軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダンジョンなのに土壌劣化とは……

菊池涼音さんが運転する乗用車の横――、助手席で車外に流れる風景を見ていると、

「あの……、佐藤さん」

何故か堅苦しい口調で俺の名前を呼んできた。

「はい?」

以前に、流石に微妙な空気の中で別れたこともあり、いきなり話しかけられたので、素っ頓狂な声で反応してしまった。

「今日は、いきなりすいません」

「いえ。別に、田植えに関しては以前から興味があったので気にしないでいいですよ」

俺は流れる風景を見ながら答える。

それにしても、どこに向かっているんだ?

親父の知り合いと言う事だったから近場で米を作っていると思ったんだが、向かっている先が、成田とか東金方面なんだが。

「菊池さん、田植えはどちらでされるんです?」

「多古町です」

「なるほど……」

千葉の三大銘柄と数えられている多古米が生産されているところか。

「――と、なると菊池さんのご実家は多古米を生産しているという事ですか?」

「はい。そうなります」

「今年は、植えるかどうか迷っていたのですが、ダンジョン米よりも品質は高いとのことでしたので」

「そうらしいですね」

「ブランド米として売りに出そうかと」

「ブランド米ですか。ダンジョン米は、今は必要ないと聞いていますが、どんな感じですか?」

「ダンジョン米の品質ですが、佐藤さんに伝えていいのか……」

「何か問題でも?」

「いえ。じつは最初にダンジョン米を白米まで行った時は、私たちが生産している多古米と殆ど差はなかったのですが、数日を過ぎたあたりで品質が下がって固定化されたんです。ただ、一か月を超えると、また品質は戻るのですが、数日経過すると品質が下がるのです」

「品質が? そんなこと聞いたことありませんが……」

「はい。理由は分かりませんが、私たちが生産、販売している多古米よりも数段下がった形と言えばいいでしょうか? それでもカルフォルニア米と比べては、味、食感とも上ですが……」

「ふむ……」

それは初めて聞いたな。

つまり、ダンジョン米の品質が下がったのは一か月前か。

アイテムボックスを開く。

そして一番最初に、菊池さんより渡された白米を10グラムほど手のひらに転移召喚して鑑定する。

ダンジョン産コシヒカリ

日本で生産販売されている極めてポピュラーな米。

ダンジョン内で収穫できる。

次に、一番最後に菊池さんより渡された白米を鑑定する。

ダンジョン産コシヒカリ

日本で生産販売されている極めてポピュラーな米。

ダンジョン内で収穫できる。

重複収穫された為、土壌が回復できず品質が本来の米よりも劣化。

一か月ごとの定期メンテナンスにより土壌が回復するため、それまでは品質は最低ランクに固定される。

なるほど。

つまり、同じ場所で収穫していた為に、土壌が回復しなかった。

なのに、無理やり穀物が育った結果、同じ畑の穀物は劣化し味が落ちたと。

「どうかしましたか?」

「いえ」

俺が鑑定スキルを持っているという事を、運転している菊池涼音さんは知らない。

とりあえず、今後の方針としては別の畑から収穫するとしよう。

それと、これって野菜にも言えるのでは?

野菜は殆ど味がしないし、調味料で何とかしている部分はあるが、果物関係はそうもいかないだろう。

そういえば、果物に関しても最近は取引数が減っている気がするから、今後の事を考えるとキチンと範囲鑑定してから収穫するとしよう。

しかし、この辺の情報は冒険者掲示板には何も書かれていなかったが、俺みたいな取引をしている人は、もしかしたら少ないのかも知れないな。

あとの問題は、今、俺が得た情報を木戸商事に伝えるかどうかだが、伝えない方がいいだろう。

思い付きを他人に気軽に教えるのは、問題だからな。

自分以外の第三者に教えるってことは、その思い付きという秘密は秘密ではなくなるし、俺のアドバンテージが無くなるってことだからな。