軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初めての出征 ⑭

「・・・それ以前の時代は何を信仰していたのでしょう?」

「精霊なのだろう。統一国家時代の文献にも精霊を祀る記述は多く見られる」

やっぱり精霊信仰か。

自然の脅威に畏れを抱く心理から生まれるのが自然崇拝で、自然の不可思議に意味を与えたのが精霊信仰だよね。

精霊に名が与えられ人の常識に沿った形で擬人化されたのが“神”という概念だと私は理解しているんだけど、私も専門外だからなあ。

私の専門はお肉を獲ることだったし。

「・・・では、“神”の概念は神教会が生み出したものなのでしょうか」

「いいや。恐らく勇者が持ち込んだものだと思われる。それがいつの時代のことなのかも定かではないがな」

そこは明確なんだ?

いや。「思われる」だから、明確なのではなく、説明が付きやすいって意味だろうか。

「・・・勇者ですか。昔から魔族と戦っていたんですか?」

「そのようだな。先史時代の頃からだろう」

先史時代―――、人類が文字を手にする以前の時代から戦ってたんだ?

いやまあ、文字が無かったからといって原始的とは限らないんだけどね。

文字ってものは記録や伝達のために発明されたもので、口伝で技術や文化が伝えられていた可能性も有るんだし。

「・・・そんな時代から、他の世界が有ることを知っていたんですか?」

「どうだろうな? それならば精霊信仰以前から何らかの信仰が存在していても不思議は無いはずだが。私の専門外だから詳しく調べたことが無い」

バルといは首を振る。確かに、そうだよね。

「・・・精霊信仰以前、ですか」

「それを調べたところで意味が有るとは思わんがな」

「・・・それもそうですね」

仰る通り。神教会を知るのに、新教会以前を知ったところで意味が有るのかと言われれば、優先度は低いだろう。

「長命な龍種なら知っているかも知れん。機会が有れば龍種に訊いてみると良い」

「・・・そうします」

お母様と同じ答えが返ってきた。

否定しつつも疑問解明への取っ掛かりは教えてくれるのだから、バルトロイさんもまた善良な性質の人なんだろう。などと魔法から話題が逸れたことに油断していたら、バルトロイさんはしっかりと前の話題を覚えていた。

「それで、アレらは誰が作ったのものなのだろうか?」

「・・・うっ・・・! わ、私です」

嘘を吐いてもすぐにバレるだろうから嘘は吐けない。

誤魔化しようが無いことに動揺しながら白状すれば、当然のようにバルトロイさんの興味は私に向いた。

「どうするの?」と言わんばかりでルナリアも目を向けてくる。

「ほう。フィオレ嬢が?」

「・・・ううっ・・・!」

バルトロイさんの目が興味津々で私を見下ろしてくる。

そこ! 笑いごとじゃないんだよ!? 他人事みたいな顔でニマニマしてるルナリア!

「アレらは土術式か?」

「・・・そ、そうです」

バレた以上、バルトロイさんの質問に答えざるを得ない。

不承不承に認めれば、バルトロイさんは真剣な目で“獰猛くん”を見上げた。

「ふむ? 魔力から土を生み出して作ったもののように見えるが、あの規模を1人の魔力量で作り上げられるものなのか・・・?」

「・・・ギクッ・・・!」

独り言のようなバルトロイさんの考察に私の両肩が跳ね上がる。

さすがは魔法の専門家。的確に機密事項へと近付いてくる。

こ、これ、どうすれば良いの!?

最終的にバルトロイさんにも情報を明かす方針になってるからバレること自体は構わないにしても、タイミングが早すぎる!

「誰が」、「何をしたのか」、まで来れば、次に「どうやって?」と具体的な方法論へ興味が向くのは必然だし、ここで明け透けに秘匿すれば心証の問題になってくる。

ヤッベェ・・・。と危機に瀕したガマガエルみたいに脂汗を流していたら、朗らかな性質が滲み出るような聞き覚えの有る女声が割り込んで来た。

「あら? バルトロイ様?」

バッと振り返れば、ウェンディさんを引き連れたアンリカさんが居た!

ナイスタイミング!

「おお。アンリカ嬢ではないか」

「・・・アンリカさ―――、アンリカ叔母様!!」

助かった! 何でここに居るかは分からないけど、もう、救いの女神にしか見えないよ!

推考の淵から返ってきたバルトロイさんが、歩み寄ってきたアンリカさんの姿に気付いて表情を緩める。

「今まで通りで良いわよ」

私の切羽詰まった表情に気付いたアンリカさんは、表情を緩めて私の頭を撫でた。

チラリとバルトロイさんへ向けたアンリカさんの視線には理解の色が浮かんでいた。

もう! アンリカさん、大好き!

一瞬で状況を察してくれたのだろうから、頼もしすぎる!!