軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

生態系の覇者 ③

ルナリアと2人で渡河地点の防衛態勢強化を完了させるという最重要課題が有るから、今の私には他のことに関わっている余裕が無い。

こうやって 背景処理(バックグラウンド) で実験結果を得てくれていたのだから、私としては感謝しかない。

私がすべきは手元に集められた情報を元に判断材料をルナリアに渡すことだ。

このまま早めの昼食に雪崩れ込むなら、平行して事後処理を進められそう?

「・・・じゃあ、ガルダにはお肉と魔石の他に価値は無さそうかな?」

「後は羽根でしょうね。確か売れたはずですが、ドネルク閣下。その辺りは如何なのでしょうか?」

ミセラさんから情報確認を振られたドネルクさんが、冬晴れの空へ視線を泳がせて記憶を掘り返す。

「あー。冒険者ギルドの買い取り素材の一覧に有ったと思うぞ」

ドネルクさんって新しい役職に就任したばかりなのに、ちゃんとギルド内部の記録書類に目を通してるんだ。

筋肉の塊かと思っていたけど、お父様やお爺様たちと同じように書類が苦手と零しつつも仕事はこなすタイプか。

「そう思いましたので、肉と魔石とは別に羽根も纏められるだけ纏めてあります」

「・・・いつも、ありがと」

そして、ミセラさんたちも、毎度のことながら手際が良いよね。

補佐する立場に特化しているとはいえ、ここまで手際よく先回りして仕事を進めるには物事の優先順位が分かっていないと出来ないよ。

つまりそれは、ミセラさんたちもまた、指揮官としての資質を持っているってことだよね。

私のお礼に嬉しそうな笑みで応えた頼れる補佐官は、さらに一歩踏み込んだ助言をくれる。

「いいえ。ついでに申し上げますと、食べて減らしてしまえば荷物が減ります」

「・・・それも有ったね。だったら、少し早いけどお昼にしちゃおう」

「では、食事の準備に取り掛かります」

普通なら、素人考えでも「それ大丈夫?」と首を傾げたくなる判断だと思うけど、今回の場合は問題ないはず。

なぜなら、自分の足で森を踏破するには、重荷が少ないに越したことはないからね。

ハイキングだって旅行だって、荷物というものは不自由しない範囲で最低限に収めるのが鉄則だよ。

その重荷が食料なのだから減らしすぎると“兵站の途絶”という別の危機に見舞われるんだけど、旧日本軍の関東軍がインパール作戦でやらかした兵站の現地調達などという現実離れした作戦計画と違って、私たちは 新鮮なお肉(ガルダ) を呼び寄せる手段を知っている。

触角ヘビのお肉のように 受動的(パッシブ) な偶発的遭遇に頼るのではなく、ガルダのお肉は 能動的(アクティブ) に入手できるんだよ。

後者の場合は「戦闘の結果」という注釈は付くけどね。

これって、すごいことだよ。画期的と言い換えてもいい。

宅配先が危険極まりない森の奥でもお肉の方から食べられに飛んで来てくれるのだから、何たらイーツなんて宅配サービスよりもよほど便利でイカしてる。

いや、イカレてる?

昼食の準備に向かうミセラさんの背中を見送っていると、今度はノイエラさんから声が掛かった。

「フィオレ様。だいたい集め終わったと思いますが、どうされるんですか? コレ」

「・・・小屋というか、窓も入口もない小部屋で囲っておけば、死骸を食い荒らされずに済むかと思って」

密閉してしまえば死骸の臭いも出ないし侵入も出来ないだろう。

ラクネがアシダカグモに近い生態を持つ種なら、徘徊性で土を掘ったりしない。

土を掘る種は土蜘蛛系だもの。

私と並んで小山を見上げているノイエラさんが面倒そうな息を吐く。

「この死骸の中から魔石を取り出すのは時間が掛かりそうですね」

「・・・もっと楽に、纏めて処理できればいいんだけどね」

総数が多いだけに、面倒そうだという意見には私も全面的に同意する。

纏めて処理する案も有るには有るんだけど、成功する確証が無いんだよ。

成功率が読めないので有れば、手間が掛かったとしても、失敗して全てを失うよりは安全策を取った方が良いだろう。

ほんと、面倒だけどね。

私の口振りからか、何か案を持っていそうだと勘付いたらしいノイエラさんが、隣に立つ私を見下ろしてくる。

「楽というと?」

「・・・灰になるまで死骸を焼くとか」

炭化しているということは、“炭”なんだよ。

炭にはまだ燃える余地が残っていて、その燃焼した最終形は、“灰”だよ。

あくまで案だから隠す必要も無いかと口に出せば、私が抱いた懸念と同じことをノイエラさんが口にする。

「魔石も燃えちゃいそうですね」

「それは大丈夫じゃないかな」

「・・・んん?」

ノイエラさんの感想に私が返事をする前に、声変わり前の幼い男声が割り込んできた。

そんな声の持ち主といえば、この場には1人しか居ない。

今回の遠征部隊は成人間際の新人さんたちが主体で、それよりも幼い者といえば私たち姉妹とピーシーズの年少組とアスクレーくんだけだ。

ノイエラさんと2人して声の主へ顔を振り向ければ、当然のことながら、そこに居るのはアスクレーくんだった。

「・・・お兄様」

「アスクレー様。大丈夫と仰いますと?」

目を丸くするノイエラさんの問いにアスクレーくんが披露した答えは、1人で黙々と進めていたという解剖の結果によるものだ。

炭筆による汚れか、炭化したラクネの死骸による汚れか、頬に炭の黒い汚れを付けたアスクレーくんは、スケッチの成果で有るらしい紙束を肩から提げた自分の鞄へと大事そうに仕舞い込んでいる。

「炭になるまで焼かれた死骸を崩してみたけど、魔石は壊れずに残ってたよ」

「・・・おお!」

それは正しく、今の私が求めていた答えだった。

素晴らしい! ファインプレーだよ、アスクレーくん!

これぞオタクの鏡!

彼が導き出してくれたマニアックな研究結果によって、私の悩みが1つ、スッキリと解消された!

遠慮無く燃やして良いってことだよね!?

私は今、モーレツに感動している!