軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初めての出征 ㉓

「あのゴーレム、どうやって作ったの?」

「・・・こう、ギュッと土を固めて、掌握して動かしました」

アスクレーくんの質問に、おにぎりを握るような仕草で「ギュッと」を示して見せる。

ところが、私に答えを返してきたのはアスクレーくんでは無かった。

「ほう? あの規模を掌握したのか。素晴らしい魔力制御ではないか」

「・・・ピッ!? ばっ! ばばばバルトロイ様!?」

アスクレーくんが口を開く前に割り込んできたのは、内外から大陸屈指の魔法オタクと評される人物だった。

「フィオレ嬢とルナリア嬢は空を飛んだとも聞いたが、非常に興味深いな」

さらに、優秀な魔法オタクは核心とも言える技術の一端について、ルナリアと私の顔を見比べつつ的確にツッコんでくる。

今の今までアンリカさんやお父様たちと和やかに話してたのに、何でこっちの話まで聞いてんの!?

「あ。私は乗っかっていただけなので関係ありません!」

「・・・ちょっ! ルナリア!?」

私が戦いている間にルナリアが胸の前で両腕を交差させてバッテンを作った。

さては、バルトロイさんが面倒くさそうだから逃げたな!?

「やはりフィオレ嬢だったか。魔法術式の長い歴史の中で浮遊術式や飛行術式の開発を目指した者は数多く居たが、完成に至った者は居なかった。実に興味深い」

「・・・そそそそそうなんですか?」

何とか誤魔化せないものかと企てたけど、バルトロイさんの目は完全に私をロックオンしている。

助けを求めて視線を泳がせれば、お母様はこめかみを揉みながら首を振っていて、アンリカさんは遠い目で宙を眺めている。

ちょっと! 助けてくれないの!?

バルトロイさんはアンリカさんの管轄だよね!?

どうせ、私たちが丸洗いされている間もバルトロイさんが質問責めをしていたのだろうってことには想像が付くけどさ!

ハッと我に返ったらしきアンリカさんがプルプルと頭を振った。

あ。再起動した!?

「バルトロイ様? その件は、私が輿入れしてからゆっくりと教えて差し上げると申し上げましたよね?」

「む? そうだったな。しかし、目の前に開発者が居るのだから直接訊いた方が早かろう?」

ヨシ! やっちゃえアンリカさん! と、心の中で声援を送るけど、バルトロイさんの言い分は理に適っている。

「お気持ちは分からなくも有りませんが、フィオレちゃんは遠征作戦の主力ですから、今は体内保有魔力を温存して作戦に集中する必要が有ります。初の遠征ですから、あまり困らせないであげてくださいませ」

「しかし、魔法術式というものは実際の術式を見ることで理解を深めるものなのだ」

へえ? それって、お母様や私の脳筋教育法と同じ理屈だよね?

介入を試みたアンリカさんが反論に対する反論に詰まり、お母様もポーションを一気飲みしたような表情になっている。

ていうか、本当に粘るなあ。なかなかしぶとい。

いよいよ理に適っていて反論が難しいし、そこまで食い下がられると私としてもタダで教えるのも惜しくなってきた。

せっかく大陸で一二を争う魔法術師が目の前に居るんだから、労力で技術指南料を支払って貰えば良いんじゃないの?

フィジカル面の現・王者も自ら巻き込まれたんだし、もう一人増えたところで大差ないよね?

もう良いや。巻き込んじゃえ。

「・・・そ、それでは、遠征にバルトロイ様も参加されてはどうでしょう? 作戦中は私も術式を使う機会が多くなると思いますし、バルトロイ様は観察できる機会が何度も有るんじゃないでしょうか」

「む。それは妙案だな。作戦にはアンリカ嬢も参加するのだろう?」

私の提案に入れ食いで食い付いたバルトロイさんが婚約者に確認を取る。

諦めの心境が表情に滲み出ていたアンリカさんも、私の方向転換に乗っかることにしたようだ。

「ええ。ウォーレス領においてフィオレちゃんは魔獣討伐の第一人者ですから、輿入れ前に技術を学んでおくつもりでした」

「ならば、余計に私も同行するべきだな。東部においても魔獣討伐は重要な役目だ。優れた技術が有るなら指南していただきたい」

アンリカさんの売り込みにバルトロイさんがすんなりと乗る。

たぶんコレ、バルトロイさんにとって興味が有るのは私の魔法技術で、魔獣討伐はついでなんじゃないかな。

新しい魔法を知るためなら、魔獣が彷徨く森の奥へ踏み込むリスクは許容できる程度のものなんだろう。

いやあ。これは本格派だわ。

噂に違わぬ魔法オタクの価値観や行動パターンを理解できれば、魔獣オタクの価値観や行動パターンも理解できるかも知れない。

私にとっては、遠征の戦力増強よりも、オタクに対する理解を深めるメリットの方が大きいかも。

諦め顔でこめかみのマッサージをしていたお母様も割り切ったようで、バルトロイさんに確認を取る。

「良いのか? バルトロイ」

「何がだ?」

前任者として気遣っているのだろうお母様も言葉足らずで分かりにくいし、気遣われたバルトロイさんも何のことか分かっていないっぽいな。

「王家の剣である特務魔法術師の任務は重責だ。余所見をしている暇が有るのか?」

「何を言う。重責だからこそ、あらゆる技術を駆使して任務を果たさねばならん。かつて、そう言っていたのはフレイア、お前だっただろう」

もっとハッキリ言わないと伝わらないと気付いてらしいお母様が言葉を重ね、即座にバルトロイさんが反論する。

そこでお母様はバツが悪そうに視線を泳がせた。