軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初めての出征 ㉞

「・・・みんなはラクネを掃討して! 私がガルダを迎撃する!」

「フィオレ様!?」

「何を!?」

アイシアちゃんとオーリアちゃんが驚く声を置き去りに「足」で体を持ち上げる!

空を飛ぶ鳥は障害物がなく移動速度が速い!

ハヤブサのように速度に特化していない鳩でも馬より早いんだよ!

グズグズしてたら迎撃が間に合わない!

航空自衛隊だって領空侵犯機に対してスクランブル発進で敵機の接近そのものを阻止、あるいは遅延させる。

それは航空攻撃の迎撃が難しく、瞬く間に中枢まで攻め入られるからだ。

日本の―――、いや、地球世界の防衛態勢が示していた最適解は、出来るだけ戦線を押し上げて中枢へ接近されるまでの時間を稼ぐこと。

その防衛思想は航空機という技術が生まれた時代から一貫していた。

専門知識を学んでいない私に細かな理屈は分からない。

だったら理屈抜きで先達に倣うまでだ!

「・・・こっちは任せたよ!」

「フィオレ!」

お母様の声も置き去りに、「足」を動かして加速する!

使う「足」は安定性を重視して6本だ!

上昇しつつ全速力で空を駆ければ向かい風に髪が後ろへ引っ張られる!

真正面から風を受けて、あっという間に目が乾く!

目が痛いよ! どこかに飛行ゴーグルは売ってないの!?

サーシャさんたちのサングラスも作ってあげたいし、ガラス工房を探して私の飛行ゴーグルも作って貰おう!

風で髪が絡まってボサボサになりそうだし、飛行帽も欲しい!

一瞬で森が途切れて視界が開け、眼下に数百メートルもの川幅を持つナーガ川を踏み越えた!

ガルダは!? ―――

「・・・居た!」

魔力の手による索敵で大体の方向と位置が分かっていれば、目視で発見するのは容易い!

なんたって、こっちも向こうも空中に居て遮るものが無いんだからね!

木々の頭を掠めるような低空で、燃えるような赤い羽根を持つ大きな鳥が何羽も飛んでくる!

彼我の距離は1キロメートルも残っていないはず!

大急ぎで上昇したせいで行き過ぎて、私の方がかなり高度が高い!

黒焦げの焼き鳥状態になる前の姿を見るのは初めてだけど、先っぽが下向きに曲がった長い嘴は、猛禽類と言うよりも海鳥のような印象を受ける!

数は十数羽! あのぐらいなら何とかなる!

何とかしてみせる!

私の役目は、みんながラクネを掃討してガルダ迎撃の防空戦闘態勢が整えるまでの時間を稼ぐことだ!

張り倒して撃墜するために残り6本の「手」もスタンバらせて突進する!

「・・・うおおおおおおっ!! 我、 吶喊(とっかん) セリッ!!」

気合い一発、ガルダの進行方向と推定速度との偏差を考慮して、ガルダと私の進路が交錯するようにダイブする!

「足」を縮めただけだけど、体感は墜落を防止するゴムケーブルも無しの紐無しバンジージャンプだ!

「・・・うひぃいいいっ!」

自由落下速度よりも降下速度が勝れば、お腹の中で内臓が浮き上がって背筋にゾクゾクと寒気が走るような「玉ヒュン」を体感する!

正直、ビビる! ビビるけど負けない!

女は度胸だ! 焼き鳥ごときに負けて堪るか!

彼我の距離が急速に迫り、ガルダの姿がズームアップするように大きくなってくる!

体躯の大きさから棲息域内では空の生態系の頂点に君臨しているので在ろうガルダは、外敵が空から襲って来るとは予想していなかったらしく、私の急襲で飛行ルートの乱れと速度の低下に動揺が現れている!

向こうの速度が鈍れば推定接敵地点がズレるわけで、降下ルートを微調整しつつも6本の「手」を振り上げる!

「オエ――――――ッ!!」

「・・・ええっ!?」

目に見えない私の攻撃を察知したのか、ガルダが汚く濁った鳴き声を上げた!

きっとカラスのように仲間への警告を発したのだろう!

私もメチャクチャ驚いたけど、それはそれだ!

「オエエエエ―――――――――ッ!!」

振り抜いた「手」がガルダを捉え、バシン! と弾き飛ばす!

酒焼けしたダミ声のような絶叫が尾を引いて、打擲の衝撃で抜け落ちた羽根とともに眼下の地上へと墜落していった!

互いに空中に浮いているように見えるけど、ガルダは運動エネルギーと揚力によって浮いていて、私は「足」によって大地に立ってるんだからね!

大地を起点としたフルスイングは運動エネルギーを余すところなくガルダに伝えた!

惜しむらくは、打撃が芯を捉えていなかったことでポテンヒットになったことだけど、明日はホームランだ!

「オエ――――――ッ!! オエ――――――ッ!!」

「・・・オエー鳥!?」

まさか、実在していたとは!!

愕然とする私の声に負けないようにか、仲間の喪失についてか、他のガルダも抗議のようなダミ声を上げる!