軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

開眼 ㉑

「武器が携行できない場面―――、社交の場か」

「そういうことだ」

ああ。なるほど。

ミリア叔母様と一緒に王妃様の補佐をする立場になるエゼリアさんたちには必須だね。

エゼリアさんたちも丸腰で戦わなきゃいけなくなるんだもの。

お母様の側近として、セリーナお婆様から社交を教わり、シェリアお婆様からあらゆる知識を叩き込まれたというエゼリアさんたちは、毒物の知識も豊富だと聞いている。

王妃様が実際にヤラレたように、脅迫を用いて捨て駒に仕立てたメイドさんを実行役にされると防ぎきるのは簡単じゃないんだけど、社交の場での危険は毒物だけじゃない。

武器を携帯できない場で有る以上、もっと直接的な手段を執る方が遙かに簡単で確実なんだし。

世界最強のスナイパーじゃないけど、背後に立たれることが無くなるだけでも安全性が跳ね上がる。

「私の訓練」ってことは、お母様も社交の場に出ることを想定してるのか。

まさか、お母様の「オホホ~」が実現するとはなあ。

王妃様の腹筋が心配になってきた。

「ノーアも」

隣の席からお母様を見上げるノーアに、お母様が目を丸くする。

ありゃ。マジかぁ。

「何だ。ノーアも行きたいのか」

「ノーアには、まだ早くは無いか?」

コクリと頷くノーアの姿に、お爺様たちが困ったように眉尻を下げる。

魔獣の影が濃い森の奥は危険な場所だろうし、普通はそう思うよね。

お婆様たちもウンウンと頷いている。

でも、ノーアのお姉ちゃんとして、ノーアの不利に働く嘘は吐けない。

ノーアの名誉は私が守るし、ノーアが成長するための道は私が切り開いてみせる。

「・・・それが、そうとも言えません」

「あら。そうなの?」

私の介入にセリーナお婆様が目を丸くする。

事実を事実と知った上で、ノーアのための判断をして欲しい。

「・・・今朝の一件はサーシャさんの気配を察知して、ノーアが待ち構えていた結果だったようなのは、さっき言った通りでして。ノーアも“探知”を習得したと考えるのが自然ではないかと」

「ほう。4歳になったばかりの獣人族が放出系術式を身に付けるのは珍しいな」

マルキオお爺様が驚きの声を上げて、お母様が隣席へと手を伸ばす。

「ヨシヨシ。偉いぞ」

「にゃふ」

ぐりぐりと撫でられたノーアがくすぐったそうに笑顔を零す。

4歳児を侮ってはいけない。

お手本が有れば真似してみたがるのが子供というものだ。

悪ガキどもが近所の川で小魚やザリガニなんかを捕っているのを見た私が、空腹から逃れるために見よう見まねで狩猟の道を志したのが、たぶん、そのぐらいの年齢だった。

努力が上手く結果に繋がって、実利や楽しさに気付くことが出来れば、きっと伸びる。

伸び始めるのに年齢は関係ない。

目的意識が明確で努力の方向性が間違っていなければ、必ず伸びるものだ。

そうやって生き延びた私だからこそ、誰よりもそのことを知っている。

私がお手本になってノーアを導けば良い。

笑い目になったお母様がノーアを撫でながら私を見ている。

お爺様たちを説得して見せろと?

少なくとも、お母様は頭ごなしに止める気は無いわけだ。

了解。やって殺る DEATH(デス) 。

「・・・ノーアは元々敏感だったようなので、放出系かどうかは分かりませんが、出来れば伸ばしてあげたいと考えています」

「しかし、渡河地点まで30キロメテルも森を歩くのだぞ? ノーアに行軍は無理だろう」

むー。そうは問屋が卸しトンカツ?

物理的に無理だろうとマルキオお爺様から返ってきたド正論に、反論しようと私は口を開きかけた。

「・・・わ―――、」

「わたしが背負って行くわよ!」

おっと。ルナリアに先を越されたか。

こっちを見てニッと笑うルナリアに笑みを返す。

ルナリアもノーアのお姉ちゃんだもんね。

「ルナリアがか」

驚いた顔になったのは、黙って成り行きを見守っていたお父様だ。

ルナリアが大好きなお父様は、当然、心配するよね。

そこで、壁際に控えていたエターナさんが手を挙げる。

「フィオレ様。ナーガ川上流への遠征、私とエイラも同行させていただいても?」

「・・・エターナさんたちは、体内保有魔力量が先だって言ったよね?」

さっきも釘を刺したばかりなのに、なぜここで?

しかし、エターナさんは力強くグッと拳を握って見せる。

「間に合わせて見せます!」

「・・・そっか。じゃあ、間に合えばだね」

迷い無く言い切るエターナさんにクスッと来る。

出来なかったときのために、一応、逃げ道は残しておくけど、きっと根性で何とかしちゃうんだろうな。

エイラさんもエターナさんに似たタイプだし、やり遂げそうな気がする。

具体的な達成目標が有れば、頑張れてしまうのが人間だしね。

「お任せください! ノーア様は私が背負って行きますとも!」

私の答えを許しが出たと受け取ったのだろうエターナさんのボルテージが、さらに上がってガッツポーズになった。

ほんと、面白い人だな。

暑苦しいけど、脳筋だらけのウォーレス領では珍しくない、というか、標準タイプかな。