軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初めての出征 ㉕

「報告します! 全部隊、出撃準備完了しました!」

「ご苦労さま」

本当に背負子でノーアを背負っているエターナさんの報告を労って、整列した部隊へと目を向ける。

新人さんたちもヤル気十分で引き締まった顔つきをしている。

バルトロイさんも加わっての晩餐から一夜明けた昨日は、お母様たちも立ち会って採掘場で強化の進捗確認を行い、合格を貰ったからね。

そうして今朝、南門からレティアの町を出た私たちは森の入口に立っている。

今回の遠征は未開の森をナーガ川に沿って東進するものだから、足元の視界が悪くなる馬は使えない。

徒歩だよ。徒歩。

片道30キロメートルの道程は決して遠いものではないけど、足元の魔獣と樹上の魔獣の存在が30キロメートルの距離を2倍にも3倍にもしてしまう。

王国を代表する英傑であるハインズお爺様たちでさえ苦戦した道程を、真っ新な新人さんたちが踏破しようとするのだから、成功すれば、とんでもない武勲となり、大きな自信となる。

ただし、あくまで「成功すれば」だ。

普通に考えれば、無謀。

でも、私は無謀だとは考えていない。

どこから敵が来るのかさえ分かっていれば、きっと打ち勝てる。

キリッと引き締まった顔で反り返っているルナリアへと目を向ける。

今朝のルナリアは革鎧を身に纏い、背嚢を背負っていて、王様から下賜されたレティア卿の剣を腰に佩いている。

今日から数日間は全員が動きやすさと防御性を優先した革鎧姿だよ。

私も今朝は革鎧を着せられていて、背嚢を背負っている。

私が腰に佩いているのは、いつもの大型ナイフと魔石と回復薬が詰まった小物入れだけだけど、私の場合は12本に増えた魔力の手が有るから、実際には一番の重武装じゃないかな。

まあ、ほとんどの「手」は索敵に回すんだけどね。

「ルナリア?」

「出撃!!」

「「「「「おう!!」」」」」

総大将ルナリアの号令に応えた隊列が徒歩で前進を始める。

いつもの森と違って南門側から森に入ると、ナーガ川という大きな水源に近いせいか植生が違うね。

どう違うのかといえば、湿気が高くてシダ系の下草が多く、足元が見え辛い。

この視認性の悪さはお爺様たちから聞いていた通りだ。

視認性の悪さは腹這い形状で背の低い虫系の魔獣が接近しやすい環境と言える。

念入りに索敵しないと。

最初に隊列の先頭に立って進むのはネイアさんが部隊長を務める小隊で、メリーナさんが部隊長を務める小隊とアイシアちゃんが部隊長を務める小隊が10キロメートルごとに前衛を交代する。

ピーシーズが隊長と副隊長を務める3小隊とアスクレーくんを部隊長に据えた1小隊が主な構成で、4小隊80人に、ドネルクさんとバルトロイさんがオブザーバーとして加わる結果となった。

総勢100人ほどの増強1個中隊規模なんだけど、その中身は? といえば、王国が持つ戦力の主力中の主力を煮詰めた上澄みだけを掬い取ったような超絶戦力だ。

最初に前衛部隊に務めるネイアさんには副隊長としてエゼリアさんが付いて監督し、エゼリアさんの傍にはドネルクさんが付いている。

部隊員はピーシス領で生まれ育った脳筋武闘派のサラブレッドばかりで、体内保有魔力量を増やしまくったものだからスタミナもパワーも、そんじょそこいらの騎士様たちに引けを取らないよ。

まだまだ足りないと評価されているのは経験だけで、その経験不足はエゼリアさんとドネルクさんが補ってくれる。

ネイアさんの小隊の後にルナリアと私が続いて、私たちの周りにはエターナさんとミセラさんたちに加えて、サーシャさんたちが護衛に就いている。

旧エクラーダ王国で正騎士だったエターナさんは元より、ミセラさんたち3人もロス家麾下の正騎士だからね。

サーシャさんたちも忍者を自称するだけ有って戦闘員だし。

サーシャさんたち吸血種の5人は日差しを怖れずに済むようになり、エクラーダ人と見分けが付きにくい環境も手伝って外套を脱いでいる。

私たちの後ろには、メリーナさんの小隊とアイシアちゃんの小隊とアスクレーくんの小隊が続くんだけど、メリーナさんには副隊長としてアンリカさんが付いて、アンリカさんの傍にはバルトロイさんが付いている。

アイシアちゃんには副隊長としてオーリアちゃんが付いて、さらにはお母様たちが付いて監督する。

現在、最後尾のアスクレーくんにはエウリさんが副隊長に付いて、さらにはジアンさんが付いて監督する。

「ちょっと歩きにくいわね!」

ルナリアが不満そうに言うのも納得で、先に通ったネイアさんたちの小隊が邪魔になる下草を払って踏み潰してくれているとはいえ、本当に邪魔になるものを払い落としているだけだからね。

ヒゲ状に左右から伸びているシダの葉が足に絡みつこうとして来るんだよ。

薄い葉が枯れても固い茎は鞭のように残ったままで、株から放射状に伸びている。

この鞭状の茎を歩く足が蹴り飛ばせば脛の辺りに絡んでくるのがメチャクチャ邪魔。

ついつい、足元に視線が下がってしまう。

「・・・そうだね。索敵は私がしてるけど、足元ばかりに集中しちゃダメだよ」

「分かったわ!」

足元の邪魔をする下草やその下を掻い潜ってくる魔獣だけが敵じゃないからね。