軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

開眼 ㉓

基本的に非戦闘員のディディエさんとダーナさんは強化の優先度が低いから、ルナリアと私の傍に置いておくのが2人にとっても良いだろう。

私の計画では、2人に活躍して貰うのは農地開拓が始まった後だしね。

出来ることなら、農業関連で土に携わるだろう2人には、土魔法のプロフェッショナルになって貰いたい。

2人の体に染みついた農家の常識を私色に塗り潰してしまおう。

先ずは土を増やすコピペ魔法だ。

本当に魔法がイメージによって発動するものだとするならば、”目で覚える脳筋魔法理論”で私の土魔法を見て常識が塗り替えられれば、そのうち2人も私と同じ土魔法を使えるようになるはず。

ウォーレス領と魔法と農業の発達に寄与して貰うよ。

出来ることが多くなればなるほど2人の将来も安泰になるのだから、妥協はさせない。

「・・・サーシャさんは“他の人たち”をすぐに集めて」

「あっ。は、はいっ」

サーシャさんが動揺した返事を返してくる。

自分にまで指示が飛んでくると思っていなかったのかな?

はっはっは。甘い甘い。

セリーナお婆様が許可しているんだから放っておくわけが無いじゃん。

逃がさないよ?

忍者一族なんて面白―――、ゲフンゲフン。

頼もしそうな人たちを逃がしたりしないからね?

カレリーヌ様だけに期待するんじゃなく、宰相さんを説得するカードを他にも考えておかないと。

“融和派”領地にも新しい作物でも作らせるかなあ。

「・・・悪いことにはならないから、今日はミセラさんたちの指示に従って行動するんだよ。採掘場に着くまで1時間は掛かるし、“他の人たち”への説明は道中にすると良いよ」

「しょ、承知しましたっ!」

敢えて“他の人たち”と、ぼかしたけど、ちゃんとサーシャさんには伝わったようだ。

魔獣の血を飲むことで“違い”に気付けば、私の言った意味も理解できるだろう。

信じて任せると私は昨日決めたんだ。

意味が理解できれば、サーシャさんたちも自分たちの身の振り方を真剣に考えてくれると信じよう。

私を信じて指示を出し終えるのを待ってくれていた相棒に目を向ける。

「ルナリア?」

「さあ! みんな、やるわよ!」

「「「「「はっ!」」」」」

拳を突き上げるルナリアの喝に応えが返ったところで階段が終わって1階に着く。

この廊下を出れば、領主館の正面出入口だ。

空が白んできたばかりの早朝だというのに、ちょっとした人集りが出来上がっている目抜き通りへと出れば、新人さんたちと猟師さんたちと、エイラさんが取り纏めていたエクラーダ民の若者たちに迎えられる。

夜勤明けが近い警衛の兵士さんたちと挨拶を交わしつつ領主館から出た私たちの姿に、返ってきた反応は様々だった。

「「「「「おはようございます!!」」」」」

ジアンさんの姿に新人さんたちはピシッと引き締まる。

本当に、よっぽど特訓がキツかったんだね。

「おはようございます。今日は随分と人が多いんですね」

口にした言葉通り驚いてはいるのだろうけど、猟師さんたちはいつも通りのフレンドリーな笑顔だ。

厄介事の気配には気付いているのだろうに、逃げることなくドシッと構えているところは、やっぱり大人だな。

「「「「「おはようございます!!」」」」」

エイラさんの後ろで子供たちが押し合いへし合いしていて、それ以外の若い人たちは希望と期待に目を輝かせている。

しっかりと眠れて元気いっぱいみたいだね。

「・・・おはよう」

「おはよう! みんな!」

ルナリアも負けずに胸を張って元気を示す。

悲しいことも有っただろうに、めげずに立ち上がろうとしているこの子たちにも力を与えてあげたい。

エクラーダ民がワッと沸く姿を見回してから、ジアンさんたちとミセラさんたちにバトンタッチする。

「・・・じゃあ、お願い」

「「「「「はっ」」」」」

ジアンさんとエターナさん、ミセラさんたちの5人が早速仕事に取り掛かる。

「整列!!」

「「「「「はっ!!」」」」」

エターナさんを引き連れてスタスタと歩いて行ったジアンさんが大声で号令を掛けた瞬間、一塊に集まっていた新人さんたちがジアンさんの正面側へと一斉に移動する。

あっという間に2人組が10列並んだ隊列を4個形成した。

あれって特訓中に1グループ20人の小隊を4つ作ってたってことかな。

小隊単位で整列させるところが実務的なジアンさんっぽい。

新人さんたちも迷いの無い動きだったことから、徹底的に反復練習させられたことが窺い知れる。

「エイラさん。皆をこちらへ集めてください」

「はい!」

片や、ミセラさんたちはエクラーダ民を纏めていたエイラさんに声を掛けた。

ジアンさんたちから少し離れた場所へ誘導させている。

成人に近そうな子たちと明らかに子供な子たちに分けている様子から、何らかの意図はあるんだろうってことだけは理解できる。

何の意図なのかを推測しようとしているところにサーシャさんが声を掛けてきた。

「フィオレ様。一族の者たちを連れて参ります」

「・・・うん。戻ったらミセラさんの指示に従うんだよ」

「承知いたしました」

私たちの前で綺麗な一礼をした後、北門の方向へとスカートの裾を靡かせたサーシャさんは、シュバババババ! っと音が聞こえそうな予想外の速度で駆けていった。