軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

180・ナナセの商魂

シンザキ商会の末娘、ナナセ・シンザキは、今年、士官学校の技術課程を卒業する。

就職先については、実はかなり悩んだ。

軍の補給関係の事務職は学生達にそこそこ人気で、親もその進路を想定して士官学校へ通わせてくれたのだろうが――これはあくまで『軍隊の補給に関する事務作業』をするだけの立場であって、新商品を開発したり、自身の商才を発揮しての大儲けなどはできない。

そつのない立ち回りが必要とされる点と、失敗が許されないという難しさはあるが、挑戦的・革新的なことなどは推奨されないし、貴族でもない女子の場合は出世も難しい。民間の商会ならばともかく、軍はやはり男所帯になりがちである。

ナナセにとっては、必然的に民間の商会が就職先の第一候補になったが、これも悩ましい。

実家のシンザキ商会は兄達が継ぐ。その下で経験を積むのも悪くはないが、子供の頃からやっていた手伝いとさほど変わり映えしない日々になりそうだったし、ある程度の年齢になったら政略結婚を勧められるのも間違いない。

これは別に理不尽な話ではなく、商家の娘なら当たり前の流れで、これをナナセが断り続けると親兄弟のほうが「娘(妹)の嫁入り先も見つけられない無能」と世間から言われてしまう。

こればかりは時代ごと、国ごとに根付いた価値観の問題であり、ナナセ個人にはどうしようもない。

ただ、最初から他の商会へ就職してしまえば「家を出た娘」として扱われるため、この圧力も薄くなる。

さて、実家以外の商会となると――

大手の商会で、友好的なところにはすでに親族がいる。いまさら自分が入ったところで、新米の使い走り扱いだろう。敵対的なところにはそもそも採用されないだろうし、されたところであまり良くない結果になるのは目に見えている。

中規模、小規模な商会が狙い目なのだが、このあたりは 玉石混交(ぎょくせきこんこう) で、なかなか理想に近い勤め先を探すのは難しい。

ナナセの理想は単純である。

商人として、自分の才を試したい。

所属した商会を大きくして、そこで確固たる影響力を持ちたい。

この二点だけを見れば、単なる世間知らずの野心家だと自分でも思うが――彼女はただ、「意にそわない商売」をしたくないだけなのだ。

それはたとえば、不公正な取引。

それはたとえば、人の不幸につけ込む商売。

それはたとえば、世の理不尽を悪化させる営利活動。

商いとは、「世間をより良くするためのもの」であるべきだと、彼女は信じている。

現実はそうでもないかもしれない。それでも、この理想を捨てた時点で、商人としては「道理」を失い、むしろ世間のためには存在しないほうが良い邪魔者になってしまう懸念がある。

理想を貫くには、財力が要る。有望な商材が要る。有能な仲間が要る。当然、健全な市場も必要である。

それらを守るためにも、「影響力」は担保しなければならない。

さすがに国の経済を牛耳る気まではないが、「あそこの商会は無視できない」と余人から思われる程度には、力をつけたいのだ。

シンザキ家の始祖も、その思いをもってシンザキ商会を立ち上げ――その血と理想は、現代に続いている。

そしてナナセは、卒業が見えてきた秋になって、ようやく「目指すべき進路」を得た。

きっかけを持ってきたのは、シンザキ商会の取引先でもある『王立魔導研究所』の職員、アイシャ・アクエリア――

「これね、うちのお師匠様が支援している新規商会からの試供品。来年から売り出す予定で、トマト様のバロメソースっていうんだけど……パスタにからめるとめっちゃ美味しいから食べてみて! でもって感想聞かせて!」

その怪しい品を渡された時、正直に言ってナナセは戸惑った。

瓶詰めの中身は、毒々しいまでの赤色。

どろどろに濁った濃厚な……ともすればゲテモノ一歩手前の、まるで塗料で染めた泥のような第一印象だった。

それが『リーデルハイン領の特産品』だと聞かされていなければ、眉の一つもひそめていたかもしれない。

彼女はその地名の関係者に少しだけ縁がある。興味も持っている。

弓術試技の朝練で世話になった、領主課程の後輩、クロード・リーデルハイン――彼との雑談で、『トマト様』という新種の野菜については聞かされていた。

赤く、みずみずしく、ほのかな甘みと酸味があり、栄養価の高い野菜。生でも食べられるが、加工することで料理などにも使いやすくなり、調味料として活用できるほどに風味が濃い――

そんな話を聞き、どんな野菜かと気にはなっていたが、取引先のアイシャがそれを持ってきてくれたのは想定外だった。

せっかく貰ったのだからと、一緒に渡されたレシピに従い、パスタに適量を絡めてみれば――そこには、彼女の知らない初めての美食があった。

似た味を思いつかない。

単純な塩気ではない。唐辛子でもない。水飴は少し入っているかもしれないが、メインの味ではない。醤油やチーズ、味噌でもなく、コンソメ、鶏ガラ、コーンスープの類とも違う。

たまねぎやにんじんは使っているだろう。それから大豆のそぼろ……いや、これはバロメの実を加工したものか。

だが、彼女の知っているそうした味をまとめあげて、まったく別の風味に仕上げているのは、完全に未知の食材だった。

トマト様――その新種の野菜がこの味の中核であるならば、『バロメソース』以外の商材ももちろん開発できるだろうし、その可能性ははかりしれない。

そして彼女が、トマト様、およびリーデルハイン領に関する情報収集を始めた矢先に、『トマティ商会』からの求人が商人ギルドへ掲示されたのだ。

これはまさに運命的なタイミングと思えた。

求人はリーデルハイン領への移住を前提としており、おそらく 今ならばまだ(・・・・・・) 競争率は高くない。

数年後には数十倍、数百倍になっている可能性もあるが、今回ならば集まるのはおよそ十人前後――

商会立ち上げの初期メンバーを集めるということは、少なくとも二人以上、場合によっては十名前後の採用者が出る可能性さえある。

狙うなら、『このタイミング』しかない――その意気込みをもって、ナナセ・シンザキは面接に 臨(のぞ) んだ。

面接官が領主夫妻だったことには心底驚いたが、これはかえって商会への期待感が増した。領主がバックについているならそうそうおかしなことにはならないだろうし、ライゼー・リーデルハインは生真面目な武人として知られている。

そして彼女は、採用枠を射止めた。

商人ギルドの掲示板を見て思わず拳を握り込み、窓口でトマティ商会からギルドに委託された「採用通知」と案内の書類を受け取る。

そこには、「明日正午に八番通りホテルにて、商会の者から詳しい説明と案内をおこなう」旨が記されていた。

スケジュールが急なのはライゼー子爵の滞在予定とも関連しているのだろうが、これくらいなら珍しくもない。面接の時にも大まかなスケジュールは聞かされていたし、働き始めるのはもう少し先で、これはあくまで採用者への説明会だと聞いている。

ただ「昼食はこちらで用意するので、空腹の状態で来て欲しい」と、わざわざ書類に記されているのはちょっと珍しい。おそらくは商材である『バロメソース』が出てくるのだろう。

あるいはトマト様を用いた他のメニューもあるのかもしれず、期待が高まる。

採用通知を受け取って商人ギルドを出ようとした時、掲示板の前で抱き合う男女を見つけた。

「アン……アンナ! 採用だって! 受かってるよ!」

「ええ……ええ、本当に……よかったぁ……」

今日、掲示板で発表されている採用通知は、トマティ商会のものしかない。つまりは「同僚」になる予定の人材だろう。

真面目そうな顔立ちの青年と、青い髪の娘――

青年のほうは、ナナセとそう年が変わらないように見える。青い髪の娘のほうは少し年上かもしれないが、そう判断した理由は佇まいに 浮(うわ) ついたところがないからで、外見だけでは判断がつかない。

姉弟……には見えない。抱擁の様子からして若夫婦、もしくは恋人同士と見当をつける。

一足先に挨拶をしておこうと、ナナセは声をかけることにした。

「トマティ商会での採用ですか? おめでとうございます」

「えっ? ……あ、ありがとうございます! あの、もしかして、貴方も?」

アンナと呼ばれていた娘が、社交的な笑みを向けてくる。

ナナセは素早く観察した。

――商家の娘には見えない。こちらを観察する気配が薄く、油断がみてとれる。

かといって農民や職人の娘でもない。姿勢が正しすぎるし、ぴしりと線の通った立ち方からは相応の育ちの良さが感じられた。

(……貴族のお嬢様? もしくは 妾(めかけ) の子とか、あるいは聖教会の関係者とか……)

思考する時間は一秒にも満たず、ナナセは愛想よく笑みを返した。

「はい! そちらの掲示にも載っています、ナナセ・シンザキと申します。急に話しかけてしまってすみません。私も昨日、面接を受けまして――ご領主夫妻が面接官をされているなんて、びっくりしましたよね」

「えっ」

アンナと青年が揃って顔を見合わせた。その驚愕する様子は演技には見えず、「もしや」とナナセも察する。

「……あの、まさか……気づいてませんでした……? 最初に名乗られたと思うんですが……」

「は、はい、あの……ライゼー様、ウェルテル様と……えっ……ご領主様本人……? ご親族なのかなぁ、とは思ったのですが……」

ナナセも納得した。そもそも「領主が面接官をやる」という状況が異常なのは間違いなく、面接担当者が「リーデルハイン」の姓を名乗ったところで、普通は「領主の親戚か?」と勝手に判断してしまう。

ナナセの場合は、学祭でウェルテルと短いながらも言葉をかわしたし、またライゼー子爵の名も知っていたから対応できたが――この二人はおそらく、ライゼーの名を知らなかったのだろう。

(王都でもある程度の事情通なら、数年前のギブルスネーク退治をきっかけに、ライゼー子爵の名を知っているはず……つまりこの人達は、あまり王都のニュースに詳しくないか、もしくは他の地方の出身者か……)

息子のクロードまで学祭中にギブルスネークを退治したせいで、ここ数日は新聞沙汰になっていた。その中で、数年前の「ライゼー子爵」による蛇退治も再び報じられており、今の王都ではどちらも名がそこそこ売れている。

つまり、このアンナという娘と恋人らしき青年は、新聞もまともに読んでいない。

生活に余裕がないのか、たまたま忙しかったのか、そもそも読む習慣がないのか――理由はともかく、やはり王都の商人とは考えにくかった。

ここで遅ればせながら、アンナ達の自己紹介が入った。

「あの、はじめまして。私はアンナ・イルヤークと申します。こちらは夫のカイロウです」

「よろしく。カイロウです」

「ええ、よろしくお願いしますね」

両者との握手に応じながら……ナナセは、背筋にわずかな冷や汗を覚えた。

――夫、カイロウの 掌(てのひら) には、武器を振るう騎士、剣士に特有の剣ダコがあった。日雇いの労働によるものとはまた別の、継続的な修行によってつくタイプのタコである。

そして妻のアンナは、力仕事や台所仕事にまるで縁のない、しなやかで細くきれいな手をしていた。

(……コレ、貴族のご令嬢と護衛の騎士だ! えっ!? 駆け落ち? もしかして駆け落ちなの!?)

……瞬間的に「正しい答え」へと辿り着いてしまったナナセ・シンザキは、動揺を悟られまいと、あえて笑顔をふりまいた。

この予測が外れている可能性ももちろんある。あるにはあるが、『おそらくこれが一番、確率が高い』とは確信しているし、仮に外れていたとしても「冒険者と地方の商家のお嬢様」のような、そこそこ「惜しい」外れ方だろうという自信もあった。

そうなると、今後はこの予測の上に立って対応する必要がある。

「お二人は夫婦揃っての採用だったんですね。私は年末に士官学校を卒業する予定でして、正式採用は年明けからなんです。あ、受付で採用通知と案内をもらってきてください。窓口での手続きを忘れると、辞退と間違われちゃうので」

おせっかいかとも思ったが、 他所(よそ) から来た人間ならば王都の商習慣にも不慣れかもしれず、うっかり忘れかねない。

夫のカイロウが「僕が行ってくるから」と慌てた様子で窓口に向かい、掲示板の前にはアンナが残された。

世間話の続きとして、ナナセはアンナに問いかける。

「お二人は王都のご出身なんですか? それとも他の地域から?」

「…………いえ。王都ではなくて、東の方ですね。名前を言っても誰も知らないような、小さな村です」

なるほど、そういう設定かと納得しつつ、それ以上の追究はしない。今のナナセの目的は「嘘を見破る」ことではない。彼女達をフォローするために、設定を共有する――それが目的であり、できれば「大丈夫! 味方です!」と宣言したいくらいなのだが、初対面でそれをやらかすほど 不躾(ぶしつけ) でもない。

ナナセ・シンザキ、十七歳。幼い頃からの英才教育によって早期から文字と数字に親しんだ結果、そういうロマンス小説も大好物であった。

「お二人も、トマト様の噂を聞きつけて応募されたんですか?」

「……え? トマト様? 商会主さんのことですか?」

「いえ、商会主はどんな人か、私も知りませんが……トマト様というのは、リーデルハイン領で発見された新種の野菜なんです。トマティ商会が来年から売り出す新商品は、その野菜を原料としていて……たぶん、商会主のトマティ氏が発見して、自分の名前を新種の野菜につけたんでしょうね」

これは因果関係が真逆なのだが、今のナナセにそんな事情を知るすべはない。

アンナは首を横に振った。

「いえ、私達は、たまたま求人を見つけて応募しただけで……実は、トマティ商会のことも、その商品のことも存じ上げないのです。本音を言えば、『移住』という条件が魅力的でした。その……王都は色々と、物価も高いので」

――そんなふわっとした動機でも採用されたということは、昨日の面接はおそらく「人柄重視」だったのだろう。職場環境は悪くなさそうである。

「そうでしたか。今回は求人の掲示期間が短かったので、見つけられて運が良かったですね! トマティ商会は来年以降、きっと大躍進しますよ。そのトマト様というお野菜は、本当にすごいものみたいです。軍部でも話題になっていて、国王陛下が振興策や交易の優遇策をわざわざ検討している、なんて話も聞きます。トマティ商会も、宮廷魔導師のルーシャン様が支援されているとか……」

「えっ!?」

すべて初耳だったらしく、アンナが目を見開いた。

「あの、まだ立ち上げすら済んでいない、社員もいない小さな商会だと聞いたのですが……」

「そうですね。でもそれは『今』の話です。二年後には新進気鋭の中規模商会、十年後には大商会になっていると思いますよ」

できれば自分もその流れに貢献したいものだが、年若い身でこれは 不遜(ふそん) だともわきまえている。腰は低く、志は高く、誇りをもてる商売を――これはシンザキ家の家訓でもある。

「トマティ商会は、ただの商会ではないはずです。商会主は実績もない謎の人物ですが、宮廷魔導師ルーシャン様との縁があり、領主のライゼー子爵からも友人扱いされている――もしかしたら、魔導研究所を退職したお弟子さんとかかもしれませんね。あるいは名のある貴族や官僚が、正体を隠して立ち上げた商会という可能性もあります。もちろん全部、私の考えすぎかもしれませんが、明日の説明会ではいろいろわかるでしょうし……楽しみですね!」

「は、はぁ……そんなこと、考えもしていませんでした。てっきり、ただの田舎の商会だとばかり……」

求人情報だけを見れば、そう判断するのも無理はない。

ナナセの場合、アイシャを通じてバロメソースを得た上に、その後にもいろいろと噂を集めたせいで「何かある」という結論に至ったが、おそらくそこまで調べた上で求人に応募していたのは自分だけではないかと思う。

弓術試技を通じて後輩のクロードと知り合った縁を含め、いろいろと運が良かった。

ナナセとアンナのこの会話が気になったのか、掲示板の前に一組の男女が近づいてくる。

長い銀髪に褐色肌――一見して南方の出身者と思われるが、王都では珍しい。

もう一方は見上げるほどの巨漢で、服装こそ商人風の地味なものだが、それが仮装にしか見えない。傷だらけの顔も恐ろしく、ナナセでさえつい、一歩を後ずさってしまった。

「お話し中に失礼いたします。トマティ商会のことを話されていたようなので、少し気になってしまって……昨日の面接の、合格者の方々ですよね?」

銀髪の娘が楚々と一礼し、次いで巨漢も深々と頭を下げた。

「私、行商人のジャルガと申します」

「……どうも、グレゴール、です。前職は倉庫業務をやってました」

ジャルガのほうはごく自然体で、グレゴールのほうはひどく緊張した声音だった。この二人の名は、ナナセ達と同じように掲示板に出ている。

どうやら採用者は全員、 朝一(あさいち) で掲示を見に来て、この場に揃ってしまったらしい。明日からの同僚達に、ナナセは愛想よく返礼する。

「どうもご丁寧に。私はナナセ・シンザキと申します」

「はじめまして、アンナ・イルヤークです。夫のカイロウは今、窓口に……あ、戻ってきましたね」

五人はそれぞれに自己紹介をしつつ、すぐ近くのカフェへ移動した。

店の猫が一匹、放し飼いにされており、さっそくジャルガにすり寄り、膝上へ陣取る。それをやや 羨(うらや) ましく思いながら、ナナセを中心とした情報交換が始まった。

「トマティ商会はあくまで新規の商会のようで、社員はおそらく、私達以外にはほんの数名だと思います。商会主の知り合いが何人かいるだろうとは思いますが、実質的に、私達が採用の第一陣と見ていいかと――」

ナナセのこの言葉に、ジャルガが頷いた。さらりとした銀髪と褐色の肌がやけに神秘的で、この人物についてはナナセの観察眼もあまり役に立っていない。要するに、素性が読めない。

「そうですね。私は、知り合いの冒険者から求人が出ていることを教えてもらって応募したのですが……社員は現状、いないそうです。ただ、その冒険者達のチームもこれから採用される予定で――昨日、案内を担当していた女性……シィズさんという魔導師なのですが、彼女も含めた四人が、すでに社宅で暮らしていると聞きました」

「社宅……? 商会で借りている寮ですか?」

商会が従業員のために寮を作ったり、借りることはある。が、「社宅」という言い回しはあまり聞いたことがない。

「ええ。社員を雇うためだけに、わざわざ新築したそうで……新しい商会にしては、やけに資金力が豊富な印象を受けました。領主の 肝煎(きもい) りという事情もあるかとは思いますが」

「なるほど――ライゼー子爵が積極的に支援していて、事前に寮まで新設しているとなると……もしかしたら、リーデルハイン家の親族が立ち上げた商会なのかもしれませんね。ライゼー様御本人は『友人』と言っていましたが、ただの友人とも思えません」

「名のある冒険者という線もありえます。私の知人の冒険者はケーナインズというチームなのですが、そこそこ腕も良いです。彼らが『古楽の迷宮』を離れる決断をしてまで移住を決めた点も、少し気になっていまして――」

ジャルガは先方の関係者と知り合いだけあって、ナナセよりも多くの情報を持っていそうだった。

一方でアンナ・カイロウの夫妻は興味深そうに聞くばかりで、グレゴールという大男も口数が少なく無愛想である。

ただし気配りは細やかなようで、店員が運んできた飲み物の配膳をそれとなく手伝ったりと、場に溶け込んではいた。

見た目は怖いが、なんとなく上手くやっていけそうな感触を得る。

――そして、翌日。

招かれた「食事会」の席にて、ナナセ・シンザキを含む新入社員達は、想定外の「神」と謁見する羽目となった。