軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第313話 彼女はメインツに到着する。

第313話 彼女はメインツに到着する。

トリエルの門衛にオリヴィが何かを示し名乗ると、即座に使者が走り去って行った。捕らえた盗賊を引き渡し、冒険者組が盗賊に関する調書を作成する為に移動する事になる。

今回、彼女は『商人』として訪れているので、報告関係には関わらずリリアル生に委ねる事にしている。

トリエルは思いのほか小さな都市であったが、川と城壁で囲まれた堅牢な都市であるように思われた。

「ここでその昔、ちょっと人助けしたことがあってね。大司教様に貸しがあるのね。まあ、先代……の時の話なんだけどね」

「そうですか。挨拶する為に名乗られたというわけですか」

それだけではなく、大司教名で今回の盗賊退治に対する礼状のような物が欲しいと頼んだという事なのである。

「メインツで冒険者登録する時に、実績を証明する書状があった方がいいじゃない? 大司教様の紹介なら間違いないでしょうからね」

盗賊討伐の実績をトリエル大司教からの感謝状という形で示してもらい、冒険者ギルドの紹介状代わりにするという事なのだと理解した。

「一先ず宿に行きましょう」

メンバーに宿に向かうことを伝え、彼女と歩人、オリヴィとビルは先に宿に向かう事にした。

やがて解放されたメンバーが宿に現れる頃、大司教の代理人が宿に礼状を持って現れた。

「ラウス様、この度は誠にありがとうございました」

「いいえ、私ではなく彼らが討伐したのです」

「ほお、随分とお若い方達ですね。ですが、腕は立ちそうですな」

代理人は大司教座の聖騎士の一人らしい。

「皆さんのパーティー名を伺ってもよろしいでしょうか」

そういえば、四人のパーティー名を決めていなかったことに思い至る。リリアル……ではそのまま過ぎるので不可だろう。

「…… 百合(lis) 工房(atelier) でしたね……皆さん」

彼女はリリアルに因む名前を考え、リ・アトリエとしてみた。悪くないと思うのだが……

「そうです」

「……可憐な名前」

「似合わないのが若干一名」

「マジか、お前には似合わないかもな」

「ウッサイ!!」

青目蒼髪の脛をける赤目蒼髪である。四人の反応は良いので、これで良しとしようと彼女は考えた。

赤目銀髪がいつの間にか精霊魔術を扱っていたことを思い出し、彼女はその晩、少し話をする事にした。

「オリヴィに教えてもらった」

「そうそう。弓使いでしょ? 私も狩人していたから弓は好きだから、『使ってみない?』って勧めてみたのよ」

「何度もは無理。でも、ここ一番では切り札になると思う」

今回のように、三本同時に打矢を放つのは一度が精々だという。魔力の消費と集中する事も精神的に難しいからだという。

「あの打矢はいいよね」

「あれも切り札。こんな事もあろうかと用意しておいた」

弓を射るには、事前に弦を張っておく必要がある。急な遭遇戦では使えない事も考えなければならない。

「古の帝国の歩兵にも、盾に打矢を用意しておいて、接近して放つ使い方をしていた兵もいたようだから良い工夫だと思うわ」

「銃いらないですもんね。羨ましいです」

「……なら練習する?」

「あはは、魔力が足らないから無理だよ」

赤目銀髪の誘いに、元は薬師の碧目金髪が答える。増えたとはいえ、魔術師のように魔力を行使するには無理がある魔力量ではある。魔装銃はそういう意味では適切な装備なのだろう。今回は……撃つ間も無かったが。

「これから、あんな感じの絡まれ方するんでしょうか……」

「あり得るわね。メインツは質の悪い冒険者は少ないと思うけれど、傭兵や、傭兵寄りの冒険者の場合、昼間の山賊と大して変わらないから、自衛するに越したことはないと思うわ」

「……一人にならないように、常に複数で行動しましょう」

「「「はい」」」

と四人には声を掛けつつ、彼女は個人的に徘徊して誘い出してみようかと思わないでもないのである。

『誘い出すことも必要だしな』

『主には私たちが付いておりますので、問題ありませんでしょう』

『魔剣』と『猫』が付いているという事で、彼女一人でも単独ではないとみなすことも出来るだろう。

『風』の魔術に関して、青目蒼髪達も気になるようであったが、実際に、身体強化や魔力壁と使い出が変わらない反面、精霊へのお願いは加護無しの場合あまり魔力の消費量に対し効果が低いという事で、教わらない事にするようである。

「魔力そのもので同じ効果が出せるのであれば、その方が良いと思うよ」

「残念!!」

「それはそうかも知れませんね」

「雷系統は格好いいけど……魔力が足らなくなりそう」

とは言え、『打矢』を魔力纏いと風の魔術で加速させ、『舞雀』で必中の体勢に持ち込むという工夫は、とても良い工夫だろう。彼女が知らぬうちに、少しずつメンバーそれぞれが工夫し成長しているのだと実感したのである。

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翌日、朝早くトリエルを出発しメイン川に至る。メイン川を左手に見つつ、川を遡るように移動すると、やがてメインツの街が見えてくる。王都ほどではないが、南都や聖都と同じくらいの大きさの街に見える。帝国第一の司教座を有する歴史ある街。その整えられた街並みを見て、ようやく第一に目的地に到着したことを実感する。

入場税を払いメインツに入る。宿は……『黄金の蛙亭』、オリヴィのメインツでの定宿だという。値段は少々お高めだが、風呂と食事には自信があるという。

「先ずは荷物を下して、馬車を預けましょう」

「その後冒険者ギルドに向かう」

「ええ、そうね。早々に冒険者登録しましょうか」

宿は二人一部屋。つまり、彼女と誰かが同じ部屋になる……赤目銀髪か。歩人と青目蒼髪は男同士で同室。

「先生、私たち三人部屋にしてもらいます」

「……気を使わせて申し訳ないわね……」

どうやら一人部屋になるようである。少々寂しい気もするが、別行動となれば、同室でない方が良いかもしれないので特に問題はない。と思う事にした。

黄金の蛙亭は街の中では閑静な表通りから少々入った場所にあり、周辺は富裕な商人の家が多いようである。恐らく、富裕な客の来訪の為の宿として用意された存在なのだろう。個別に風呂がある部屋が用意されているのは城館並と思われる。

『冒険者ギルドに登録ってどうなってんだろうな』

『魔剣』の疑問は理解できる。王国と帝国の冒険者ギルドは別組織であるが、冒険者の評価に関して相互に認め合う取り決めがある。仕事の関係で王国と帝国を行き来する冒険者が、片方の国で実績を積んでも他方ではゼロから評価し直すということはあまり合理的ではない。

とは言え、完全に同一の評価ではないので、あくまで目安という事になるのだが。帝国は同じランクの依頼を二度失敗すると降格となる縛りがあるので、割と緩く依頼を受ける事ができるというので、あまり心配はしていない。

「問題は、あの子達が若いという事ね」

ライセンス上は『十六歳』として表示されている。実年齢と一致しているのは碧目金髪『カエラ』だけであり、赤目銀髪『マルグリット』に至っては実年齢は十二歳である。王都のギルドは王国騎士であるということで例外的に薄黄以上の昇格を認めているのだが、帝国ではどうかと考え、年齢を詐称するに至っている。

「年齢は誤魔化せても見た目は誤魔化せないのよね」

『そりゃお前もだろう? 十五歳で薄紫ってインチキも甚だしい』

『主のせいではありません。しかしながら、討伐実績からすれば致し方ないとは思います』

吸血鬼や竜、ワイトにアンデッドの大軍と難易度高い……一つでも伝説クラスの討伐を積み重ねた彼女の評価は今更である。年齢的な問題がなくなれば、最上級の冒険者等級に昇格するだろう。

「そもそも、王国副元帥が冒険者等級を気にしても仕方ないわねよ」

『ギルドの都合だな。騎士団と冒険者は持ちつ持たれつの関係だから、仕方ねぇか』

王国としても彼女の両義性を便利に思っているのは間違いないだろう。

オリヴィとビルに伴われ、メインツの冒険者登録に向かう事になる。因みに、歩人は留守番という事になった。本人の強い希望である。

「絶対面倒ごとが起こるにちげぇねぇから、俺は宿にいる。荷物番だ」

リリアルの四人組はどう見ても「駆け出し冒険者」にしか見えない。それがいきなり一流半くらいの評価をオリヴィの口利きで得たと思われれば、あまり愉快な展開になるとは思えないからである。

「沈む船から逃げ出す鼠?」

「せっかくだから、何か美味しい物でも食べて帰りましょう」

「素朴な味だけど、菓子とか充実している店があるから、そこに案内するわ。登録の後にね」

赤目銀髪の鋭い評価に、全員が内心納得するが、沈むのは相手であって自分たちではないと自信満々なのは皆同じである。

「私は精々星一つだから問題ないよね」

碧目金髪は冒険者としては薄黄ランクなので、帝国では星一だと思っているので気楽なものである。護衛不可、討伐限定可の半人前評価が星一である。

「星二にするけれど、実力的には星三はあると思うよ。星四はピンキリだから何とも言えない。そもそも、星三の楽ちん依頼だけ重ねて数熟せば星四になるけどその場合、星四の依頼を指名で受けて生き残れるかってのは本人の命を賭けるしかないからわからないしね」

星四の冒険者は帝国では『伯爵』並みの待遇を受ける事ができるという。貴族の権利には義務が伴うので、名誉は有っても利益にならない依頼も回ってくるという。二度断れば自動的に降格なので、受けざるを得ないと判断し帰らぬ冒険者も少なくないという。

「星二で文句は言われないと思うけどね。大司教様に一筆頂いたし」

四人で十数人の盗賊を討伐し捕縛したという実績は、オリヴィのゴリ押しという印象を薄める事になるだろう。が、四人を目にして納得するかどうかはまた別の話である。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

王都の冒険者ギルドより幾分広いその場所は、中に食堂が備えられている為のようであった。時間が夕方近いという事もあり依頼完了の報告をした後、酒場で翌日の打ち合わせをしている冒険者が多いようだ。

オリヴィとビルがギルドに入った瞬間、多くの視線が集中する。

「オリヴィ様、戻られたんだな」

「おお、相変わらず麗しいな。後ろのガキンチョは何だろうな?」

二十代半ばほどに見えるオリヴィとビルの背後にいる彼女たちは、少年少女にしか見えず、依頼人か単なる同行者か理解しにくいところでもある。

「王国からのお客様よ。冒険者登録……ライセンスの更新をしたいのだけど、対応できる人をお願い」

「は、はい!!」

年若い受付嬢が奥の机に座るベテランらしき職員の元に急ぎ移動する。話は聞こえていたのだろう、カウンターにベテランが座る。

「ラウス様ご無沙汰でございます。王国の冒険者ライセンスを帝国のライセンスに移行する手続きを希望という事でよろしいでしょうか」

「その通りよ。みんな、前に出て」

四人はカウンター前に移動する。

「冒険者証を提示してください」

職員が受け取る冒険者証は『薄赤』×3『薄黄』×1。帝国の評価基準に合わせれば、『薄赤』は『星二もしくは三』で護衛から討伐まで一通り可能な一人前。『薄黄』は『星一もしくはニ』で限定的な討伐まで可能という評価になる。星三となると、「一流」枠となり、パーティーリーダーや指名の依頼を受けるなど、所属するギルドでは名の知れた存在となる。

普通の冒険者は「星三」を目指して精進する。王国の「薄青」ないし「濃赤」に相当する評価となる。

「随分お若いのに、もうこの評価ですか」

「……実力通り」

「仕事柄難易度の高い依頼を沢山受けていますからね」

「ほんと、去年どんだけ討伐したんだよ俺ら」

「クラーケンから始まって……沢山じゃない?」

受付嬢は冒険者証を確認すると、自分だけの判断では等級が定められないと判断したようだ。等級に対して年齢が若すぎるからだ。年齢があと五歳も上であれば、「有望な若い冒険者」と判断したかもしれない。

「お時間少々頂いてもよろしいでしょうか」

「私も同行しましょう。これをギルマスに渡して欲しいの」

トリエル大司教からの討伐に対する感謝状。今回の等級を得るに際して、その実力を裏付ける証拠になり得ると思われるものだ。

オリヴィは受付嬢と共にギルドの奥に消え、彼女たちは一先ず食堂に移動し飲み物でも飲もうという事になった。この場にビルが残っていてくれたことは正直ありがたかった。

何故なら、背後から「王国の薄赤って」というような、リリアル生の冒険者等級に対する疑問に思うような声が聞こえてきたからだ。ビルがいる事で問答無用に絡まれることはないだろう。

但し、何もないとは彼女には思えなかったのである。