軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

生態系の覇者 ⑩

遠征部隊に帰還した私たちは目的地の視認を情報共有を終えて進軍を再開した。

出発の推定時刻は午前7時。

目的地までの推定距離は20キロメートルも無いぐらい。

昨日と同じように警戒しつつ下草を払いながらの道程なので、隊列の歩みは遅々としたもので1時間に進む距離は2キロメートル前後かな。

ルナリアと私が逃避行をしたときと同じか下手をすると若干遅いぐらいしか進まない。

川というものは低い場所を選んで流れるもので、日本のように山がちな地形では無いにしても、川に沿って進めばそれなりのアップダウンも有るからね。

まあ、ギリギリ今日中に目的地には着けるだろうし、ここまで来れば目的地はすぐそこだ。

行軍ペースとしては許容範囲だよ。

地上の警戒をお母様たちがアクティブソナーの訓練に使っていることも有って、今日の私の仕事はちょくちょく上空へ上がって地形確認をしつつの対空早期警戒レーダーとなっている。

何でこんな配置になっているのかと言えば、昨日みたいに私が何もかも全部やっちゃうと、ルナリアをはじめとした他のみんなの訓練にならないから。

それなりの規模で魔獣の襲撃に対処できたとなれば、こんな機会は滅多に無いって話になったんだよ。

「フィオレ! ガルダはどうだ!?」

「・・・今のところ来てないよ!」

戦場でも声が通るお母様の確認に答えると、お母様の声は地上のアクティブソナー担当へと向けられる。

「エゼリア! アンリカ! ラクネはどうだ!?」

「敵影無しです!」

「こちらも反応ありません!」

絶賛特訓中の2人が答えると、バジリスクを取り囲んでいる人垣の一角から戦闘指揮の訓練をしているルナリアの確認が飛ぶ。

「やっちゃって良いの!?」

「構わん! 始末してしまえ!」

チラリと確認の視線を向けてきたお母様に頷き返せば、管制塔役のお母様からルナリアへとゴーサインが伝達される。

「殺っちゃいなさい!」

「正面は近付きすぎず牽制! 側面から攻撃しろ!」

「「「「「はいっ!!」」」」」

戦闘指揮官のルナリアが討伐命令を下せば、小隊長のピーシーズが部隊に具体的な指示を出す。

バジリスク1匹の討伐ぐらいピーシーズは慣れたものだからね。

邪魔者さえ入らなければ危なげなく討ち取れる。

捕食者であるはずのバジリスクは、四方八方から槍で突っつき回されて数分後には捕食される側となった。

「討伐、完了しました!」

「捌いちゃいなさい! 血抜きしている間は休憩よ!」

「「「「「はっ!!」」」」」

ピーシーズの報告を受けたルナリアが私に目を向けてきて、私が頷き返すとルナリアが次の指示を出す。

首をチョンパされた獲物を木に吊してしばらく雑談しながら休憩を取った後には解体作業だ。

20人もの新人さんたちが群がれば、やいのやいのと騒いでいるうちに魔獣の巨体は適当な大きさのブロック肉と剥がされた皮と廃棄物に分別される。

廃棄物とは頭と内臓と骨だ。

危険な毒腺を持つ頭部は早々にゴミ穴の底へ放り込まれ、抜かれた内臓と外された骨も放り込めばゴミ穴は埋め戻される。

あのお肉は今日の晩ご飯だな。

昨日のバジリスクも晩ご飯になったし、ミセラさんたちがお肉の臭み抜きや何やかんやの仕込みをするんだろう。

「それにしても鮮やかな手際だな。成人前の子供とは思えんほどだ」

「・・・慣れですよ。慣れ」

感心しているドネルクさんに警戒監視を続けながら答えると、バルトロイさんが小さく首を傾げる。

「ラクネの襲撃も無かったが、狩り尽くしたか?」

「・・・どうでしょう? 狩っても狩っても新たな個体が現れるのが魔獣ですから、私としては来ないことに違和感を覚えますけど」

「ええ・・・」

ドネルクさんとバルトロイさんに挟まれて谷底から崖上を見上げるようにしている私の答えに、バルトロイさんが嫌そうに眉根を寄せた。

何だ? この状況。

いやまあ、お二人を管轄しているエゼリアさんとアンリカさんが、お母様たちと一緒にお花摘み大会へ行っちゃったからなんだけどね。

アスクレーくんは新人さんたちと一緒になってバジリスクを切り刻んでいるし、何度も話したことが有ってお二人を相手に萎縮しない話し相手となれば、今は私しか居ない。

「そこまで直ぐには湧かんだろう」

「・・・採掘場のシカは翌日には増えてますよ?」

そう言えば、ウォーレス領に到着して早々、遠征に付き合うことになったバルトロイさんは、まだ採掘場へ行ってなかったっけ。

私の反論にバルトロイさんがギョッとした表情になる。

「そうなのか?」

「そうらしいぞ」

「南部の森は恐ろしいな」

採掘場へ足を運んでエゼリアさんから解説を受けたので有ろうドネルクさんが追認して、信じ難いと言わんばかりにバルトロイさんが首を振った。