軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初めての出征 ㊳

労せず、危険も冒さず、新たな獲物を提示されて新人さんたちが現金に表情を明るくする。

対象の魔獣は違えど、採掘場での出荷や回収作業と変わらない。

無茶な育成計画を押し付けちゃったからね。

困難を乗り越えて強くなった実感を得て貰わなくちゃ困る、というのも有るけど、たまにはサービスしてあげよう。

地球世界最強の軍事超大国だって戦場での余暇というか、兵士の慰撫に神経を使ってるぐらいだからね。

前線のモチベーション維持やフラストレーションの捌け口として、強い国ほど兵士へのサービスを怠らない。

押し付けの根性論や個人の愛国心に依存した前線維持なんて持続性が有るわけがないし、その失敗例の1つが前世での祖国だったわけだし。

何の因果か私も前線で指揮する立場になったのだから、破壊と殺戮と発達の歴史を歩んだ地球文明の先達たちが払った、貴い犠牲と教訓を活かさせて貰うよ。

「「「「「ありがとうございます!!」」」」」

「・・・手加減して攻撃機会をみんなに回すんだよ!」

「「「「「了解しました!!」」」」」

ヨシヨシ。みんな強くなることに貪欲だね。

ピーシーズと同年代で同郷の子たちばかりだから、先を行くピーシーズに早く追い付きたいのかな?

一歩でも、半歩でも、前へ進もうとする姿勢に好感が持てる。

風ジェットカッターや魔石使用法を学び取ろうとしていたときのピーシーズも、こんな感じだったよね。

この子たちも、きっと強くなってくれることだろう。

私の仕事は、このモチベーションを維持できるように後押しすることだ。

そうすることで、きっと王国はこれまで以上に強くなってくれるはず。

「縄を頂戴! 脚に縄を掛けて広い場所へ引っ張って行って!」

「急いで! 生きてる内に突くよ!」

新人さんたちが互いに声を掛け合って、私の「手」が掴んだままのガルダに取り付いて2本の脚を纏めて縛り上げる。

「オエエエエエエエ・・・」

白目を剥いて何かを吐いている鳥類を地面に置いても抵抗して暴れる様子はない。

こうなっては起き上がることも飛び立つことも出来まい?

地べたに横たわった状態から飛べるもんなら飛んでみろ。

ついでに羽根を毟って鳥肉に捌くところまで新人さんたちがやってくれると、焼き鳥の調理が捗るんだけどな。

鳥肉は牛肉みたいに熟成させた方が美味しいとか聞かないから、捌きたてのお肉で焼き肉をしても平気というか、強制参加の忘年会で連れて行かれた鶏肉専門の焼き肉屋さんは新鮮さを売り文句にしていたし、鳥肉は捌きたての方が美味しいのだろう。

ダチョウやエミューよりも大きな鳥が8羽も有るんだから、100人掛かりで食べても食べ応えが有ると思うよ。

私たちは未成年者ばかりだしお酒は無いけど焼き鳥大会だ。

あ、ヤベ。 涎(よだれ) 出てきた。

念のため涎が漏れ出ていないか手の甲で口元を拭っていると、エゼリアさんを伴ってドネルクさんがやって来た。

「凄いな嬢ちゃんは! ガルダを一人で8体も倒したのか!」

「・・・美味しいらしいですから、頑張りました!」

「お、おう」

褒められたのでグッと拳を握って称賛に応える。

そうだよ! エゼリアさんとアンリカさんの結婚祝いも有るんだから、美味しいお肉でお祝いも有りじゃん!

ドネルクさんたちの参加でお留守番になったお父様やお爺様たちやお婆様たちに美味しいお肉のお土産も持って帰りたいから、帰りにも襲って来てくれないかな?

あ。そうだ。ドネルクさんの顔を見て思いだした。

「・・・そんなことより、お母様! 南岸からもラクネの群れが接近してきています!」

「まだ来るのか!?」

お母様を振り返って報告すれば、動揺した様子もなく片眉を上げたお母様とは別の方向から、動揺した男声の答えが返った。

お母様たちも私も声の主へと目を向ける。

アンリカさんを伴ったバルトロイさんだ。

「まあ待て、バルトロイ。慌てるな」

「フレイア! 落ち着いている場合か!」

手で制したお母様に真面目なバルトロイさんが食って掛かる。

いや。お母様たちも真面目な人たちだよ?

私たちと一緒にバルトロイさんたちを迎え入れる側になったドネルクさんもね。

この落ち着いた態度は、さすが、多くの場数を踏んできた元騎士団長さんだよ。

「フィオレ。ラクネで間違いないんだな?」

「嬢ちゃん。ラクネは川向こうから来るんだな?」

「・・・はい。間違いありません」

お母様とドネルクさんの質問にハッキリと頷いて返す。

探知の結果には私も自信を持っているし、自信が有るなら誤解の余地が無いように伝えないと判断を誤らせる結果になるからね。

迷いの無い私の答えに、お母様と同じく動揺した様子のないドネルクさんがお母様と顔を見合わせる。

「うーむ・・・。一応、備えておくか?」

「一応は、だな。何事も絶対は無いからな」

ドネルクさんの問いにお母様が頷いて返した。

これは、私が予想した通りというか、私のギャンブルは「勝ち」で良いのかな?

判断を間違えずに済んだことにホッと平たい胸を撫で下ろす。

王国の武威を代表する王都騎士団団長として数多くの情報に触れてきたので有ろうドネルクさんの顔を見上げる。

「・・・やっぱりナーガ川を越えられないんですか?」

「やっぱり、というと?」

ハインズお爺様並みに立派な体躯をお持ちのドネルクさんが私を見下ろして答える前に、バルトロイさんが私に質問の意味を問うてきた。