軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

開眼 ⑫

「血か。なるほどな」

「確かに、そうかも知れませんね」

お母様とシェリアお婆様が頷いてくれた。

深く頷いたセリーナお婆様が真っ直ぐにサーシャさんを見る。

「サーシャ。連絡員ということは、他にも一族の者が近くに来ているのでしょう? 連れて来なさいな」

「セリーナ様・・・」

真摯なお婆様の目に、サーシャさんの表情に感動の色が表れている。

はー。他にも来てるの?

考えてみれば当然か。

サーシャさん一人だけで潜入させるよりも、バックアップ要員を付けた方が色々な事態に対応できるはずだ。

そういうものなんだな、と間諜の世界を垣間見た気分になった。

スパイ映画だと、どうだったっけ?

接着剤みたいな名前の英国スパイな人は単独で敵地へ侵入していたように思うけど、不可能な作戦に挑む米国スパイな人には敵地へ潜入する時点でもバックアップ要員が付いていた気がするなあ。

ちゃんと映画を見たわけじゃないから覚えていないけど。

セリーナお婆様は語気に熱を籠めてサーシャさんに命じる。

「貴女たち一族の未来のために、フィオレに仕えなさい。きっと、貴女たちにとって悪い結果にはならないわ」

こ、これはチャンス!?

決定的な感じでセリーナお婆様が言うなら誰の反対も出ないはず!

忍者だよ!? 御庭番だよ!? 隠密同心だよ!?

たくさん居るなら忍者戦隊だって作れるんじゃない!?

忍者一族なんて欲しくないわけが無い!

ここぞとばかりにサッと手を挙げて要望を出す。

「・・・セリーナお婆様! それならサーシャさんの一族丸ごと欲しいです!」

「一族丸ごととなるとグライアレー領との問題になるわ。そこまで行くと私からサリトガ宰相に影響を及ぼすのは難しいわね。どうなるかは分からないけれど、叔母様がいらっしゃったらお願いしてみなさいな」

フッと表情を緩めたお婆様が首を傾げる。なるほど!!

「・・・ハッ! カレリーヌ様! おかのした!」

「言葉遣いは、ちゃんとなさい」

「・・・はーい」

シェリアお婆様にピシャリと叱られてサッと姿勢を正す。

拙い拙い。これ以上、羽目を外すと、正座でのお説教に繋がりかねない。

そして、新しい家来というか遊び相手というか、そんなものを見付けてしまってはルナリアが黙っているわけがない。

ソファーからトンと立ち上がってペッタンコ奉行が堂々と反り返る。

「サーシャ! あなた、剣術はできるの!?」

「えっ!? ご、護身術程度ですが!」

いきなりの仁王立ち 反射板(リフレクター) からのご指名にも、サーシャさんは驚きながらも真面目に答える。

今まで黙っていた御令嬢っぽい子が名乗りもせずにブッ込んで来れば、そりゃあ驚くよね。

仕方ないなあ。

「・・・紹介しておくね。こっちがルナリアで、公にはウォーレス公爵家の現当主様だよ」

「御当主様!? これは失礼をいたしました!」

驚きも一瞬で、サッと姿勢を正したサーシャさんが丁寧にお辞儀する。

反応(リアクション) がいちいち真面目で、どこかに抜けた部分が見え隠れしているように思えて、テレサの侍女のレーテさんに似た空気を感じてしまう。

「・・・ふむ」

レーテさんは記憶力が良い真面目なドジっ子キャラで運動音痴にメガネ搭載の属性マシマシだから、サーシャさんはちょっと負けてるかなあ。

吸血種で白変種とアルビノのミックスでドジっ子忍者と来れば、属性で言えば負けてない気もするけど、ビジュアルに今一つパンチが足りないように思う。

キャッチーなインパクトを持たせてキャラクターを立てるなら、もう一味加えたいよね。

日差しが眩しくて目を開けて居られないと言ってたから、宇宙人取り締まり警察みたいなサングラスでも装備させるか。

ピカッとやるヤツは自前で“光”の術式でも光らせて代用すれば良いだろう。

潜入工作のときは野球帽にグラサンにマスクで、外套のフードも被ればパーフェクトな不審者の出来上がりだよ。

被るフードや野球帽が無ければ工事用ヘルメットで代用してプラカードと角材を持てば良いじゃない。

あれ? 何の話だっけ?

脱線しすぎて何の話を考えていたのか忘れちゃったよ。

「あの。フィオレ様?」

「・・・あ。うん。それで、こっちが妹のノーア。サーシャさんを倒したのはノーアだよ」

「にゃ」

ルナリアとの挨拶を終えたサーシャさんの声に思考の淵から引き戻されて、ノーアの頭を撫でる。

紹介されたノーアもヨッという感じで軽く手を挙げた。

「えっ!? 私、こんなに小さなお嬢様に気絶させられたんですか!?」

「にゃふ」

衝撃を受けた様子のサーシャさんにノーアがドヤ顔になる。

小柄なサーシャさんから見ても、ノーアは胸の高さも身長がないからね。

「・・・部屋に近付いてくる気配に気付いて待ち構えてたみたいだよ」

「えっ!?」

薄茶色のネコ耳頭を撫で撫でしつつ追加情報を投下すると、サーシャさんの表情が、ピシャーン! と落雷を受けたようなものになった。