軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初めての出征 ⑤

「・・・そっか。まあ、私は明日も住居建設のお手伝いになるから、そっちはエターナさんに任せるよ」

「はっ。お任せ下さい」

決意に満ちた目でエターナさんはグッと拳を握って見せる。

他に気になってたといえば、あの子たちのことだ。

「・・・エクラーダの若い子たちはどうだった?」

「そちらも半数以上が気絶しました」

眉尻と共にエターナさんが再びテンションを下げる。

半数以上ねぇ・・・。ピーシス領の新人さんたちは半数弱だったよね。

「・・・ふむ。少し多めかな」

「そうですね。元々の体内保有魔力量の少なさが関係しているのかも知れません」

エターナさんの推測に頷かされる。

元が少ないから許容量も少なかった、か。なるほどなあ。

「・・・可能性としては有り得るのかもね」

「情けない限りです」

肩を落としてエターナさんが首を振る。

んん? 同胞を卑下―――、いや。同胞に失望してる?

それはちょっと違うんじゃないかな。

「・・・そうでもないよ? 前途有望だとも言えるんだし」

「有望ですか?」

考えてもみなかったのか、目を丸くしたエターナさんの瞬きが増える。

ピーシス領の新人さんたちと一緒に参加して強化の様子を見届けてきたエターナさんは、同胞の有り様と比較してしまったんじゃないかな。

でも、切り口や観察する角度を変えれば評価が変わることなんて、往々にして有る。

「・・・少ない体内保有魔力量を上手く使う戦い方をしてきたのが、エクラーダ騎士とも言えるわけでしょ。そんな人たちが多くの体内保有魔力量を持つようになれば、どんなことが出来るようになると思う?」

「継戦能力が上がる、でしょうか」

目を伏せて真剣に考える様子を見せたエターナさんの答えは現状の延長線だった。

堅実な考え方だと思うし間違ってはいないだろうね。

ここに私が居なければ、そうなったかも知れない。

「・・・それも有るよね。でも、私はみんなに魔法を覚えて貰うつもりだから」

「魔法術式を・・・」

真面目なエターナさんの前で私が持っている展望を口に出せば、業務命令みたいに受け取られるかも知れないから、慎重であるべきなんだろうけどね。

最低でも風ジェットカッターは覚えて貰う。ピーシーズにも覚えさせたんだから、当然、エターナさんたちもだ。

「・・・もしかすると、今まで魔法術師に任せていた遠距離攻撃をみんなも使えるようになるかも知れないよ?」

「守りの堅い騎士たちの手が遠くの敵にも届くのですか! それは素晴らしいことです!」

私が提示した未来の可能性に、目を輝かせたエターナさんが食い付いてくる。

ルナリアとエイラさんの模擬戦を見ていたときに感じては居たんだけど、盾という“頼もしい重荷”を持っているせいか、エクラーダ式の戦い方は機動力を投げ棄てた“待ちの姿勢”なんじゃないかな。

敵が近付いてくるのをただ待ってるだけなんて待ち時間がヒマじゃん。

私なら魔力の手を伸ばして先手必勝で引っ叩くもの。

魔法を使うだけの魔力を得たとして何が出来るのか、どんな風に戦術が広がるのかは手探りになるだろうけどね。

私が作ろうとしている遠征が可能な部隊の形は私一人で作れるものじゃない。

ピーシス領の新人さんたちとエクラーダの若い子たちの相違点に推測を立てたように、エクラーダ系新領民のことはエターナさんが詳しいんだから、エターナさんにも協力者になって貰うよ。

「・・・向き不向きも有るだろうから、まだ“可能性”だけどね。だから有望なんだよ」

「ご期待に応えて見せます!」

凹む必要は無いと分かってくれたらしいエターナさんが元気を取り戻す。

それで良いんだよ。

常に前のめりなエターナさんたちなら、ピーシーズと同じように頑張って魔法を覚えてくれるだろうし。

「・・・そ。私はもう少しだけ作業を続けるから、みんなを最後まで連れ帰ってあげて」

「作業に遅れが生じているのですか?」

話を切り上げるつもりだった私の言葉にエターナさんが首を傾げた。

「・・・遅れてるわけじゃないけど、今日は邪魔が入ったからね」

「邪魔、ですか。あの岩の巨人と関係が有るのでしょうか?」

エターナさんが指す先には、城壁の向こうで北門前の街道を通る人たちを威嚇している“獰猛くん”の上半身が見えている。

そりゃあ、気になるよね。

朝、出掛けるときには無かった巨大な人工物が、ほんの数時間後に森から帰ってきたら、あれほど強烈な違和感を放って鎮座―――、いや。正座してるんだから。

巨大慰霊碑と並べて置いてある以上、慰霊碑の前例から考えれば“獰猛くん”と私を簡単に関連付けて考えただろうしね。

今の今まで「アレ、何?」と訊かなかったのは、鋼の自制心によるものなのか、それともエターナさんの中では優先順位が低かっただけなのか。