの苦労はなかった。金で雇っている探索者の足を引っ張っているようなこともなく、二人とも異例の速さで五十八階層にまで到達している。

そのため探索者歴は大分短いが、スミスはそこそこの自信を持ってはいた。少なくとも新人の中で頭一つ飛び抜けているアタッカーなのは間違いなく、最近は探索者たちから舐められているような視線も感じなくなった。

「もっとスキル使って下さい。最低、同じジョブのソーヴァさんくらいは使わないと話になりませんよ」

「…………」

「返事出来ないほど疲れているわけじゃないと思いますけど、もう少しメディック増やした方がいいですか?」

「わかってる!」

しかしその速さを上回る速度で神のダンジョンを攻略し、今も最前線組に入っている努からはずっと立ち回りについて口出しされていた。普段五十八階層に潜っている時と違って大声を上げる余裕があるスミスは、そのことが余計苛立ちを募らせていた。

(腹が立つほど快適だ。くそっ)

自分たちよりレベルが高いということも起因しているだろうが、努の支援回復は完璧だった。普段組んでいる高レベルのヒーラーも腕は悪くないはずだが、比べてみると明らかに違う。そのことは今もタンクをしている妹や、大手クランに在籍しているソーヴァというアタッカーの顔を見ても明らかだ。

普段組んでいる高レベル探索者たちでも少々手間取ることがある草狼の群れや、 赤熊(レッドグリズリー) や槍角鹿などもまるで相手にならない。無限の輪の二人とバーベンベルク家の二人、それにアルドレットクロウのソーヴァという三つの団体で構成されたPT。勿論PTを組むことは初めてのため、普通ならば上手く纏まらないだろう。

「ダリル。スオウさんはこっちでフォロー出来るから……その様子じゃ大丈夫そうだね。じゃあよろしく」

「はい!」

しかしヒーラーの努と身体が大きい割に可愛らしい童顔の犬人ダリルが三人に合わせることで、PTは驚くほど上手く回っていた。努に支援回復を受けているスオウは普段よりモンスターと楽に戦えている様子で、ソーヴァというアタッカーもダリルがよりヘイトを取ることでいつもの調子で動けているようだった。

(これほどのモンスターを相手にしても、ここまで余裕があるものなのか)

初めに努が大きな光を打ち上げて大量のモンスターを呼び寄せた時はどうなることかと思ったが、PTは上手く回り群れも余裕を持って討伐することが出来た。戦いというよりは、もはや狩りに等しい戦闘だった。気づけば地面には数えきれないほどの魔石が転がっていて、スオウは高揚した顔で努に詰め寄っていた。

「凄いですね!! ここまで違うものなのですか!? こんなの初めてです!」

「ありがとうございます。でもスオウさんもタンクが上手いですね。PTメンバーを守る気持ちが伝わってくるような立ち回りで、ヒーラーとしては頼りがいがあります」

「あれだけ回復してくれるのなら、怖いものなしですよ! 私、全力で皆さんをお守りしますね! あとツトムさんだけは絶対!」

「頼もしいですね。ではよろしくお願いします」

花開くような笑顔を振りまくスオウに、努はサラリーマンのように何度か頭を下げている。そんな二人を見て何だかショックを受けている様子のダリルに、ソーヴァは魔石を拾いながら声をかけた。

「そちらから合わせてもらってすまないな。助かった」

「あ、いえ……」

「……スオウさんが気になるのか? 凄く綺麗だよな、あの人」

「そ、そうですね。話しかけるのも申し訳なくなるくらいで……」

スオウに対しては同じような価値観を持っている二人は、それから彼女のことについて少し話した後に先ほどの戦闘を振り返ってお互いの立ち回りを擦り合わせていた。とはいえソーヴァも見知らぬ者たちとPTを組むこと自体には慣れているため、先ほどの戦闘で既にダリルの実力を把握した上で戦っていた。

「この辺りにはもういませんね。では少し移動した後にまたモンスターを狩りましょうか」

そして全員で魔石を回収してマジックバッグへ詰め終わると、すぐにモンスターを探すため移動が始まった。その移動の際にスオウはスミスの傍に寄った。

「あの人は、驚くほど気を張り巡らせていますね。まるで心の中まで覗かれているようで、少々恥ずかしいですけれど……兄さんはどうでしたか?」

「……いつもより楽なことは事実だ。腹立たしいことにな」

「あれは出来る男だって前から言っていたではないですか。さっきのは兄さんから突っかかったんですから、怒るのは筋違いですよ?」

「うるさい。人間性は別だ」

スタンピードが終わった後、部下たちから報告を聞いた時から優秀な男だということはわかっていた。曲者ぞろいの探索者を纏め上げて暴食竜を討伐し、更に報奨金も破壊された民家などの補填金として寄付したことはスミスも大きく評価していた。

だからこそたまたま努がPT斡旋を受けているところを見た時は、一度PTを組んで探索者としての指導を受けようと思い行動した。自分たちが下から教えを乞うことになったのは気に食わないが、それでもやるべきだと思ったからだ。

現にタンクのスオウは早々に努のヒーラーに惚れ込み、アタッカーのスミスからしても悪くないと思った。特に疲れを癒すメディックの回数が多いため、普段より驚くほど身体的には余裕がある。

「対モンスターの剣術なんて一朝一夕で身に付かないですし、そもそも自分じゃ教えられません。スキルをとにかく使い込んで下さい。今回は運良く剣士のスキル教科書みたいな人がいるんですから、とにかく真似から入って下さい」

ただし精神的な余裕は一切ない。移動を終えた努はすぐにフラッシュを上空に打ち上げてモンスターを引き寄せて支援回復をしながら、付きっ切りでスキル使用の口出しをしてくる。そして剣士のスキルを使い続けて精神力が減ってきたスミスは、備品を預かっている努に目を向ける。

「そろそろ、青ポーションをくれ」

「いやいや、精神力が半分切ってからが本番ですよ。気持ち悪い中で正常に戦えるかが勝負を分けます。まだまだスキル使えるんですからすぐ使って下さい。青ポーションを飲むのはそれからです」

「ぐっ……!」

普通ならば気持ち悪さが少しでも出てきた時はスキル使用を控えた立ち回りに切り替えるのだが、他人の精神力まで把握している努はそれを許さない。それに精神力を回復する青ポーションの使用も普段のように飲ませなかった。

それからしばらく戦闘を続けていくうちにスミスの顔は蒼白になっていき、最後には戦闘中に思わず剣を杖のようにしてしゃがみこんでしまった。ヘイトはダリルとスオウが取っているのでモンスターから狙われることはなかったが、代わりに努がフライで浮かびながら向かってきた。

「ここで足を止めるようじゃこの先に進めませんよ。少なくとも障壁魔法の感覚共有よりはマシでしょう?」

「それと、これとは、違う……!」

障壁魔法の感覚共有は確かに辛かったが、精神力が減っている今の状態はそれとは違う辛さだった。頭がぼんやりとして吐き気がこみ上げてくる感覚にスミスは全く慣れていなかった。今までは少しでも気持ち悪くなれば青ポーションを飲んで、精神力の自然回復のことを意識したこともなかったからだ。しかし精神力を出来るだけ自然回復で済ませることは、努の渡した階層攻略メモにも書かれていることだ。

「辛いことには変わりないでしょう。僕は障壁魔法について詳しくは知りませんが、感覚共有なんて正気の沙汰ではありません。そんなことが出来るのなら、これくらいで音をあげるわけがないと思うのですけれど」

「うるっ、さい! 誰が、音をあげただと!?」

「その調子ならまだ大丈夫そうですね。それじゃあ構えて下さい。うかうかしているとソーヴァさんが全部倒してしまいますよ」

振り絞るように声を上げて立ち上がったスミスに努は感心したように言って、杖を 草狼(バーダントウルフ) の方に向けた。するとスミスはよろよろとした足取りで剣を構え、一度切り替えるように深呼吸した。

「クロスカッティング」

「クロス……カッティングッ!」

寝不足と酔いが両立したような状態でソーヴァが使うスキルを真似し、それに合わせて自然と動く身体に任せて草狼を倒していく。だが明らかに限界を越えているスミスを見ているソーヴァは、口を出した方がいいのか迷っているような顔をしていた。

「……大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ。スミスさんはわざわざPT斡旋にまで来て僕に何か教えてもらおうとしていたんですから、自分から音をあげることはないでしょう。プライドも高いですし、実力もまずまずです」

「そういうことでは、ないんだが……」

ソーヴァとしてはバーベンベルク家の次期当主に対してこの仕打ちをして後が怖くないのかと言いたかったのだが、努の新人探索者でも相手にしているような様子を見て言葉を止めた。

「ゲールスラッシュゥゥ!!」

そして疾風を纏わせた剣で最後の草狼を倒したスミスは、もう全て出し切った様子で地面に倒れた。普段ならば地面に寝転がるなどしないだろうが、この時ばかりはもう土がつこうがどうでもよかった。

「お疲れ様です。どうぞ」

「……!」

そんなスミスに努が声をかけて青ポーションを渡すと、彼は砂漠で遭難していた者が水をもらった時のような反応でその瓶を手に取った。寝転がりながらすぐに飲み干して地獄から解放されたような顔をした後、手を差し伸ばしている努をキッと睨んだ。

「初めは吐いてしまうくらい気持ち悪くなるはずなんですが、よく精神力を最後まで使い切りましたね。お見事です」

「…………」

先ほどとは打って変わって称賛の言葉を投げかけられたスミスは、何も言わずにその手を見つめた。普通の者ならば貴族に手を差し向けることなどしない。今やそんな権限はないが、以前ならば不敬と取られてもおかしくない行動だからだ。

貴族に不敬だと思われれば罪になっていた時代を知らないような努の立ち振る舞いに、スミスはただただ呆れる。今となっては自分もただの探索者ではあるが、普通はもっと遠慮するなりなんなりするだろう。それか貴族が探索者に堕ちたと陰で馬鹿にして嘲笑うかのどちらかだ。

だが努が自分を見る目は、ソーヴァに向けているものとさして変わらない。それは妹のスオウに対しても例外ではなかった。努は良くも悪くも貴族ということを抜きにして自分たちに接している。

「これくらい、当然だ」

貴族として自分を見ないことは腹立たしいが、侮って扱ってもこない。そんな努の手を借りて立ち上がったスミスは、さも当然といったように鼻で笑った。すると努は満足そうに頷いた。

「それなら次からはもう少し精神力を絞りましょうか」

「…………」

そう宣言されたスミスは見栄を張ったことをちょっぴり後悔したが、何とか顔には出さなかった。

▽▽

「う~~~」

それから数時間後、努から付きっ切りの指導を受けたスミスはどさりと地面に突っ伏して動かなくなっていた。とはいえ死んでいるわけではなく、死んだ方がマシだと思うくらいの倦怠感に襲われているだけだ。青ポーションすら自分で飲める余裕のない彼はしばらく動けないだろう。

「まぁ、兄さんったら」

「一旦休憩にしましょう。すみませんがあれに青ポーションを飲ませてやって下さい。僕が近づいたら剣でも取りそうなので」

「わかりました。ほら、兄さん。しっかりして」

「おれは、じきとうしゅだぞぉ……。こんなことして、ただですむとおもうなぁ……」

精神力がゼロに近い辛さにスミスは耐えられず、呂律もあまり回っていない。そんな兄を介抱し始めたスオウの姿があまりにも似合いすぎて努も思わず見とれていると、背後から視線を感じた。ダリルかなと思って謝ろうと振り返ってみると、そこには真顔のソーヴァがいた。

「うわ、びっくりした」

「お前に、一つ聞きたいことがある」

唐突な問いかけに努は面食らった顔をしたが、丁度自分もソーヴァに尋ねたいことがあったのを思い出した。

「あぁ、僕もソーヴァさんに聞いておきたいことがあったんですよ。そっちの話は長くなりそうですか?」

「……そうだな。じゃあお前からでいい」

「ソーヴァさんってステファニーの幼馴染って聞いたんで、今の状況について軽く見解を聞きたいんですけど……」

努が神台に映らないよう神の眼をスミスの方へ追いやった後にひそひそとした声で話すと、ソーヴァは不可解そうな顔をした。

「……今のステファニーについては俺もわからん。そもそもお前があいつを変えたのだから、何か心当たりがあるはずだろ?」

「それが、全く心当たりがないんですよ。あんなに歪むほど厳しく接していたわけではないですし、至って普通の指導をしましたよ僕は。というよりそもそも神台で弟子の指導については公開してましたし、変なことをしていたら目撃者は絶対出るはずです」

「それは、ルークさんからも聞いた。それにお前に教えられた直後のあいつは、良い変化をしていたと思う。昔から俺の後ろで隠れているだけみたいな奴だったが、自分の意見を言えるようになってた。それから数ヶ月くらいの間に、あいつはおかしくなり始めたんだ。あの部屋は……いや、何でもない」

「何ですか? あの部屋って」

歯切れの悪いソーヴァに突っ込むと、彼は気まずそうに目を逸らした。

「詳しくは聞かない方がいいだろう」

「目の前で自分の名前呼びながら指食い千切られたんですから、もう怖いものなんてないですよ」

「……それもそうか」

実際にあの現場に居合わせて発狂しているステファニーを止めていたソーヴァは、納得したような顔で顎に手を当てた。

「だが、やはり俺からは詳しく言わないでおこう。あいつが嫌われるかもしれないようなことを、俺は言いたくない」

「そんなにステファニーが怖いですか?」

「そうじゃない。……今のあいつは確かに異常だ。お前としても、もう関わりたくないというのが本音だろう。だが、ステファニーがお前を慕っていることだけはわかる。だから、少し目を瞑ってやってくれ。頼む」

そう言って頭を下げるソーヴァに、努は判断に迷っている顔で杖を撫でている。

「正直なところ、今はダンジョン攻略に忙しいので相手には出来ません。ですが、一度向き合って話をするべきだとは思います。確約は、しませんけど」

「逃げないだけで十分だ」

「そうですか。まぁ、そんなところですか。それで、ソーヴァさんが話したいことって何ですか?」

ステファニーについての話を終えた努が聞き返すと、ソーヴァは神妙な顔で真っ直ぐと見つめてきた。

「ステファニーについては俺も話したいことだったが……最近、俺は調子が良くない。今日の探索でわかったことだけでいい。お前から見て俺は、一軍に戻れると思うか?」

「……いや、何で敵に塩を送らなきゃいけないんですか。今、アルドレットクロウとは最前線争いをしている最中ですよ」

「頼む」

「…………」

そう言って今度は深く頭を下げてくるソーヴァに、努は何とも言えない顔をした。だがずっと頭を上げないソーヴァを見て一つ舌打ちをした後、面倒くさそうに杖を振りながら頭を上げさせた。

「今になってちゃっかり神の眼を寄せてくる辺りが腹立ちますね。絶対狙ってますよね?」

「……いや、それは俺じゃないぞ?」

その言葉に不思議そうな顔をして答えたソーヴァを一瞥した努は、すぐに辺りを見回した。

「……おい、ダリル。お前か」

「ご、ごめんなさい。いや、でもツトムさんなら教えるかなと思って、それなら神台に映した方がいいかなって」

「でもこの人に肩入れする気持ちも少なからずあったよね?」

「……ごめんなさい」

しゅんとした顔で謝ってくるダリルに努はメディックのマシンガンを浴びせた後、大きくため息をついた。この数時間で二人が少し仲良くなっている気配はあったが、まさか肩入れしてくるまでとは思っていなかった。この光景を神台に映しだされた以上、教えないとなると観衆の心証が害される可能性がある。なので教えないわけにはいかない。

だが、それは体のいい言い訳でもあった。別に神の眼が近づいてこなくとも、努は素直に頭を下げてきたソーヴァを無碍に扱うことは出来なかっただろう。

「今日の動きは、他の探索者たちの動きを取り入れてますよね? アルドレットクロウに在籍している人から、他のクランの人たちまで」

「……あぁ」

「ソーヴァさんはそれでも形になるくらいには器用さが高い。でも今のそれって、ただ単に技術の上辺だけを取り入れているだけですよね。それならヴァイスさんの動きを真似している時の方が、ずっと強かった」

ポルクから聞いた話だが、ソーヴァは元々ヴァイスに憧れて探索者になったそうだ。そしてヴァイスの立ち回りを研究して取り入れ、マルチウエポン使いとしてアルドレットクロウのエースアタッカーとなるまでに至った。

「ヴァイスさんの持つ一番の強みは何だと思います?」

「……一番に挙げられるのは、ユニークスキルだろう。だがそれだけじゃない。まずあの人は多くの武器を自由自在に扱えて――」

「長くなりそうなんで止めますが、そう、ユニークスキルです。ソーヴァさんはヴァイスさんの動きをよく真似出来ている。だけど、貴方には肝心のユニークスキルがない。そこまで言えばわかりますか? ……僕にはソーヴァさんがただ見て見ぬフリをしているだけに見えますけどね。本当は自分でも不調の原因は気づいていたはずです」

「…………」

「ヴァイスさんの動きを真似すること自体は悪いことじゃない。ですがいくら装備をお揃いにして動きを再現出来たとしても、ユニークスキルは真似できない。取り入れた技術を自分に合わせて応用する力が、貴方にはある。でもそれをしない理由は、僕にはわかりません。後は自分で考えて下さい」

そう言い終わると努はある程度精神力を回復したスミスに近づいて、追加の青ポーションを傍に置いた。

「れ、礼は言わんぞ。そもそもお前が――」

「じゃあ返してください」

「……感謝する」

すぐに手の平を返して感謝の言葉を述べたスミスは、青ポーションをがぶ飲みしている。そんな光景を一瞥したソーヴァは、自分が持っていた剣を見つめなおしていた。