軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第24話 片田舎のおっさん、新人と挨拶する

「さて、まだ何か文句はあるか?」

腕を組み、視線は鋭く。

手合わせを終えたスレナがメイゲンに向かって静かに問うていた。

「あるかー?」

ついでにルーシーもドヤっていた。

お前はいい加減帰れ。

対するはあんぐりと口を開けたまま呆けているメイゲン。

しかし、スレナの声掛けでようやく気を取り直すと、申し訳なさそうに口を動かし始める。

「……いえ。大変に素晴らしい腕前でした。ガーデナントさん、疑うようなことをしてしまい申し訳ありません」

「いえいえ、メイゲンさんの疑問は尤もです。どうか顔を上げてください」

言葉と同時、俺への謝罪も含めて頭を下げてくるメイゲンに慌てて声を掛ける。

謝ると言っても、彼は何も俺に敵意を持っていたわけじゃなさそうだしなあ。正しくギルドの管理者として心配をしていただけだと俺は見ている。

ぽっと出のおっさんにいきなり新人教育してやるぜ! ってしゃしゃり出てこられても困るわけで、その点で言えば彼の姿勢は正しい。

ただ、何がどうなって彼のお眼鏡に適ったのかは分からんが。

だって俺防いでただけやぞ。

「ほっほ、では決まりですかな。宜しく頼みましたよ」

「……承知致しました」

ニダスの言葉で場の空気が定まる。

……やっぱり無しでって言えないよなあ。言いたいなあ。

「ついでと言っては何ですが、面倒を見て頂く者たちも紹介しておきましょう。メイゲン、呼んできておくれ」

「はい、畏まりました」

どうやらこの場で新人冒険者の紹介も終わらせるらしい。

まあ確かにここは訓練場だし、新人というくらいならここに居てもおかしくはない。結局同伴するんだから、先に顔と名前だけでも分かっておいた方がましというものか。

騎士に比べると冒険者の数は本当に多いから、情報がないと探すのにも一苦労しそうだし。

「……すみませんな。メイゲンは優秀なのですが、頭が固く」

「……ああ、いえ、お気遣いなく」

メイゲンが離れた隙を見て、ニダスが小声で口添えをする。

何度も思っているが、彼の疑問は尤もだから俺が口を挟むところではないのだ。それに関しては納得している。

どっちかと言えばこれからその重荷を背負わされる俺にもうちょっと気遣って欲しい。ダメかな。ダメっぽいな。

「……スレナ。冒険者ってのは皆、君みたいに一人で活動するのかい?」

ニダスの小さな謝罪を受け入れた後、若干の手持無沙汰を感じた俺は、雑談のつもりでスレナに話題を振る。

よく考えなくても俺は、騎士団もそうだが冒険者に対しても無知であった。基本くらいは押さえておきたいところだ。

「いえ、大体は三人から六人程度のチームを組むことが多いですね。あまり多すぎると連携や報酬の分配で揉めますので、凡そその辺りの数で留まります。私も基本はソロですが、時折チームを組むことはあります」

すらすらと、まるで教師のように言葉を発するスレナ。

なるほどなー、基本はチーム制なのか。そりゃまあ確かに一人で出来ることは限られてくるし、仲間は少ないよりは多い方がいいか。危険も大きな仕事だしな。

「お主がダンジョンアタックする時は呼んでくれ、わしも手伝ってやるぞ」

「いや多分その機会は一生来ないと思うよ」

「なんでじゃ!」

ルーシーの言葉を切って捨てる。

誰がダンジョンアタックに喜び勇んで挑戦するというのだ。俺は別に一獲千金を狙っている訳でも名声を得たいわけでもないんだぞ。

剣術師範としてのんびりと過ごしたいだけなのである。

ていうかこいつマジで何しに来たんだよ。帰れよ。

「お主が前衛でわしが後衛じゃろ? いい組み合わせだと思うんじゃが……」

「否定はしないけど、俺の身が持たないよそれは」

ぶつぶつと、ありもしない構想を練っていくルーシー。

彼女の言う通り、剣士と魔術師は戦う分には相性最悪だが、組むとなるとその相性はかなり良いと思う。実現するかどうかは置いといて。

「皆さん、お待たせ致しました」

しばらく後、メイゲンが若い男女三人組を連れて戻ってくる。

さりげなく様子を探ると、やっぱりと言うか何というか、ガッチガチに緊張している様子が手に取るように分かるな。

そりゃブラックランクの冒険者と話す機会なんて新人には早々回ってこないだろう。緊張するのも無理もない話か。

「では皆、自己紹介を」

「は、はい!」

メイゲンの言葉に連れられ、三人が飛び出すように声を発する。

「ポ、ポルタです! 剣士です!」

「ニ、ニドリーですぅ……同じく剣士、ですぅ……」

「……サリカッツ……です……」

うわあ、ガッチガチ。

これ本番のダンジョンアタック大丈夫かな。今から心配になってくる。

彼らはどうやら男二人、女一人のチームっぽい。

プレートを見た感じポルタとニドリーがブロンズで、サリカッツだけはシルバーランクか。とは言っても、このレベルじゃあ五十歩百歩だと思うけど。

「ベリル・ガーデナントです。宜しくね」

「スレナ・リサンデラだ。今回先せ……ベリル・ガーデナント氏とともに君たちのチームを監督することになった。ところで、このチームに 索敵役(シーカー) は専任で居るのか? それとも全員か?」

スレナとともに挨拶を返す。

しかしシーカーとはなんぞや。初めて聞く単語だな。

「あ……僕、です……」

スレナからの問いを受け、おずおずと手を挙げるサリカッツ。

「元々このチームはポルタとニドリーの二人組です。そこにサリカッツが加入した形になりますね」

サリカッツの挙手に合わせて、メイゲンが補足説明を入れてくれる。

なるほど、二人組かあ。幼馴染とかそういう感じなのかな。見る限り三人とも成人しているかどうかは微妙な年齢に見えるが、サリカッツだけ少し年上に見える。

成人前の子供の年齢なんてぱっと見では分かり辛いが、俺も道場で沢山の子供たちを見てきたからな。凡その見当は付くのである。

「スレナ、すまない。シーカーというのはどういう役割なのかな」

それはそれとして、とりあえず今は疑問を解決しておこう。

一応とは言え監督役になってしまうのだ、冒険者のいろはを知らなさ過ぎるってのもちょっと拙い気がしてきた。

「シーカーは主に状況、痕跡からモンスターや罠を発見、時に解除する役割を持つ者です。居ないチームもありますが、専任を立てているチームも少なくありませんね」

「なるほど。じゃあこのチームの鍵はサリカッツ君が握っているわけか」

俺の零した感想に、サリカッツ君がびくりと肩を震わせた。

いや脅すつもりじゃなかったんだよ。許して欲しい。

「それでメイゲン。今回赴くダンジョンは何処になる?」

挨拶を終え、今回のダンジョンアタックに話が切り替わる。

「ええと、アザラミアの森南部に位置するダンジョンですね」

「なるほど、あそこか。新人にはうってつけだな」

スレナとメイゲンの間で話が進んでいく。

俺はと言えば、特に口を挟む必要も理由もないのでただぼんやりと会話を耳にしているだけであった。これ本当におじさん要る? 俺は要らないと思う。

ちなみにアザラミアの森ってのは、首都バルトレーンから少し南東に進んだところにある森林地帯である。

野生の動物もモンスターも多いが、大型種はほとんど確認されていない、らしい。俺は入ったことがないから詳しくは知らんけど、総合的な地域危険度はあまり高くないそうだ。

「それでは明日の朝、中央区の馬車停留所で待ち合わせということで」

「うむ、構わん。先生もよろしいですか?」

「え、あ、ああ、大丈夫だよ」

いきなり話を振られて若干キョドる。

いかんいかん、完全に外野を決め込んでしまっていた。

「よ、宜しくお願いします!」

「うん、こちらこそよろしくね」

ポルタから元気な挨拶が飛ぶ。

うむ、まだまだ未熟なのだろうが、芯のありそうないい子じゃないか。道場に残してきた門下生をふと思い出す。

そういえば、ランドリドは上手くやっているだろうか。時間が出来たら様子を見に行きたいところだが、おやじ殿に追い返されそうだな……。

おっと、いかんいかん。また思考が逸れてしまった。

今回赴く場所は地域危険度は高くないということだから、俺程度でも何とかなるはず。若い芽が不慮の事故で摘まれてしまわないよう、年長者としてしっかりせねばな。