作品タイトル不明
開眼 ㉝
「・・・分岐・・・? してるじゃん、分岐!」
「ふぇ?」
閃きに大きな声を出してしまったことでルナリアの集中を乱してしまった。
でも、私の閃きが実用に耐えるものならルナリアへの手助けにもなる。
「・・・ちょ、ちょ、ちょっと待って!」
「えっ!? な、何を!?」
本当に出来るかどうか、忘れないうちに試してみないと!
ルナリアへの説明を後回しに思考実験を始める。
えーっと? 魔力の手は魔力放出を「手」に見立てたものだから「手のひら」の形をしている。
ポドックさんの領地で開けた大穴が私の手のひらをそのまま巨大化させたような形をしていたから、それは間違いない。
そうだよ。私の手には5本の指が生えてる。
何もしなくたって5つに分岐してるんだよ。
「指」それぞれを「手」だと認識したとして、問題は5つの「手」で認識して掌握した土をコピペする際に、5ヶ所同時に可能なのか、ってことだよね。
一度、地面から「手」を引き抜いて土の山を見上げる。
ルナリアと2人掛かりで数分間コピペし続けて、小山の高さは3メートルを超えている。
ルナリアが地中で土を複製し続けているから、下から徐々に盛り上げられた小山の頂上がパラパラと崩落している。
「・・・ヨシ」
呼吸を落ち着けて心を鎮め、頭の中で魔力の手を変形させる。
「指」を長く―――。
5本の指がハサミの刃になったファンタジー映画か迷子になった宇宙人のSF映画みたいに、ニュッと長い「指」をイメージする。
土の小山に魔力の手を伸ばして5本の「指先」だけをブスッと差し込む。
意識を集中して 過程(プロセス) を反芻しながら指先から魔力を放出する。
魔力を広げるのは、意志を持って魔力を放出するだけだから力任せで良いし、まだ簡単なんだよね。
ルナリアの魔力を押し退けて、ルナリアに掌握されていない部分の地面を私の魔力で塗り替える。
「・・・ここからだ」
魔力を浸透させるのは、そこから「質の違い」を感知しなきゃいけない。
認識を広げて、硬いものか、柔らかいものか、個体か、液体か、それが何かを感知する。
感知できたなら浸透させることが出来たと判断して良い。
「・・・んん? これは・・・どういうこと?」
魔力を浸透させられたなら、それらは自分の意志に従うものだと掌握するんだけど、5本の「指」から伝わってくる情報に差が感じられない。
「手」をズボッと突っ込んでいるときと同じで、「指」それぞれから感じ取れる感触が1つの感触しか無いんだよ。
「・・・むむむ・・・。取りあえず掌握してみるか」
この掌握については魔石の魔力を使えるのなら苦労しない。
意志を持って意志を持たない他者の魔力を掌握するのが魔石使用法だからね。
掌握するものが実体のある物質か実体の無い魔力か、違いはそれだけだ。
私の支配下に入ったと確信を持ったタイミングで、感触を複製する。
“全く同じものが2つ”と認識した瞬間、モコココココッと小山が大きく 蠢(うごめ) いた。
私の予想よりも遙かに大きな動きが起こって呆気に取られる。
は・・・?
私の思考が真っ白に漂白されている間にも、小山はズモモモモモッと高さを増していく。
そこでハッと我に返った。
「・・・はああああああっ!?」
なにコレなにコレなにコレ!!
今、どうなったの!?
やり直す前と同じペースでコピペしてるのに、爆速で土が増殖していく。
コレ、どういうこと!?
「なになに!? これ、何やってるの!?」
「・・・ココココ、コケッ―――、ゲフンゲフン! ココココレ、すっごいよ!?」
隣で目を剥いているルナリアに大変さを伝えたいんだけど、何がどう大変なのか私も分かっていないから、当然、ルナリアに伝わらない。
「分かんないわよ! どういうこと!?」
「・・・ちょっ! ええっ!? 整理するから、ちょっと待って!」
分からんと叱られても、私も何が起こっているのか分からんのだから、心を落ち着けて状況を整理するしかない。
落ち着け。違和感というか、疑問を覚えたのは、どこだった?
ビックリしたことで記憶があやふやになってるけど、確か、5本の「指」それぞれから感じ取れる感触が全く同じに思えたんじゃなかったっけ?
思い返した上で、5本の「指」に意識を向け直す。
「・・・やっぱり感触は同じだよね?」
1本1本の「指」を注視しても、それぞれの指が感知している「質」も範囲も違いが感じ取れない。
つまりコレは、それぞれの「指」が同じものを同等に感知している?
でも、魔力の放出も感知も、さらには掌握も、私の意志は1つで、それなのに、それぞれの「指」が別々に放出して、感知して、掌握している?
それってコピー元が重複してない?
重複しているのに、それぞれの「指」が現象を起こしている。
試しに「手のひら」の部分までズボッと突っ込んでみると、5つ有った感触が1つに減ってモコココココッがモコモコにペースダウンした。
もう一度、「指先」だけが小山に刺さる位置まで引き抜いてみれば、1つしか無かった感触が5つに増えてモコモコがモコココココッに戻った。
どういうこと?