軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初めての出征 ㉘

「待て待て。そうではなく、ラクネが北岸の森に棲息していること自体が問題ではないか?」

「居るものは仕方あるまい?」

ドネルクさんはバルトロイさんに目を向けて首を傾げた。

うーむ。事実は事実として理屈抜きで受け止めて対策を練る実直なタイプか。

対するバルトロイさんは学者肌な部分が有るから、原因究明から対策を考えるタイプっぽい。

どっちも間違ってはいないとは思うけど、この場においてはお母様も私もドネルクさんの考え方に賛成かな。

そうは言っても、学者肌な部分はお母様も持ってるからね。

「前回、御大と親父殿が渡河地点を目指したときには出たらしいからな」

「相当な被害を出したという前回の遡上作戦か。お 義父上殿(ちちうえどの) から聞いた話では30年ほど昔のことだったな」

お母様がバルトロイさんの疑問に情報を提示すれば、ドネルクさんも記憶に有る情報を引っ張り出す。

ドネルクさんってハインズお爺様のことをお義父上殿と呼ぶことにしたんだね。

お二人は師弟関係だったと聞いているし、ドネルクさんのハインズお爺様に対する敬意が感じ取れてホッコリするよ。

深刻な表情になったのはバルトロイさんだけだ。

「30年も昔に棲息域が変わっているのか?」

「もっと前かもな。どうやったのかは分からんが、ナーガ川を越えた個体が居たんだろう。とはいえ、大して強い魔獣でもない」

強さを知ってるってことは、お母様はラクネを狩ったことが有るんだな。

ドネルクさんもお母様の評価に同意を示して頷く。

「そうだな。お義父上殿は、纏めて始末しようと強力な術式を使ったのが失敗だったと言っていたが」

「“紅蓮”だな。親父殿もアレが失敗だったと言っていた」

ふぅん? “紅蓮”でガルダが寄ってきたってことは、爆発音が刺激したんだろうか?

それとも、魔力の動きを感知して興味を示したのか。

ガルダって“蒼焔”で焼いたから、ちゃんと狩ったことがないんだよね。

獲物と見定めると延々と追い回してくる習性が有るんだっけ?

ガルダの習性を観察すれば効率良く呼び寄せたり上手く避けたり出来そうなんだけど、絶対的に情報が足りない。

ガルダのお肉も美味しかったと評判だったし、是非とも焼き鳥にして食べてみたい。

あの時はまだノーアがレティアに着いて居ないときだったっけ。

美味しかったと市場で評判だったらしいから、ノーアにも美味しい鳥肉を食べさせてあげたい。

前回は口に入らなかったガルダのお肉に思いを馳せていると、ドネルクさんが話題をラクネに引き戻した。

「しかし、チマチマと子蜘蛛を殺して回るのも手間だぞ」

「・・・大きな音を立てない術式で広範囲を焼き払うのはどうですか? ガルダが魔力に反応して襲って来るのなら無意味な小細工になるかも知れませんが」

考えの中に数えていた方法論を提示してみれば、大人たちの視線が私に集まる。

「想定している術式は有るのか?」

「・・・以前、マルキオお爺様とお母様に見せて貰ったのですが、“ 火奔(ひばしり) ”や“ 炎雨(えんう) ”はどうしょうか」

バルトロイさんに答えると、お母様が首を振る。

「“炎雨”で焼き払うには障害物が多すぎるな」

「・・・じゃあ、“火奔”?」

「そうだな。妥当か?」

私の提案に納得を示したお母様がバルトロイさんへ目を向ける。

でも、バルトロイさんは首を振った。

「お前たちは森に延焼するとは考えんのか?」

「はん。“火奔”程度で魔の森が焼けて堪るか」

おっと。バルトロイさんはお父様と同じく良識派か。

そう言えば、お父様とバルトロイ様は、テレサと一緒にバルトロイさんがレティアに滞在していたときも仲良く話してることが何度も有ったね。

アレって良識派同士のシンパシーだったんだろうか。

そんなバルトロイさんをお母様は鼻で笑う。

言い方はどうかと思うけど事実は事実だ。

「・・・“蒼焔”でも焼けませんでしたよ?」

「“白焔”でも焼けなかったからな」

事実に基づいた私たちの証言に、バルトロイさんは再びこめかみをグリグリとマッサージしながら首を振る。

「すでに燃やしたことが有るのか・・・」

「・・・だって、魔の森の外では練習もできないじゃないですか」

「そうだぞ。魔の森の外で実験して、どれだけお袋殿の説教を食らったことか」

その言い方には反論が有るよ。

当然、お母様も反論する。

レティアの町は人口が多いんだから。

以前なら兎も角、今のレティアの町では野次馬が集まってくる可能性が高いし、町中で実験や練習を行うのは難しいんだよ。

「ウォーレス領というのは・・・。―――いや。そんなウォーレス家だからこそ優秀な魔法術師が育つのか?」

「クローゼリス領でもやってみろ。良い訓練場所だぞ」

悩ましげにボヤくバルトロイさんに向かってお母様はニヤリと笑う。

「止めてくれ。グリフィンの興味を引いて寄ってきたらどうする」

「倒せば良いだけだろうが。グリフィンの肉は美味いと聞いたぞ」

なぬ!? それは初耳じゃない!?

ええっ!? 聞いたこと有ったっけ!?