軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初めての出征 ㊱

「オエエエエエエエ・・・」

乱暴に引っ摑んだせいか、オエー鳥がまた口から何らかの液状物質を垂れ流しているけど、魔力の手が汚物塗れになったところで私は痛くも痒くも無い!

魔力の手を消してしまえば、そこに残るのは汚物を吐いているガルダと汚物だけだからね!

8つ目はギリギリのタイミングで回収が間に合った!

今度こそ戦闘状況が終わったと、ホッと息を吐く。

半分ほどのラクネは別の方向へ進路を変えて、何かに集まっていく。

あれって私が探知し損ねた、死んだガルダかな?

ラクネに集られたガルダは諦めるしか無さそうだ。

瀕死の8羽は回収できたのだから、残りは自然の食物連鎖にお裾分けしてあげよう。

ガルダを手土産にお母様たちの下へ戻ろうと進路を変えて、しばらく進んだ辺りで後方の樹間から小さな鳥が飛び立ったことに気付く。

「・・・ん?」

あれは普通の鳥かな。

鳴き声を上げるか、よほどの特徴が有る飛び方でもなければ、私でも遠くを飛ぶ野鳥の種類は判別できない。

珍しいことは珍しいけど、魔の森にも普通の野鳥が居ないわけでも無いからね。

問題は、なぜ、私が上空を通り過ぎたあのタイミングで野鳥が飛び立ったのかだ。

上空からは木々の下にある地上の様子は見えないけど、嫌な予感がして「足」からアクティブソナーを放ってみる。

そこに有ったのは私を追ってきているらしいラクネの反応だった。

「・・・えっ!? 付いて来てる!?」

薄く広く、細かいドットの膜が移動するように、魔力の反応が地表を覆っている。

かなりの数の小さな反応が砂糖の匂いを追うように私の方向へ向かってくる。

「・・・どうして!? 何を感じ取ってラクネは私を追ってきてるの!?」

魔力の手の反応!?

でも、ラクネが魔力の手に反応するのなら、隊列を襲った最初のラクネも直ぐに私たちを追ってきたはず!

それ以前に、私がラクネの存在を探知すると同時に、アクティブソナーに反応を示したはずだよね!?

なら、血の臭い!?

私は高度50メートルは取っていて、ラクネは地表に貼り付いてるのに!?

臭いなら普通、風向きが関係するよね!?

今こうやって集まってきているラクネは相当な広範囲で、しかも、私の方が 風下(かざしも) 側だよ!?

森というものは木々が邪魔をして風が通りにくいし、風に血の臭いが運ばれたせいだと考えるには無理がある!

だったら何にラクネは反応してるの!?

いや、待て待て! 落ち着け、私!

パニックなんて起こしたところで、百害あって一利無しだ!

逸る気持ちを抑え込んで深呼吸する。

頭の端に、隊列を襲ったラクネと私を追ってきているラクネの共通点が有るような気がして引っ掛かりを覚える。

何だろう?

時間的な猶予が多く有るわけじゃないけど、ラクネに遭遇したときのことを最初から思い返してみるべきだな。

襲撃のタイミングって、いつだった?

メリーナさんの小隊が触角ヘビとの戦闘は始めた後だよね。

触角ヘビは死んでいなかったし、無事でもなかった。

墜落したガルダだって、そうだ。

まだ死んでいなかったし、無事でもなかった。

「・・・ラクネって、生き物が死ぬのが分かるの?」

あくまでも、これは仮定だ。仮定だけど・・・。

予知能力のようなものなのか、それとも死臭のようなものを感じ取るのだろうか。

動物の死を数多く見てきた私だからこそ、そう思うのかも。

獲物にトドメを刺したときに、「あ。コイツ、もう死ぬな」と感じることは有る。

人によっては、死期が近い人が分かるという人も居る。

半ばオカルトだし、私はオカルトを信じて居ない。

しかし、だ。

確たる証明が出来るわけじゃないけど、そういう知覚って有るには有るんだよ。

さらには、こっちの世界には死霊系なんてファンタジー的な魔物が実在するわけだし。

だとしたら―――。

「・・・ヤバいな。ラクネ」

死体を覆い尽くすほどに集まって死体を捕食するというラクネの生態が、本当に「もうすぐ死ぬ獲物の死期を広範囲で察知する」のだと仮定したとしよう。

養殖されている魚がエサに群がるのと同じで、生存競争を生き抜くために同胞と先を争ってエサを奪い合うのは想像に難くない。

もしも、そうだとすれば、ラクネが居る森では命に関わる大怪我も出来ないし、迂闊に狩猟も出来ないじゃん。

「南部の森にはおカネになる魔獣が居ない」って聞くけど、強い魔獣が居る森よりも遙かにヤバいかも知れない。

しかも、1匹1匹は弱いラクネを何百匹狩っても、冒したリスクと労力に見合うだけのおカネにならないんだから。

そう思えば、カリーク公王国がウォーレス領への野心を捨てずに、しつこく攻めてくる理由を裏付けられる気がする。

きっと、同じ魔の森の畔で、同じ魔獣の脅威に晒されているのに、ウォーレス領の森が金のなる木にでも見えるんだろう。

さらには、岩塩鉱床の発見でウォーレス領の旨味は増している。

狙われる側としては、やり切れない思いがして溜息が出る。

そんなに簡単なものでもないんじゃないかな。