軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

未来 ㉔

本当なら安全距離を取って退避したいけど、四本の「足」で高度を維持することにも魔力制御のリソースを割いているから、「足」を動かせる余裕も私には残っていない!

お母様のことだから威力を抑えて本気を出さないとは思うけど、某巨大キャラクターと私たちの距離は数十メートルしか開いていない!

それ以上の距離になると制御が途切れそうになるんだよ!

こうなったらお母様の言う通り意地と根性と気合いで乗り切るしか無い!

普段の私なら小細工で乗り切る方法を考えるけど、にっちもさっちも行かないならヤルしかない!

意地と根性と気合いで大国とも泥仕合を互角に戦った大和民族のメンタルを舐めんな!

「・・・わ、私の命、預けるからね! 相棒・・・!!」

「―――ッ!! 分かったわ!!」

一瞬、息を呑んだ気配が有ったけど、ルナリアから覚悟の決まったような芯の有る声が返してきた!

どうやらお母様の魔法が発動したらしい。

陽光が差す日中とはいえ夏に較べれば涼しくなっていた気温が、ポカポカと暖かい春のようになってきている気がする。

ホッとするような陽気に気を抜きそうになるけど奥歯を食い縛って気を引き締める!

目を瞑っているからどんな状況なのか分からないけど、ここが踏ん張りどころだ!

これで終わる、これで勝てると安心してしまっただけに、耐える作業がそれまで以上にキツく感じる!

魔法(マジカル) 無双のお母様のことだから何分間ってことは絶対に無いだろうけど、ほんの数十秒間が永遠のように長く思えてしまう!

「・・・ううう! ま、まだ!?」

「もうちょっとよ! 頑張っ―――」

私の催促に励ましで答えてくれていたルナリアの声が、鼓膜を突き抜けるような破裂音に掻き消された!

瞼を閉じてるのに視界が真っ赤に塗り潰された!

「きゃっ!!」

「・・・うひゃっ!!」

2人して首を竦めたけど、ルナリアが魔力の手で 防御術式(バリア) を張ってくれているのだろうから、衝撃波も爆風も来ない!

ヨォーシ! 生き残った!! などと早計な安堵は物理法則によって裏切られる!

「熱ぅっ!!」

「・・・うアチャチャチャチャチャ―――ッ!!」

ジリジリとした熱は一瞬で燃え盛る竈の前に座らされたような灼熱に変わる!

これって遠赤外線!?

巨大なオーブンかトースターの中へ放り込まれたようなものじゃないの!?

ルナリアバリアは急激に上昇した熱量による大気の膨張を阻んで衝撃波と爆風から私たちを守ってくれたけど、考えてみれば魔力の手は不可視じゃん!

以前、私が予想したように、光はそのまま透過してる!!

物理的攻撃は防げても、高出力ビーム砲や殺人光線の前では無力だった!?

私は魔力制御で逃げられないし、私が逃げられない以上、一蓮托生で私の体にガッチリとお尻を固定されているルナリアも逃げられない!

これでも私の体の陰に入ってる分、ルナリアはマシなんだよ!?

陰に入ってても私の体を透過した遠赤外線は、じっくりジワジワとルナリアも加熱調理するんだけどね!

ワーワーギャーギャーと騒ぐ調理され中の幼女2人は、数十秒間のグリルの後、上空の冷たい風に晒されて香ばしい匂いを周囲に振り撒く羽目になった。

「「・・・・・・・・・・」」

風と共に灼熱地獄が去っても、余熱で汗だくになっている私たちは無言で周囲を警戒している。

終わった? もう加熱されない?

巨大スライムと巨大キャラクターによる地上格闘戦に決着を付けた大爆発で、詰め掛けている観衆も静まり返っている。

私と同じように警戒しているルナリアが周囲を索敵しているけど、敵影を発見できないようだ。

逃亡を図る巨大な敵の消失で、制御に余裕が生まれた私は恐る恐る「足」を縮めて高度を下げていく。

私の両足が地面を踏んで、お尻を解放されて自分の両足で地面の感触を確かめたルナリアは、ようやく勝利の実感を得たようだ。

「殺った!? 殺ったわ!!」

「・・・ホントに殺った!?」

そこで私の胸中にも実感が湧いてきた!

2本目のフラグじゃないよね!?

「「殺ったあああああああああっ!!」」

私は巨大キャラクターの制御を手放すわけに行かないけど、首っ玉に抱き付いてきたルナリアと2人で勝利の雄叫びを上げていると、私たちの喜びが観衆にも伝播する!

「「「「「うおおおおおおおおおおっ!!」」」」」

老若男女を問わない歓声を背に、ルナリアを首にぶら下げたまま激戦を潜り抜けた“勇者”の姿を見上げる。

土が焼け焦げて茶色が濃くなったもんだから、さらに“獰猛くん”度が増してるなあ。

巨大スライムを掴み上げている頭上で起爆したのだろう“白焔”か”紅蓮”にこんがりと焼かれた上にスライム汁でも頭から被ったのか、獰猛なコンニャク板も上半身は小豆色っぽく染まっている。

爆心地に近かった両腕は特によく焼けているようで、下手に下ろそうとするとポキッとへし折れて剥落してしまうんじゃないかな。

ギザギザの牙が並んだ口を大きく開いてるから、両腕を振り上げて「ガオー!」と襲い掛かりそうなポースになっている。

いよいよ絵面にモザイクかボカシを掛けた方が良さそうだ。

いや。もっと確実に証拠隠滅した方が良いか。

某公共放送の魔の手がレティアにまで及ぶとは考えられないけど、いい加減、魔力制御を続けるのもしんどくなってきたし。

「・・・さて。壊そっかな」

「待て待て。こんなところで壊すな」

「・・・ええ?」

それが誰か分かっては居たけど、何者!? と私を制止した声の主へと振り返れば、予想通りに腰の鞘にサーベルを収めたお母様だった。