軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

開眼 ㊷

「フィオレ様! ただいま帰還いたしました!」

「・・・お帰り。今日はどうだった?」

「バッチリです!」

だろうね。

輝くような笑顔を向けてくるエターナさんの肌は血色がよくて、ツルツルツヤツヤに見える。

テンション高めなのはいつものことだけど、ちょっと魔力で酔ってる?

足元もしっかりしている様子だし、普段から酔っ払ってるようなものだから大丈夫かな。

魔力の手を伸ばして確かめるまでもなく、エターナさんから感じられる魔力が明らかに強くなっている。

そんなことよりも、今は失意のアスクレーくんのために確認しておいてあげないと。

「・・・そ。報告は後で聞くけど、今日、バンダースナッチは獲れた?」

「はい! 3頭回収しました!」

ふむ。3頭なら平均値だな。

日によって2頭だったり4頭だったりすることも有るけど、回収数を平均するとそのぐらいなんだよね。

なお、初日以降、ボス犬サイズのバンダースナッチは「まだ」ワナに掛かっていない。

ボス犬サイズが再び掛かるようなら、「採掘場周辺の森が迷宮化している説」を補強する材料がまた1つ増えることになる。

ボス犬が出るか出ないかが結構大事なことで、指標として私は注視している。

なぜなら、先ず、火属性の魔石は市場価値が高いからだ。

採掘場周辺の森が迷宮化しているのが確実となれば火属性の魔石が一定数採れ続けることになるから、バンダースナッチ回収業も産業の1つとして格上げされることになるだろう。

そしてもう一点、日常生活の中ではなかなか試す機会が無い上に高額商材を無駄にしたくないから確かめられていないけど、火属性の魔石に私が期待していることが有る。

マルキオお爺様やお母様を筆頭に、ピーシス家系の魔法術師は火魔法を使う人が多いからね。

魔法道具は用途と魔石の属性が一致しないと性能が落ちるという話もある。

城壁移動の際に土属性の魔石を試しに使ってみたことで、魔法道具と同じように魔法の効果に影響しているっぽいことに気付いてしまった。

このことについては今日の作業でほぼほぼ確信に近い体感を得ている。

だったら火属性の魔石を用いた魔石使用法で火魔法を使うとどうなるのか?

もしかして、火魔法の威力が上がったりしない? という仮説を思い付いて気になってるんだよ。

いや。ここまで来ると、もう仮説じゃないよね。

火属性の魔石がウォーレス領の戦力増強に使えるかも知れないとなれば、実験しないわけには行かない。

ナーガ川上流への遠征では普段あまり使わない火魔法を使う可能性が高いだろうから、ぜひとも実証してみたい。

私が捕らぬ狸 計算機(カリキュレーター) を稼働させていると、元気を取り戻したアスクレーくんが報告中のエターナさんに食い付く。

「本当に!?」

「は、はい。―――、あの。フィオレ様?」

「・・・あー。エターナさんは初めてだったね」

誰、コレ? と。

本質が真面目なエターナさんは質問に返事を返すけど、アスクレーくんから視線を移して私を見る表情に困惑が隠せていない。

そりゃそうだよね。

一瞬で馴染んでいるから忘れそうになるけど、エターナさんがレティアに着いて、まだ数日しか経っていない。

アスクレーくんとは初対面だもの。

「・・・こちらが私の許婚の―――」

「アスクレー様?」

私が紹介しきる前に私の声は張りの有る男声で上書きされた。

名前を呼ばれたアスクレーくんも、接近してきた馬上に馴染みの有る人の顔を見付けて、テンションのアクセルをレッドゾーンまでブン回す。

「ジアン!! バンダースナッチを狩ったって本当!?」

ゆったりと鞍から下りたジアンさんに、普段見ることのない超絶ハイテンションなアスクレーくんが駆け寄った。

おや。アスクレーくんは、ずいぶんとジアンさんに懐いてる感じだね。

受け止めたジアンさんが、アスクレーくんの両肩を掴んで体の向きをクルリと180度変える。

「はい。本当ですよ。―――、お帰りなさいませ。アスクレー様」

「あっ。うん。ただいま」

ジアンさんに背中を押されたアスクレーくんが私たちの方へと押し戻されてくる。

大人の余裕というか、アスクレーくんは完全に子供扱いだね。

いやまあ。まだ7歳なんだからお子様なんだけど、親戚の子って感じの扱い?

思えば確かに、親戚の子でも有るのか。

アスクレーくんはミリア叔母様の息子だし、ピーシス家傍系のジアンさんと面識が有ることに不思議は無いんだけど、2人の距離感の近さは意外だな。

「ルナリア様。フィオレ様。ただいま帰還いたしました」

「・・・お帰り。ジアンさん」

「お帰り! ジアン!」

アスクレーくんを背中から支えたまま会釈するジアンさんに、私たちも挨拶を返す。

私たちの挨拶にジアンさんも穏やかに笑い返してくれる。

テンション高めに反応したのは、何やら目を輝かせているファーレンガルト家の騎士様たちもだ。

ザワッとざわめいたかと思えば、そわそわと落ち着きを無くし始めた。

「まさか、クック卿ですか?」

「如何にも。ピーシス家執事、ジアン・クックです。失礼だが、あなた方は?」

これ、何事?

堂々と胸を張ったジアンさんが騎士様たちに目を向ける。

「これは失礼を! 我らはファーレンガルト騎士団であります!」

「アスクレー様の護衛の方々でしたか。ご苦労さまです」

姿勢を正して敬礼する騎士様たちを労って、ジアンさんはスッと頭を下げた。

「クック卿のお噂は奥様から、かねがね! 復帰なさっておられたのですね!」

「フィオレ様のご慈悲とご尽力の賜です。アレース様はご健勝ですか?」

ミリア叔母様から何を聞いたのか、憧れの有名人に会って興奮するかのような騎士様たちに、サラリと答えたジアンさんがイケメンスマイルを浮かべる。