軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

銀行員が自宅に来た?

アイテムボックス内の10トン近くある貝類。

それらを横目にアイテムボックスを閉じたあと、スキル【鑑定】でステータスを確認するとスキル一覧に氷魔法は表記されていなかった。

どうやら、システムから得た魔法と応用から出来るようになった氷魔法は別口らしい。

「たしか日本ダンジョン冒険者協会の冒険者交流掲示板には、氷魔法習得の記述はなかったような気がする……」

念のためにダンジョン内でも接続できる日本ダンジョン冒険者協会のホームページを立ち上げるが、現在、確認できている属性魔法は、【火】【水】【土】【風】【雷】【聖】の6つ。

それ以外にもあるかも知れないが、現在、協会に届け出を出されているのは、その6種類。

「火、水、土、風の魔法は、俺が知っている水魔法と使い勝手は殆ど変わらないのか……」

雷魔法は感電する事と、攻撃が入りにくい相手に有効。

そして、聖魔法は、結界と回復と浄化に特化していると。

「回復系か……」

何を倒せば覚えるかは書かれていないのが情報統制掛かっている気がするな。

もしくは、詳しくは情報を公開すると優位性が保てなくなるとか。

そう考えると、どれだけの属性があるのかも信憑性は薄くなる。

他人と共有しても問題ないと思った部分だけ教える。

もしくは教えても自分の利益に大したダメージがないこと、それか――、

「すでに利益を得た上で、他者が自分と並ぶ事のないようにわざと情報を公開する事くらいか」

前回、ダンジョン地下10階層までの農作物を倒せばスキルが手に入るという情報は、恐らくは先行冒険者が、自らに並ぶほどの力を得られたら面倒だと考えて十分にスキルとレベルアップした上で情報公開したと俺は見ている。

そうでなければ、説明がつかないからだ。

たしかに、情報をいち早く公開して一瞬でも時の人のように扱ってもらいたいという思考から、承認欲求を得たいという考えから、後先考えることなく情報を流した可能性もあるが、今回はゲームではないのだ。

以前の農作物からスキルが得られるという情報公開からは、確定的な利益に直結するような情報は流れていない。

「でも、この予測も憶測の域を出ないんだよな……」

それにしても回復魔法は便利だとは思う。何を倒すか、それとも何をすれば手に入れるか不明だが【回復魔法Ⅰ】の時点で、切り傷くらいなら治せるらしいし。

もっとレべルが上がれば、四肢欠損も治せるかも知れない。

ただし、人口を増やすことを第一に考えている日本の神々が、そこまで難易度の高いダンジョンを作るとは思えない。

理由は、そんなことをしたら本末転倒だからだ。

裏付けとしては、11階層のモンスターは、ゾンビが出てくると書かれていたからだ。

人の形をした物を倒すというのは非常に忌避感を伴うものだ。

どう考えても先に進ませたくないと神々が考えているのは、俺の考え違いだろうか?

余計な事をかんがえてしまうが、きゅうりを食べてMPを回復させたところで、本日のダンジョン内の仕事は終わらせ自宅へと戻った。

――翌朝、アパートのドアが何度か叩かれ目を覚ました。

「どちら様ですか」

最近、本当に用件も自身が何者かを説明も紹介もせずに、こちらからの応答やドアが開くのを待つ営業マンが増えた。

少しうんざりしながらも、薄いドアを一枚挟んだ向こう側の人物へと声をかける。

「興業銀行の千歳と言います」

「興業銀行……」

俺の知っているというか、俺が木戸商事と取引で利用しているメインバンクだが、どうして自宅を訪ねてきたのか。

それともブラフか?

そもそも銀行員が自宅に訪ねてくることなんて普通はないぞ?

まさか銀行員を装った詐欺か?

「何の御用でしょうか?」

「じつは、少しお話がありまして」

……さて、どうしたものか。本当に銀行関係の話だったら、俺にはお手上げだぞ?

そもそも本物の銀行員すら怪しいし。

鑑定スキルでは相手の所属している会社名とか役職は分からないからな。

仕方ない。

「すいません。今、少し取り込んでいるのですが――」

「さようですか。それでしたら、後程、お伺いしてもよろしいでしょうか? どのくらいで伺えばいいですか?」

おっと! 帰ってくれないぞ?

これは重要な話があると考えたほうがいいのか?

仕方ないな、時間を区切ることにしよう。

「30分後くらいでお願いできますか?」

「分かりました」

どうやら、また来るらしい。

俺の主要銀行だから、邪険な扱いもできなし。

ドアの前から気配が消えたことから、なあなあには出来ないらしい。

「佐藤ですが、木戸綾子さんの携帯番号で間違いないでしょうか?」

「はい。佐藤さんですか? どうかしましたか?」

「じつは以前に相談していた税理士の件ですが、ご紹介いただけるという話でしたが」

よく考えて見れば銀行が俺のところに来ることなんて税金とかだったら100歩譲ればありそうだ。

そう考えて、話題を捻り出したのだが、

「はい。ただ、税金に関しては来年以降になりますので当分先にかと思いましたけど……。何かありましたか?」

「じつは、銀行の方が」

「そうですか……。それでは、私も父と一緒に何度か銀行員との会話に立ちあったことがありますので、同行いたしましょうか?」

「お願いできますか? ただ、銀行員が来るのは30分後らしくて」

「すぐに行きます。佐藤さんのご自宅で宜しいんですよね?」

「そうですね」

「それでは20分ほどで伺います」

電話が切れる。

時計を見ると午前10時を過ぎていた。

おそらく木戸さんは仕事中だった思う。

「なんだか無理を言って悪かったな」

一応、銀行員が本当だったことを踏まえてクリーニングで上がってきたスーツを用意してから、木戸さんと会っても中年臭いと言われないようにシャワーを浴びることした。